アネゴの動揺【春はる編】
入院してから2日が経ち、俺とマイ、ナナは一緒に退院することになった。退院の手続きを終え、マキだけをICUの病室に残し、俺たちは…マキと会うことはなく、病院を出たのであった。
出口には、ナナの親族数人が出迎えに来ていた。 その中の母親らしき人が心配そうにナナに聞いた。
「おかえり〜ナナミ!……あんた…もう…本当に大丈夫なのかい?頭打ったって聞いたけど?まだ…検査入院してもよかったんよ?」ナナの母親が心配そうな眼差しでナナを目を見て聞いた。
ナナ状況を知っている親なら心配するのも無理もない。あんなことがあって、今回は事故だからな。
…だが、そんな心配しなくてもいいと言わんばかりにナナは元気に返事をした。
「もう大丈夫やって!医者のおやっさんもそう言ってたんやし!タンコブが若干痛いぐらいなだけやしなー!それに、脳のレントゲンとやらを撮ったせいでお金もかなり持ってかれたんやでー!これ以上の出費はホンマごめんやわ!長居も無用や!だからもう大丈夫やで!」
そう言うナナの元気な返答に、ナナの親族は安堵し、退院を喜んだ。
俺とマイは、ナナの家族が喜んでいる姿を尻目に歩き出し、病院に呼んでいたタクシーに乗り込んだ。すると、ナナが小走り近寄って来て窓越しに話した。
「アネゴさんアネゴさん!なんか…ごめんな。マキさんは…ちょっとアレやったけど…。マキさんのことはあちしに任せてくれても大丈夫やし!安心してや!…それと、また裁判についても沖縄本島(那覇市)で弁護士と一緒にまた会って話そうな!」
「あん。わかったわかった…。後な、お前は悪くねぇーよ。気にするな。マキのことは…任せるぞ。それじゃーな。家族…大切にしろよな」
「…ふん!心配せんでも大切にしよるわ!…マイちゃんもまたね。きーつけてな!」
「うん。また」
「………おっさん。車を出してくれ」
アネゴがそう言うとタクシーは空港まで発進させた。ナナが「頑張れ!」と言わんばかりに大きく手を振って見送ってくれた。アネゴとマイは、一緒に沖縄本島に向かい、数日後、石垣島での事故の裁判が沖縄本島那覇市の裁判所で行われた。その裁判でアネゴ達(メメ、マイ、マキ、ナナ)は多額のお金を富豪から踏んだくることができたのであった。
それから数日後…
裁判も終え、アネゴとマイの2人は、沖縄旅行から地元の住んでいるアパートに帰ってきていた。
「はぁ…まったく…やっと帰って来れたか。羽伸ばしの休暇だったのにな…散々だったぜ…」
部屋の扉を開け、荷物を置き、アネゴは椅子に腰掛けた。
「うん…」
マイもアネゴの向かい側の椅子に座った。
自分達の家に帰ってきたのに、どことなく…いや、かなり寂しい雰囲気が部屋を漂っていた。天気も曇っていて、晴れ晴れとした新年は迎えることができなかった。あの楽しかった新年はなんだったかと、そう思わせる暗さだった。
そして…これからは、マイと2人で生活していかないと行けないと言うプレッシャーがアネゴに襲いかかっていた。いつも2人の間にはマキが入っていたので、お互いにあまり険悪にもならずに過ごしていけていた。だからこそ、旅行はオープンにいけていた分、その差は激しかった。
「はぁー…。くそ…」
マイとのあいだに無言が続いた。アネゴは大きなため息をし、部屋の電気もつけず、旅行で使った荷物の整理を始めた。アネゴ本人もマキがいないことに動揺をあまり隠せていなかった。
マイ自身も、どうアネゴに接していいかわからないでいた。ただ…アネゴが暗い中でせっせと荷物の整理をする姿を後ろ方で座って眺めていた。
その間、暗い部屋で無言の状態が30分続き…30分後、アネゴは荷物の整理を終えた。するとアネゴは立ち上がり…
「ちょっと出かけてくる。飲み物は好きに飲め、留守番…頼んだぞ」
「ぁ…」
マイから逃げるようにそう言うと…旅行から帰ってきて1時間もしないうちに、アネゴはどこかに出かけて行ってしまった。マイは何も言えず、そのまま去るアネゴの後ろ姿を見送ったのであった。旅行の時とは一変、空気の重い雰囲気が2人の間ににじみ出ていた。
アネゴが出て行ってから、数分後には、ポツポツと雨も降り出してきていた。静かな部屋で、マイは雨雲を窓から覗き見ながら、アネゴの帰りを…1人家で待った。
時刻は夜になり、その頃アネゴはと言うと、1人で行きつけの居酒屋のカウンターでお酒を飲んでいた。
「チッ!金がなんだってんだよ…。予定が全部台無しじゃねぇーかよ。ったくよ…」
グラスに入っているビールの眺めながら独り言を呟いていた。しばらくストレス続きだったので愚痴が口からこぼれ落ちていたのあった。すると店の店主の青年が鳥の唐揚げ出してきて、話しかけてきた。アネゴは疑った。
「ん〜?なんだ?頼んでねぇーぞこんなの?」
「いえいえ!サービスですよ!なんか元気なさそうだったのでどうぞ!………いつもの相方さんはどうされたんですか?今日は見ないですけど」
「チッ!情報提供しろってか?唐揚げごときでか?教えるわけねぇーだろ!!!」
「いえいえ、それは私からのほんのお気持ちですので、食べてください!」
「…………………ふ〜ん。そうかよ。それなら遠慮なくいただくぜ」
「はい!しかし、どうされたんですか〜?今回は相当お元気なさそうですが…」
「あん?いつも通りだろ。いーつーもーどーおーり!仕事しろ!仕事!」
「あはは。仕事はしていますよ!失礼ですね!ただ…今はちょっと暇なので、相談でも乗ろうかと思いまして!」
「傲慢だな。そうやって、メンタルが落ち込んでいる女性客を狙って、情報を得ているのかよ。ご苦労なこってだな」
「そんなこと言わないでくださいよ。なんか悪者みたいじゃないですか!」
「みーたーい、じゃなくてそのものだろう!!第一、弱っている女に気楽に相談を乗ってみようなんて考えがあからさますぎんだろ。普通…そういうのは自然に聞くもんだ」
「やだなー十分、自然じゃないですか!」
「お前のは直球って言うんだよ!!!バカー!」
「あはは!まぁ、そう言わんでください!1人でブツブツ喋るより、誰かと話してた方が気がまぎれるってもんですよ!」
「チッ!俺の独り言を盗み聞きしていただけじゃねぇーか!お前、本当暇人だな!」
「いや、だから仕事していますって!暇ですけど!」
「もうそのくだりはもういいんだよ!たくっ!何回同じ話をさせる気だよ…」
「あはは。あ!自己紹介を忘れていましたね!自分、【菊田水河】って言います!みんな気楽に【スイさん】って呼んでくれているので何とぞ、よろしくです!」
「別に聞いてねぇーんだがな…。俺はメメ。アネゴってあだ名で通してる」
「ふむふむ…アネゴさんですね!なんだ!ちゃんと教えてくれるんですね!メモっときますね!」
「とらなくていいって!あと、さっさとビールおかわりをもってこい!」
「あ、はいはい!しばしお待ちを!……話は戻しますが、今日はどうされたんですか?いつも2人ですよね?相方さんと」
「あん?あーいろいろあってな。しばらく間、相方は休暇だ」
「はぁ…そーなんですか。では、悩んでいるのはそれではないんですね」
「あん?それで悩んでんだよ?お前、人の話を聞いてたのか???」
「だって、さっき言ってたじゃないですか。情報は教えないって!だったらその情報は重要ではない。悩んでいる内容ではないってことじゃないですか!」
「……………ケッ!変な洞察力がもってやがるな」
「図星みたいですね。じゃあ教えられない方はいいので、その相方について教えてくださいよ!少しは気がまぎれると思いますので!」
「…ちょっとした話だ。まぁ、解決している話だがな…」
アネゴは少しづつ話し始めた。事故の事、相方の事を少し嘘を混ぜながらスイに話した。
「それは…災難でしたね…」
「同情はいらねぇーよ。もう済んだ話だしな…」
「いや!新年早々に事故は災難以外なんでもないですよ。自分なら金もらうより、相手をぶん殴りにかかりますよ!」
「はん、バカが…。だがな…俺も今はそうしたい気分だー。これじゃー酒を飲んでも全然酔えやしねぇーしな…」
「……相当重要で大切な方なんですね」
「相当重要じゃなくて、特別重要なんだよ。俺自身、あいつがいないことに動揺を隠すのがやっとの所だからな」
「…なるほどですね。曖昧なことは言いたくないんですけど、きっと大丈夫ですよ!人生なんて常に問題だらけですから!少しずつ、解決していったらいいんですから!だから元気を出してください!」
「よく言うぜ。簡単で常識の範囲ならそれでもいいかもだがな。今回は問題が多すぎる…。やってらんねぇーわ。本当…」
「お!やっと弱音を吐きましたね!」
「あん?弱音じゃねぇーよ。強音だ」
「なんか、意味わからない単語がでてきましたね。…本当は、力になってあげられればいいのですが、そこまで深い入りは、自分にはできませんので。でも、話を聞くことぐらいはできますし、何かアドバイスをあげることもできますので。だから、とりあえず頑張ってください!」
「ふん!頑張れか。無責任な言葉だよなーそれ…。本当に…。だが…これは俺自身が変わらないといけないことなんだよな…」
「簡単にはいきませんよね〜。あ!無責任で結構です!なにか言うか言わないかが重要ですので!」
「ふん、それがお前の優しさかよ。優しさなんてな…俺にはもういらねぇーよ。必要なのは情報だけだかんな」
「ははは。強いですね〜アネゴさん!でも、時には弱音も吐いてもいいですよ?息が詰まりますからね!」
「はん!余計なお世話だ。はーあ!それじゃー俺はそろそろ帰るとするわ。無責任野郎と話す気が失せたからな」
「ひどいですね!自分はこれでも真面目で通してるんですよ?」
「真面目が聞いてあきれるぜ。まったく…。お節介野郎が。…勘定してくれ」
「わ〜かりました!5000万円になります!」
「は?お前…よくそれで真面目なんて言えるな!真面目のまの字もない奴だな」
「冗談ですよ!冗談!あはは!冗談を冷静に返せるうちはまだまだ頑張れますよ!」
「まったく…。んじゃ〜唐揚げ、ごちそうさん。じゃあな、スイ」
「お!早速ですね!はい!またお越しをおまちしております!ありがとうございました!アネゴさん!」
アネゴは勘定を済ませ、ほろ酔い気分でパラパラと降る雨の中を歩いて帰ったのであった。家に着く頃には雨はあがっていて、星と月が見えていた。そして、アパートの家に帰ると、ドアの鍵は開いており、部屋に急いで入ると、留守番しているはずのマイの姿なかった。
お久しぶりです!ほぼ、1ヶ月ぶりの更新です。最近は動画編集を勉強し始めていて、小説の方が大分、おろそかになっております。内容のクオリティも大分、下がってきています。こんなフラフラしている私ですが、今後もよろしくお願いします!




