逢引?
お久しぶりに更新です
社畜の合間合間での執筆ですので、投稿頻度は期待しないで下さい。
「あ、お兄ちゃんだ!いらっしゃい!!」
「弓教えて!」
「わぁ可愛いお姉さんだ…」
「奥さんなのー?」
「こっちは俺の家の使用人だよ、玲挨拶を」
「こんにちは、使用人の玲と申しますよろしくね」
「わぁ〜!」
「お兄ちゃんってやっぱり偉い人なの?私達のところに来ていいの?」
「約束しただろ?ほら、弓を教えてあげるから」
「私はどうしましょ?」
「大人達に最近困った事があるか聞いてくれ、そして昼餉の準備を手伝ったりしてくれ」
「わかりました」
「お姉さん!私がお母さん達のところに案内するね!」
「あら、お願いしますね」
…
……
………
当たんない!
難しいよー!
ぐぎぎぎ…弓を引けない…!
えいっ!
当たった!!
初めて触る者、此間教えた者、親から教えてもらった者。子ども達はそれぞれに楽しんで弓の鍛錬を行なっていた。最初は親達がハラハラと様子を伺っていたが、玲が大丈夫と説得してくれたお陰で自分達のやるべき事をやっている。
「ほら、休憩だ。お菓子あげるから手を洗ってきなさい」
「はーい」
「ありがとう!」
ふぅ、子どもは元気だな。
しかしこうして笑顔が多いのはとても良い事だ。
玲も今は昼餉の準備をしている、これは昼餉の後にお菓子を渡した方がいいか?
俺は子ども達が練習していた的を狙い弓を構える。
ヒュッと音を立てて矢が飛んでいく、真ん中に突き刺さり俺はまた構える。そして同じ場所に突き刺さり一本目は真っ二つに割れていく。
「わっ!凄い!」
「鍛錬の成果だ、お前達も努力すれば出来るがまだ時間はかかるだろうな」
「にいちゃん何でそんなに弓が上手なの?」
「俺の爺さんがな、馬鹿みたいに弓が上手いんだよ。まだ勝てる気がしないさ」
「それってこの間来てたお爺ちゃん?」
「そうだぞ、あれでも将軍だからな」
「え〜?」
「まぁ気持ちはわからんでもない…ほら!飯の時間だお菓子はその後な!」
「ここは、こうして処理するとエグ味が弱くなるから煮付け料理に使うと殆どエグ味は消えるよ」
「まぁ…屋敷では誰も知らない調理法です…」
「あたし達の婆様から教えて貰ったからねぇ、それにこの山菜は村の近くで採れてたから必須だったねぇ」
「あと、こっちの野菜は煮るよりも炒めて他の食材の旨味を吸わせた方がいいよ」
「そうそう、これ単体だとどうにも淡白で主役にはならないからねぇ」
「なるほど、勉強になります」
「いやいや、こっちこそ田舎の知恵がこうして役に立つなら有難いよ」
「し、将軍様が食べられるんでしょ?私達の村のやり方でいいのかしら…」
「大丈夫ですよ。これを食べられる方々は剛毅な方々ですから」
「それって失敗しても食べるって事?」
あははは!
奥様達の笑い声は共用台所に響く。
まだ悲劇からそう時間は経ってないけど、彼女達は笑う。自分達が生きてるからこそ、笑う。
「ところで、あそこの若将軍は貴女のイイ人なの?」
「えっ!?」
「そうそう、気になってたけど中々聞けなくてねぇ」
「わ、私は使用人ですので…わ、若様とそんな関係では…」
「えーそうなの?」
「お料理は他の人に任せて、あっちの家で『お話』しましょうか?」
「ちょ…待っ…」
玲は恋の話が絡むと将軍にも勝る軍に連れて行かれた。
「あれ?お母さん達いなーい?」
「ご飯出来てるよ?」
「なんでー?」
「まぁ出来てるなら食べてもいいのか?ほら並べ」
「はーい!お皿こっちだよ!!」
子ども達は行儀よく並び、昼餉を一人一人取っていく。
少し時間が経つと、近くで仕事をしていた男衆も食べに来た。彼等は天祥に驚くが、同じように笑顔で昼餉を器に盛り食べていく。
程なくして、調理の女衆と玲が戻ってきて水や白湯を配っていく。
男衆は若くて美人な玲に配膳をしてもらいうれしそうだが、一部の男衆は後ろからの殺気に気付き静かに食事を続けていた。
昼餉が済むと子ども達はもう一度弓の鍛錬と気合を入れていたが、今日は昼から座学の予定もあり渋々其方へ参加する。
近くの学から先生が訪ねてきて、様々な勉強を教えている。しかし午前中に弓の鍛錬を行った子ども達は昼餉後の穏やかな陽気の下での座学に耐えきれず、寝てしまう者が多かった。
これには先生も苦笑いし、天祥が申し訳そうに原因は自分にあると謝ると…
『いえいえ、この子達は他の同年代の子ども達よりも勤勉です。しかし、もう少し子どもらしく遊んでいいと思ってましたので将軍の弓の鍛錬は良い息抜きになった筈です』
と、逆に諭されてしまい。
天祥は苦笑し、お菓子を先生に渡して門弟と一緒にお食べくださいと一言礼を言った。
…
……
………
もう帰るの!?
お姉ちゃんとお話ししたい!
もっと弓の練習したい!!
等々。
惜しまれつつ、帰った俺たちはゆっくりと屋敷へと歩いて帰っていた。
「子ども達は凄いな、俺よりも活気がある」
「えぇ、女性の皆さんも凄く張り切っておられました」
「負けられないな、俺たちも頑張ろうな玲」
「えぇ、勿論です」
他愛も無い話を続けながら、屋敷へと向かう道中。
玲の心は少しだけ沈んでいく…
「(もう少しで2人っきりが終わってしまう…)」
「…ん?玲どうした?」
「い、いえなんでも御座いません」
「そうか?大丈夫ならいいが…」
「(なんでこういう時は鋭いのかしら…)」
「玲、あそこの露店でお菓子を買ってきてくれ」
「お菓子をですか?」
「あぁお前の母に買わないと俺が爺様に怒られるのでな」
「なるほど、なら行ってきます」
…あれ?天祥は?
お菓子を買ってきて戻ってきた私は、先程まで天祥が居た場所に戻ってきたが肝心の本人が居なかった。
どこに行ったのであろう?
こういう時は下手に動くと出逢わないので、大人しく待とうと思い塀の近くに立っていると…
「あれ〜?お姉さんお一人?もう少しで暗くなってしまうよ〜?」
見るからに酔った男性が絡んできた…
それに2人も居る…
「大丈夫です、人を待っておりますので」
「そんなの気にせずに俺たちと飲もうよ!今から三軒目だからさぁ」
「美人なお姉さんからのお酌で飲みたいなぁ〜」
「結構です」
中々しつこく絡んでくる男性達に辟易してると…
私の手を掴み引っ張ろうとしてくる
「いいからさ!な?」
「離してください!人を呼びますよ!!」
「怒った顔も可愛いなぁ〜!」
「いい加減に…」
「ぎゃっ!?」
「がっ!?」
いい加減に怒りが爆発しそうな時に、男2人の頭に矢が命中した。
「だ、誰だ!?」
「何しやがる!?」
「お前達こそ、うちの使用人に何をしている」
「貴様誰だ!?」
「その娘の雇い主だ、玲遅くなった。こちらに来なさい」
「はい!」
「「ぎゃっ!?!?」」
私は無礼な2人の足を思いっきり踏んで、天祥の元へ駆け出した。
隣りに行こうとすると、グイっと体を引き寄せられ抱きしめられた。
「!?」
「すまない、怖い思いをさせたな」
「い、いえ大丈夫ですす…」
「今なら、酔った勢いだけで許してやるぞ」
「ガキが…」
「殺してやるぞ!!」
「はぁ…玲待っていてくれ」
「き、気をつけて!」
天祥はニコリと笑い、私の頭をポンと叩く。
任せろと囁き背中を向ける、その背中を見つめる私は高熱が出たように体が火照って仕方がなかった。
「本当にすまなかった」
「大丈夫ですって!私も悪いですし…」
「玲の何が悪いんだ?」
「絡まれた事…です」
「そんなの悪くない、俺が1人にしたから俺が悪い!」
「いやいや私が…!」
「俺が!」
帰る道中そんな感じで互いに謝って帰宅となった。
…
……
………
屋敷ではまた屋根の上に黄忠が登り、そろそろ帰ってくる孫達を隠れて観察しようとしていた。
しかし、偶々遊びにきた義兄弟がそれに気づく。
「黄忠様!何をされてるので?」
「おう、関興と張苞か上がってこいや!!」
「「?」」
「今丁度良いところじゃ、ほれ彼処に天祥と玲がおるじゃろ?」
「お!本当だ逢引ですか?」
「此間の族が襲った村の人達の様子を見に行った帰りじゃ」
「む?玲が絡まれてますな」
「天祥は?」
「まだ見える場所におらぬ、お!見える所に行ったぞ」
「…おいおい」
「あの距離で直ぐ射ったぞ」
「大丈夫じゃ、矢じりは付いてないから死にはせん」
「お、玲が…離れて天祥の所へ」
「お!?」
「おお!?」
「おぉぉぉぉ!?!?」
「やったぞ!あの純情ヘタレ野郎が抱きしめたぞ!!!」
「黄忠将軍!!」
「やりおったぞ!!!!曽孫も近いぞ!!!!」
屋根の上で騒いだ3人は玲の母親にしこたま怒られた。
危ない、大人して恥ずかしくないのか、人の恋路に口を出すな…などなど。
いい、歳をした大人がガッツリと怒られる姿は物悲しいものである…
「でもお前さんも孫をみたいじゃろ?」
「そんな決定事項を今更、横槍を突っつくのを辞めなさいと私は言ってるのです」
母の中では確実に2人は結ばれると考えていた。
学 当時の学校的な物と思っていただければ…