若き矢
2話目となります
ちょいと戦闘があります
「進め!進めぇいいぃぃ!!!!」
「爺様早いって!!」
「大丈夫じゃ!儂の兵は慣れとるわ!!」
「分かってるけどよー!!!」
「伝令!!趙雲将軍追いつかれました!!」
「ほーれ言ったとおりじゃろ!!」
「黄忠将軍!!」
「もう、ここまで来たか…」
「なんで残念そうなのですか!?」
「喧しい!!おい、天祥!!50騎連れて行け!!早駆けが得意な連中をな!」
「わかったよ!!趙将軍!付いて行きます!!!」
「承知!!我が軍は早いぞ!付いて来れるか?」
「任せて下さい!」
「厳顔!弓騎兵を準備しろ!!!」
「既に!」
「掃討は任せろ!一番槍は譲ってやろう」
「はっ!行くぞ風よりも早く駆けろ!!!!」
遠ざかっていく、騎馬軍団。
趙雲の声でそれは一つの槍となる。
民を守る槍は鋭く、そして誇りとなる。
「立派に育ちましたな」
「あぁ、我が息子の忘れ形見とはいえ。やはり息子の子じゃあの目はそっくりじゃの」
「ははは、お互い年寄りになりましたな」
「何を言う!儂は死ぬまで現役じゃ!!行くぞ!!」
「まだまだ若造には負けれんな!」
…
……
………
「はっはっは!!略奪だ!!殺せ!!こんな詰まらない世の中なんざクソ喰らえだ!!」
「お頭ァ!蜀軍だ!!」
「出やがったか!!テメェ等!!軍の平和ボケなんぞ殺してやれ!!!」
「「「応!!!」」」
焼かれた村。
散った血潮、抵抗したであろう男達の死体。
家の中では女達が啜り哭く、それを見て心の奥から炎が燃えだす怒りという炎が。
「落ち着け天祥」
「…はい」
「槍が鈍るぞ、だがその心忘れるな」
「はっ!」
「行くぞ!!民を守る刃を抜け!!!賊を滅ぼせ!!!!」
「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」
「我が名は趙子龍!!賊よ、この名に恐れよ!!」
「我が名は黄天祥!!我が弓は民の為に!!」
「子守将軍と誰だぁ?」
「賊の頭目か、何故に民を殺す!!」
「うるせぇ!!俺達は元は涼州の者だ!!テメェ等の戦争で全部無くしたんだ!!だったら俺達以外も同じ目に合わせてやるんだよ!!」
「再び、やり直す事は無いのか!!?」
「ねぇな!!今が一番だ!!」
「ならば我が槍を受けよ!!!!」
「俺が子守将軍を殺る!テメェはあの若造を殺れ!!!」
「応!」
賊の片割れがこちらへ馬を走らせる、どうやら一騎討ちを所望してるらしい。趙雲将軍が負けるわけは無いので俺はこいつに集中する。
「死ねや餓鬼!!!」
「もう餓鬼では無いんだよ…!」
ギイィィィン!!!!
賊の斧を槍で受けとめる、その重さは大口叩くだけあって決して軽くは無い。俺は素早く槍を回し距離を取るそして突いて牽制をする、簡単には引っかからず賊はこちらの出方伺う。弓も考えたが括り付けてるのを外したりする隙を見せる訳にはいかないな…
賊は再び斧を振り上げこちらに向かってくる、大振りと見せかけて腰を見ると不自然な位置にある逆手を警戒し慎重に構える。
「死ねやぁぁぁ!!!!」
「っふ!!!」
…暗器!!
俺はそれを躱し、体勢が崩れる。
それを狙ったか斧を振り下ろしてくるが、俺は馬から落ちてそれをギリギリ躱す。
「トドメだぁぁ!!!」
「お前のな…」
ヒュッ!
「あがぁ!?て、テメー弓なんていつのまに…」
「落ちた時に、外したからな」
「卑怯…者…」
「死ぬ訳にもいかないんでな」
「終わったか?」
「えぇ、馬から落ちてしまいました。まだまだ修行不足です」
「逃げた賊の残党は黄忠将軍に任せよう、我が軍は民を救うぞ!!」
「はっ!」
俺達は負傷者や民達を纏め医療班に任せる。
焼けた村の復興は大変だが、兵達が復興を手伝うだろう。
「副頭目を討ったそうじゃな」
「あぁ」
「浮かぬ顔じゃ」
「賊も元は民だからな」
「しかし堕ちた者は然るべき罰が与えられる、蜀で暴れたから儂等が討った。魏でも呉でもそれは変わらん」
「わかってる」
「同情はせぬ事じゃ、儂等も劉備様と出会わなければそうなる可能性もあったからの」
「…」
「『我が弓は民の為、我が刃は国の為』」
「あぁ」
「儂等は人じゃ、神でも龍でも無い。守るべき者はこの目に写りこの手で救えるだけなのじゃ」
「…ありがとう、お爺様」
「がっははは!!儂の孫はまだまだひよっこじゃの!帰ったら鍛錬が楽しみじゃ」
「そろそろ勝たせてもらうさ」
「青二才が生意気言いよるの!」
「黄忠将軍、天祥。劉備様がお着きだ」
「よし、行くかの」
「…応!」
…
……
………
「民よ…此度の事は誠に悲しい出来事である」
「劉備様…!」
「まだ太平の世は訪れない…しかし民よ其方達は強い、此度の悲しみを乗り越え再び強く生きるのだ。村の復興は我等で行う、それまで成都に住むのだ」
「ありがたや…」
「困った時は、政庁へ訪れよどんな小さな悩みでもよい」
「ははぁ!!!」
生き残った民達は負傷者含め軍の護衛付きで成都へ向かって行く、願わくば彼等が復讐を考えないで貰いたいな…
「趙雲よ、早駆け見事であった。其方の軍の早さで民の被害も抑えれた」
「ははっ!」
「黄忠よ、賊の残党を逃さずに討った手際見事であった」
「ははっ!」
「両軍見事な働きであった!其方達の強さあってこそ民を救った!!」
「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
「では、成都へ戻る!!兵達よ!民を守りつつ帰投だ!!!」
俺は軍を爺様に任せ。
民と共に帰る先行軍へ帯同させて貰った、民達は不安そうな顔をしている。住み慣れた村から違う場所なんだ無理もない…
「将軍様!」
「ん?俺はまだ将軍ではないぞ?」
「お父さん達を助けてくれてありがとうございます!これ…お礼です!!」
「…あぁ、ありがとう受け取ろう」
「こ、こら!?すいませんご無礼を…!」
「ははは、無礼なものか。子よ名はなんと申す?」
「鈴です!」
「鈴か、疲れてないか?」
「大丈夫です!」
「足はそうは言ってないようだな?そらっ!」
「きゃっ!」
「我が馬に乗せてやろう、俺もお前達と一緒に帰るのだからな」
「高い!ありがとうございます!!」
「あ、鈴ちゃん!狡いぞー!!僕も乗りたい!!」
「こら!無礼だぞ!!」
「構わん、子ども達よこっちへ来なさい順番に乗せてやろう」
少し暗かった民達は若い武将の細やかな心配りに泣きそうになった。そうだ我々は生きている賊の凶行で無くなった者達もいるが我々は生きているのだ。生きてるのにこの顔はなんだ?まるで死んだようではないか、先に旅立った者達へ顔向けなんぞ出来ないではないか!
「劉備様」
「あぁ、孔明どうした?」
「法正殿が、此度の被害状況を纏められました」
「そうか…成都に戻ってからで構わんか?」
「えぇ大丈夫です、それにしても彼処は賑やかですね…誰が先行されてるので?」
「天祥だな、少し思い詰めていたがあの様子では大丈夫であろう」
「えぇ、こんなに早く民の笑い声が聞こえるのは素晴らしいです」
「なぁ孔明」
「はっ」
「私は其方の廬を訪ねた時から変わったか?三国が連なり王となって魏と呉を倒さずこうして一国を治める私は変わってしまったか?」
「いいえ、玄徳様は変わられておりません。貴方は民の安寧を一に考える尊き善のお方、それが変わればこの孔明とっくに山に引きこもっておりまする」
「そうか…ははは!ありがとう少し思い悩んでいた。天祥の元へ行くか、彼処は楽しそうだしな」
「お伴しますよ」
「儂もお伴しましょう」
「おや、老将軍。軍はどうされましたか?」
「がっはは!厳顔の爺に任せましたわ!!」
「相変わらずお元気で」
「生涯現役ですからの!」
「では老将軍よ、警護を頼もうか」
「お任せ下され!」
軍は成都へ向かう。
民は徐々に明るくなっていく、それは未来を信じ。
そして子供達の未来を信じ…