表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山田太郎は異世界を征く。  作者: すぴか
第一章 異世界は日本人には厳しいようです
7/39

第七話 美味しいご飯と温泉

「すごくいい香り……」

「美味しそう……」


 本当は体を洗ってからご飯にしたいところだが、ルナがつらそうだったので先にご飯にすることにする。

 俺がタブレット端末のメニューを操作し洋風ドリアとプチパンを召喚するとリリーとルナがツバを飲み込む音が聞こえた。


「さ、二人とも食べて」


 そう言いながら空中に召喚された料理を木箱の上に並べ、スプーンを添える。


「え?」

「いい、の?」

「そりゃそのために出したんだからね」


 二人は目を見開いて俺と料理を交互に眺める。

 しかし両親が平民のルナはともかく、一応貴族家の人間だったリリーもこの反応か。

 この世界の食事の水準が少し心配になってくるな。


「信じられない……、あんた一体何が狙いなの?」


 いや、そんな警戒しなくても君に何かいかがわしいことをする気はまったくないから。


「いいから早く食べろ。冷めるぞ」

「い、いただきます……」

「ハグッ!」


 二人共最初は恐る恐る手を伸ばしていたのに、一口くちにすると他に何も見えないかのごとくパンをその小さな口へと詰め込んでいく。

 そしてあっという間になくなったパンの皿を名残惜しそうに見つめ、今度はスプーンを手に取りドリアへと取り掛かる。


「熱っ! でも美味しい!!」

「フーフー……」


 うーん、こうも美味しそうに食べているのを見るとこちらまで幸せな気分になってくるな。

 彼女たちを拾ってよかった。

 そして訪れる酩酊感。

 これは、うん?


「「あ……」」

「ん? どうした?」


 ルナとリリーが上げた不安そうな声で思考を中断する。

 見ると彼女はちょうど洋風ドリアを食べきったところだった。

 育ち盛りだし、足りなかったかな。

 だけど残金は六十四円、これでは何も買えない。


主様(あるじさま)のご飯……」

「ごめん、全部食べちゃった……」


 ああ、そういうことね。

 ま、その分胸いっぱいになったし、別に一日食べなくたって問題はないさ。

 というかリリー、お前謝れるのな。


「あー、気にしなくていいよ」

「でも、主様(あるじさま)もお腹すく……」

「気にしない気にしない」

「でも……」

「ご主人様の命令だよ。気にするな」

「っ! わかったわよ……」

「わかった……」


 不承不承といった様子でうなずく二人に苦笑いを向けると俺は再びタブレット端末を操作し始める。

 先程、ルナがドリアを食べきったあたりで能力(スキル)が強化というか開放されたみたいなんだよね。

 それで、その内容なのだが。


「やっぱりか、まさかこんなことになるとはなぁ……」

「どうしたの?」

「んー、とりあえずお替りいる?」


 洋風ドリアとプチパンのセット、その値段表記が何故か銅貨三枚に銭貨七枚となっていたのだ。

 どうやらこちらの世界の貨幣も使えるようになったらしい。

 また、ドリンク類もどういう原理か不明だが召喚できるようになった。

 混ぜたりはできないが、その必要はないか。


 開放条件はよくわからないが、『メニュー』には他にもいくつか開放されていない部分があるようだ。

 そしておそらく『マップ』と『収納』にも。


「……。まだ、あるの?」

「先にあんたが食べたほうがいいんじゃない?」

「それじゃみんなで食べようか」


 自分用と彼女たち用に洋風ドリアとプチパンのセットを再び召喚する。

 ついでに香味チキンも。

 余裕ができたからこそのプチ贅沢。

 うん、素晴らしい。


 ともかく能力(スキル)については追々調べていく必要がありそうだ。

 基本的な情報は頭の中に流れ込んできたが覚えきれないし、それだけが全てとは思えない。

 なんせこの能力を俺に与えたのは自称神様だからな……。

 あの性悪、どんな罠を仕掛けていることやら。



 食後、温泉に浸かる。

 水面を見るとやや疲れた俺の顔が水面に揺れる。

 なんだかんだどうにかなったが、今日は本当に疲れた。

 異世界に召喚され、飛竜を倒し、二人の子持ち、いや、奴隷持ちになって。

 これがわずか一日の出来事だ。

 そりゃ疲れるよな。


 そう思いながら足を伸ばすと金と銀の髪の毛が足に絡まった。

 言わずもがな、リリーとルナの髪の毛である。

 ヘアゴムなんてないし、髪の毛の束ね方など知る由もないので湯の中に髪の毛が広がってしまっていたのだった。

 ついでに髪についた汚れも落とせるから今はとりあえずいいかな。


「うあー……」

「気持ちいい……」


 二人共風呂が嫌いじゃなくてよかった。

 石鹸なんて便利なアイテムはないし、長湯して汚れを落とすしかないもんな。


「主様、どうしたの?」

「ん、いや、痩せてるなーって」


 月に照らされたルナの体は肋骨が浮き上がっており、まともに食事も取れていないことが見てとれる。

 しっかり食べさせてあげたいものだ。


「ふふっ、私の美しさに心奪われてるのかしら! ま、別にあなた達下等生物からすれば垂涎モノでしょうしね!」

「あー、はいはい」


 同じく月に照らされたリリーの肌はとても綺麗なのだが、彼女の言動がすべてを台無しにしていた。

 なのでリリーの発言は適当にスルーすることに決めた。

 『下等生物』相手には、エルフは羞恥心は感じないみたいなんだよね。

 そのせいか何もそそられない。

 俺、巨乳派だからスレンダー(笑)なリリーがちょっとストライクゾーンから外れてるっていうのもあるけど。


 それにしても早いところ街に出て石鹸とタオルも入手したいものだ。

 それに着替えも買わないとな。

 俺だけじゃなく、リリーとルナにも服を買い与えないと。

 流石に今の貫頭衣とボロいローブだけでは厳しいものがある。

 当然靴なんかもないわけで。


 ……、お金足りるかな。

 収納に格納している貨幣を数える。

 銀貨が十二枚に大銅貨が六十二枚、銅貨が百七十枚そして銭貨が四百枚と少し。

 リリーいわくこの国の貨幣は白金貨一枚=金貨十枚=大銀貨百枚=銀貨千枚=大銅貨一万枚=銅貨十万枚=銭貨百万枚となっているらしい。

 この他、白金貨、金貨、大銀貨には同じ額面だが貴金属の含油率の高い神聖白金貨、神聖金貨、神聖大銀貨があるそうだ。

 もっとも、こちらは一般には流通しておらず下賜されるものらしいが。

 とりあえず今の残高は日本円に換算すると二十万円と少しくらいか。

 小遣いにしては大金だけど、これから先のことを考えると心細い金額ではある。


 異世界に来てもお金に頭悩ますことになるとは思わなかった。

 世の中金、なんだなぁ。

 とにかく、まずは生活の基盤を作らないと。

 種子集め?

 しらねーよ。

 まずは生きていけないと話にならないからな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ