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山田太郎は異世界を征く。  作者: すぴか
第一章 異世界は日本人には厳しいようです
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第二十八話 襲撃

 王宮内の一室。

 特別に俺に与えられた部屋のソファーで俺は新たな能力の確認をしていた。


 新たに得た能力、それは『メニュー』の座標固定化と移動だった。

 今までは召喚した『メニュー』は召喚場所から俺が触るまで動かせなかった。

 そして一度俺が触ると動かせれるようになるが、再び空中に浮かしたりすることはできなかったのだ。

 だが、これからは違う。


「おー、動かないな」


 空中に浮いている『メニュー』を軽く押すが、壁に貼り付けてあるかのような反応が返ってくる。

 更に力強く押すとメニューが裂けてしまったが、そのまま空中にとどまり続けているのだ。


「……、まぁ複数枚重ねれば一応頑丈にはなるか」


 『メニュー』をくるくると空中で回転させながら俺は考える。

 所詮(しょせん)紙だ。

 されど紙だ。

 一枚では風を通してしまうティッシュでも千枚あればトイレを詰まらせることができる。

 だからなんだって話だが。


「ん、来たか……」


 国境沿いから王都への街道、マップの最大効果範囲の縁から多数の赤い点が徐々に王国内へと進んでいく。

 そして随伴と思わしき飛空艇の存在も。

 通常の進軍速度なら二ヶ月程度かかるが、オスカルが言っていたように補給を気にしないのであればおそらく一ヶ月後には王都に到着するだろう。

 いくら現地で補給(・・)をしないとはいえ、それでも略奪は避けられない。

 道中の街や村には退避命令を出しているが、聞かない人間も多い。

 俺は彼らの未来を思い、少し暗鬱な気分となった。


「オスカルには先に連絡しといたわよ。それでお姫様に伝えなくていいの?」

「サンキュ、っと、そうだな。……っ! やっぱりかよ!」


 リリーの言葉に俺は重い腰を上げる。

 そこで更にマップ上に表示された赤い点の詳細を見て俺は思わず不満が口からこぼれた。


「どうしたの?」

「戦列艦、来てるわ」


 その数、三十六隻。

 内訳は大型が一個航空隊四隻、中型が三個航空隊十二隻、そして来ないはずの小型航空戦列艦が五個航空隊二十隻だった。

 綺麗に隊列を整え、ゆっくりと地上の部隊の上空を進んでいる。

 さらに二十体のワイバーンライダーが彼らを囲む。

 どうやら小型戦列艦の中にも彼らは控えているようだ。

 なるほど、航続距離の足りないワイバーンを戦列艦で運んだのか。

 小型戦列艦は片道切符、それか補給は王国を落としてゆっくりとくらいに考えているのかな。


 しかし聞いてねえのオンパレードだ。

 来ないんじゃなかったのかよ。

 いや来るとは思ってたけどさ!


「まずいぞ……、すぐにマリアのところへ」


 部屋を飛び出し、逸る胸を抑えながら王宮を駆け、宮廷に飛び込む。

 宮廷の赤いカーペットの上では貴族たちを前にマリアが再度の説得(工作)を試みているところだった。


「マリア!」

「太郎、どうしたのじゃ?」

「帝国軍が来たぞ」


 貴族たちの冷めた視線を受けながら俺はマリアへと駆け寄る。

 貴族たちの不快な言葉が耳に入ってくるが今はどうでもいい。


「そうか、皆のもの聞いたな? 迎撃の準備をするのじゃ!」

「またそれですか、もう勘弁していただきたいものですな」

「しかり、いい加減野良犬をつまみ出さねばと思うのですが」


 俺からの報告を受け、マリアが指示を飛ばすも、貴族たちは当然の反応だった。

 だが、マリアいわくこれでいいらしい。

 不愉快だが、今後のためだそうだ。


「もう良い! 心あるものは妾に続け!!」


 そう言うと駆け出したマリアに俺も続くのだった。



 宮廷から門を抜け、石畳を駆け、王城正門へと向かう。

 王城前の広場には多数の兵士が待ち構えていた。

 一瞬足を緩めるマリアだが、俺たちがその両脇を抜けると足並みを戻す。


「王国陸軍第十七歩兵大隊、殿下の指揮下に入ります!!」


 信じられないものを見たかのように目を見開いた後、参陣の宣言をオスカルが上げる。


「オスカルか! よく来た!」

「王女殿下、こちらの馬に!」

「うむ! では妾に続け!!」

「はっ! 王家の旗を掲げよ! 女王殿下の親征なるぞ!!」


 オスカルが用意していた馬にマリアがまたがる。

 そして歩兵大隊は王家の紋章の入った旗を掲げ、威風堂々と王都の石畳を鳴らす。


「フルラネット辺境伯軍、参陣いたします」

「貴殿ら、いつの間に!?」


 急ぐ俺たちにリカルドの声がかかる。

 驚くマリアとニヒルに笑うリカルド、その二人の表情は対称的だ。


 リカルドの言葉と同時にフルラネット家の家紋が施された鎧をまとった一団が俺たちを囲むように現れる。

 さらにその数は急速増えていく。

 なぜと視線を巡らすと街の角や路地裏から次々に兵士が現れ合流していくのがみえた。


「一般市民に紛れ込ませていたんですよ」

「……、信じられん。普通、兵士にそんなことをさせれば皆逃げ出すだろうに」

「フルラネット辺境伯軍を舐めないでもらいたいですね」


 後に聞いた話ではフルラネット諸侯軍、彼らは兵士一人一人全てが貴族に準ずる扱いを受けているそうだ。

 各家をお抱えとし、普段は農地を耕すがいざ事が起これば剣を取り立ち参陣する。

 代わりにフルラネット家は彼らを保護するのだ。

 それによる士気と練度の高さが、誰にも気づかれず王都に多数の兵士を送り込む一助となったと。


「普段から反乱を考えていたとしか思えんな」

「さてどうでしょうね、仮にそうだったとしても今はそれに感謝すべきでは?」

「いいよるの。まぁよい」


 王軍第十七歩兵大隊、そしてフルラネット辺境伯軍合わせて二千強。

 敵地上軍の数は軽装歩兵一万、重装歩兵三千、弓兵二千、騎馬五百、魔術士百、魔導師五と八倍近い。

 だが……。


「第二近衛騎士大隊参陣いたします!」

「東部方面軍所属、第四歩兵旅団参陣いたす!」

「第一長弓兵団、参陣します!」


 王都の正門を抜ける頃には王都に駐留していた全ての部隊が合流。

 マリアはポダノ平原に到着する頃には、王都周辺に展開していたほとんど全ての王国軍と近衛を掌握するのだった。



「直掩が薄いな」


 本陣の指令所で窓から外を眺めながらマリアが不安を口にする。


「申し訳ありません、ワイバーンの巣が強襲され今はこれが全力となります」

「ふむ……」


 王軍八千は第十七歩兵大隊の駐屯地を本陣とし、敵軍と向き合うべく防御を整えていた。

 しかしその上空を守るワイバーンライダーは僅かに十騎。

 かなり貧弱に思える。


「ですがここには我ら近衛がおります。襲ってきても返り討ちにしてみせましょう!」


 金の装飾を施された輝く銀の鎧をまとう黒目黒髪の騎士がそう宣言する。


「ああ、頼りにしている」

「お任せください!」


 彼は自信ありげに首肯すると離席していった。


 帝国軍が到着するまで残り一週間程度。

 貴族からの援軍は、無い。


「王都周辺の王軍を全て掌握しきっても一万に届かないか……」

「いや、十分じゃろう。妾は全ての王軍が参陣してくれるとは思っておらなかったよ」


 悲観的に考えすぎていた。

 そう言ってマリアは自嘲げに笑う。


「これで、無残に敗北することもない」

「そう、だな……」


 地上戦力は相手の七割弱。

 航空戦艦は相手の半分。

 ワイバーンライダーは相手の四分の一。


 この状況でも心が折れないマリアはもしかしたら鋼鉄の心臓を持っているのかも知れない。


「ま、いずれにしろ負けたら妾は処刑台じゃからの」


 微笑んだままそう零すマリアに、その時は君を連れて逃げる。

 そう言えたらカッコよかったのだろうが、あいにくとそんな時間はなかった。


「監視より報告! 敵戦列艦」


 入り口より伝令が飛び込んでくる。

 しかし戦列艦が先頭ね。


「戦列艦でこちらの陣地を叩くつもりか」

「まぁ定石ではあるの」


 さて、それじゃ気が滅入るが俺は俺の仕事をするとしますかね……。

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