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山田太郎は異世界を征く。  作者: すぴか
第一章 異世界は日本人には厳しいようです
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第十五話 勝利

「突撃!!」

「ウォオオオオオオオ!!!」


 突如戦場音楽が夜の草原に響く。

 相手は寝起きの四百名。

 対するコチラは準備を万端に整えた五百名だ。


「援軍は!? 仲間はどこだ!?」

「逃げろ!! なっ何故川が!?」

「おい! 周囲を川に挟まれているぞ!? どうなってるんだ!?」 

「斥候は何をしていた!?」


 相手の援軍は突如現れた川に阻まれ届かない。

 敵軍は混乱の元、為す術もなく破れていった。



「敵将、捕縛しました!!」

「よくやった! 聞け! 帝国の兵士共! 諸君らの指揮官は我らの捕虜となった! 大人しく武器を捨てろ!!」


 オスカルが勝鬨(かちどき)を上げると帝国兵士たちは次々と武器を捨てていく。


「勝ったか」

「お疲れ様」

「太郎か、ありがとう。君のおかげだ」

「いや、ここまで鮮やかな夜襲をかけられるだけの練度がある大隊の功績だろう」


 星明りもない中、照明もなしに直前まで声を上げずにの進軍だもんな。

 しかもこの人数で、だ。

 普段の訓練がよほど厳しいものなのだろうと想像できる。


「そこに急にできた川もそう言うのかい?」

「自然のチカラって怖いよな」


 オスカルから兵士と荷馬車を借りてるし、バレバレなのだが一応すっとぼけておく。

 じゃないと功績をほとんど押し付けられそうな気がするんだよね。


「やれやれ、借りの返済はいつできることになるんだろうね。ああ、そうだ。君が困ったらいつでも駆けつけるとここに誓うよ」

「そりゃどうも、そのうち頼らせてもらうよ」

「ああ、楽しみにしている」



「それにしてもこちらの死者がゼロとは驚異的だな」


 俺は損害報告を聞きながら、篝火(かがりび)の中自軍兵士たちに武装解除されていく帝国兵を眺める。

 相手には百名近い死傷者が出ているのに、こちらは少数の怪我人だけ。

 いくら敵の分断と夜襲に成功したとはいえ、少々出来すぎている気がする。


「ん、ああ……、そのことなんだが、後で話がある」

「ん? ここじゃだめなのか?」

「ああ、二人だけで話したい」


 俺を真剣な眼差しで見つめるオスカルに俺は二つ返事で諾と返した。



「それと、借りを重ねるようで申し訳ないのだが……」


 食料調達の手伝いをして欲しい。

 具体的にはマップで食料のある場所を探して欲しいとオスカルは情けなさそうな顔をしながら俺に頭を下げるのだった。


 そうだよね、いきなり三千人の捕虜だもんね。

 戦うことで精一杯で全く何も考えていなかった。

 ついでに後続の輜重部隊を含めると八千人か。

 兵士を適当に開放したら食い詰めて山賊になりかねない。

 統率を持って自国に帰って貰う必要がある。

 もちろん、いただくものは頂いてだが。


「輜重部隊から接収するとはいえ、とても維持しきれないんだ……」


 そんな余剰食料、どこにあるというんだ。

 そう言ってオスカルは頭を抱える。


「あー、うん。金さえあれば、食料はどうにかできる、かな?」

「太郎、お金があっても食料が買えないことなんてざらなんだぞ?」


 無理やり買い上げたら領民が飢えてしまうからだめだ。

 そう言ってオスカルはため息をつく。


 ああ、普通ならそうだろうな。

 だが、俺の能力があればそうとも言えない。

 金さえあればいくらでも食料が出せるのだ。


「ほんとに君というやつは……」


 呆れるオスカルにオレンジジュースを差し出す。

 そして二人で月夜の下、祝杯を上げるのだった。


 一対六の兵力差をひっくり返したこの作戦は、後にオスカルの夜襲と呼ばれ、後世に名を残すことになる。

 だが、水を利用した敵の分断とその後の処理についての詳細な記述はどこにも残されておらず、後世の歴史家たちに大きな謎を残したのだった。



 一週間後、俺たちは領都ダヴォリの屋敷のリビングでくつろいでいた。

 戦後処理は専門家に任せ、戦利品もオスカルに任せ、じっくりと平和な時間を味わっていたのだ。


「それで、君はその、勇者なのか?」


 たっぷり一時間近くカップを見つめていたかと思ったらこのセリフである。

 オスカル、あなた疲れているの?

 と思わず言いたくなってしまった。

 いや、戦後処理で疲れたんだろうなぁとは思うけど。

 一切手伝わず、すべて押し付けたのは俺だけれども。


「なんだそれ」

「……、黒目黒髪、そしてあれ程の魔法を気軽に使う。これは古の勇者の伝説に共通するものだ」

「へぇ……」


 オスカルいわく、この世界『ミッズガルズ』でははるか昔に異世界から神様によって召喚された勇者がいたそうだ。

 この辺は前にリリーから聞いた話と似ていたが、そこから先が違っていた。


 異世界から召喚された彼らは皆、黒目黒髪であり、そして神様から強力な能力(スキル)を多数与えられていたらしい。

 その中でも有名な能力が『メニュー』、『マップ』、『収納』だとか。

 うん、その三つ、俺持ってるわ。


「君の使う魔法、それはもしかして能力(スキル)なんじゃないのか? もしそうだとしたら、魔王が復活するということなのだろうか?」

「いや、知らない。ふぇっくし」


 急にピクピクと動いたルナの耳が俺の鼻をくすぐり思わずくしゃみをしてしまった。

 くしゃみに驚いたのか、リリーの視線が冷たい。

 仕方ないじゃないか、出物腫れ物所嫌わずっていうし。


「大丈夫かい? しかし知らないって……」


 知らないものは知らないしなぁ。

 そもそも魔王ってなんだよって感じだしね。

 俺は自称神様から種子回収してって頼まれてこの世界に飛ばされただけだし。

 まともな説明なんて何もなかったしな。


「……そう、か」

「悪いな」


 ほんとに、誰か教えてくれ。


「今でも勇者の子孫、王家の血族に能力(スキル)が発現する者が稀にいる。だがその力は一つだけ。複数の能力(スキル)を持つものは居ない」

「ほー」

「だから君の力は、極力隠した方が良い」

「まるで俺の力が能力(スキル)といっているように聞こえるんだけど?」

「ふっ、仮に魔法だったとしても、君の力は常識の範疇を超えている」


 オスカルは肩をすくめて『魔法』にも届くんじゃないのか?

 と呟いた。


「でもみんな見てるだろ?」


 戦闘前後で散々使いまくったしな。

 流石に今更と思ってしまう。

 ああ、でも戦闘後の食料提供の時はなぜか天幕の中で食料を出すように指示されたっけ。

 今考えるとあれは敵兵に見られないようにしてくれてたってことか。


「うちの部隊の連中には箝口令を敷いてある」


 人の口には戸を建てられないというのだが、まぁいいか。


「わかった、できるだけ隠すようにするよ」

「ああ、それがいい」


 リアルタイムに状況が確認可能な精密な地図。

 容量不明の収納。

 そして金さえあれば無限に出せる食料。

 下手に強欲な権力者に情報が漏れれば俺は鎖で繋がれそうだ。


 特に無限に出せる食料はちょっとまずいかなとも思ってるし、あまり派手には使わないようにしよう。

 なんせ、この世界の『金』がどこかに消えていってるわけだし。

 多少ならともかく、あまり使いすぎるとこの世界の経済にダメージを与えるかもしれないしな。


「さて、それで、だ」

「うん?」

「これから僕たちの大隊は王都へ戻る」

「ああ、演習お疲れ様?」

「はは、違うよ」


 叙勲されるんだ。

 そう言って難しそうな顔をオスカルは浮かべるのだった。

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