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Jバスケット  作者: 神谷頼杜
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第3話 遅れてきた才能

第3話 遅れてきた才能


…私もまだまだ経験が足りないわね

杏ちゃんはこの壮絶な状況をみてありえないほど冷静だった


彼を正直見くびっていたわ。高校1年で約2mはある身長。

身長があれば必然的に動きは遅くなるのが本来の人間の定理。

しかし彼は俊敏でなおかつボールタッチが良い。いままで8人相手にしてファールをもらった相手が4人。すべてバスカンになって3点プレイ。一番圧巻だったのはさっきの北上戦よ。


北上先行で不意を突いた形だったけど3pをいきなり決めた瞬間、顔が変わったわ。次の攻撃を絶対に外せないという緊張感、そしてそれをものともしないフィジカルの恩恵をフルに活用したパワープレイになると踏んだ私が北上に与えた戦略はオフェンスファールの※チャージング狙い。   

※ディフェンス側が先に進路上にいた場合にオフェンス側に突き飛ばされた時にコールされるファウル


NBAやプロの世界では基本少ないけど高校や大学ならよく使えるプレイであり、

強引なシュートになる時にファールで攻撃を終わらせて次のシュートで決めて5点差で勝ちというシナリオだったわ。


しかし彼の選択は違ったわ。まさかのフリースローラインからのミドルジャンプシュート

。余程の自信がない限りあの状態での選択肢にならないわ…それを難なくこなし、しかもその後も立て続けに決めてきた。今思えば普通のことかもしれない、しかしその1投である意味すべてが決まったような感じもしたわ。


高校生で2mあれば日本ではほとんどがマークがついていてもオープンショットと同等になりえるということ。それを感じてしまった子たちは今こうして落ち込んでしまっているわけだけど…はたして残り井村と滝沢で八戸君に勝てるだろうか…


 着替えてきました!ではお願いします~b

 あぁ遅れてきたんだから名前くらい言いなさい!新入生君?

 すみません~僕は大間将人「おおままさと」といいます!よろしくです~


 では大間君先行でいいかな?八戸君?

 ええいいっすよ!


 大間君ルールはターン制5点先取よ。(割愛)

 わかりました~



 では始め!



大間にボールが渡った瞬間だった。完全に全員が不意を突かれたとしか言いようがない。

今までの誰よりも早いペネトレイトで八戸のわきを抜こうとした。

それに対し八戸は本能のままという言葉がふさわしい、いままで以上に対応を早くした。 別に前でボールを待ち構えるだけがディフェンスではない。

 ふっ少々身長が高いくらいではまだ甘い。横からでもレイアップの上がったところを叩き落としてやるわ!


そう…誰もがこのままペネトレイトで抜き去り一番確率の高いシュートで勝負すると思った。




しかし!




ペネトレイト1歩目で急ブレーキを踏んだような制動を見せ、そこから斜め後ろにステップバックを2歩3pラインまでしっかりさがって大間は3pシュートを放った。



そう



完全にフリーだった。八戸が体をゴール側へ向けてしまったが故に体重移動の逆をあっけなくとられてしまい、ジャンプもできず手も伸ばすタイミングもなかった。


綺麗な放物線を描いたそのシュートはゴールリングにもあたることがなくゴールネットをスプラッシュした。



誰もがその光景をみて息をのんだ。いったい何が起こった?

今までこの部全員完全にマークを外されたことがない相手に完全な勝利を今収めたのである。




ぉぉぉぉぉぉぅぅぅうううおおおおおお!!!っしゃーーーすげーーーぞーーー新人君!




歓喜の声は完全に負けた子からたくさん飛び交った。

これはこれはいけるかもしれない!

今のシュートがまぐれじゃなければ…きっと俺たちの仇をとってくれるかもしれない!

そう思えるほど今の数秒は折れた心を照らす一筋の光に思えた瞬間だった。



しかし



歓喜渦巻く中…いままで完全に負けたことがない男に

闘志の火が付いた音を近くにいた杏と雫は聞こえた気がした。



 …さて次は俺の攻めの番だな!


顔つきが完全に変わった八戸がそこには確かにいた。


 これは…マジでどうなるかわからない…

さっきの北上がいい例だ。ここからが本当の勝負だ。


さっきまでの歓喜の渦は一瞬にしてまた凍り付いた。


 さぁボールをよこせ!勝負だ!



大間も一度対峙しただけだが、次からが本番だと感じ、気合を入れなおした。



春一番が吹き去ったこの季節。

しかし嵐にも似た突風が今この体育館をまた駆け巡ろうとしていた。


第3話 遅れて来た才能 Fin






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