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だから私はスポーツが嫌い  作者: とみた伊那
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28.職場のスキー旅行

勤務先の病院では、冬になると何班かに分かれてスキー旅行というものが行われた。今の時代は『勤務時間以外は自分の時間』が認められつつあるが、当時は『会社に入ったら運命共同体。一緒にイベントに参加しましょう』という半分強制、特に新人は参加が当たり前という雰囲気だった。


最初、私もそれほど抵抗なく参加した。スキー場に着けばスキー教室があり、実力別に教えてくれると聞いたからだ。これを機会にスキーが滑れるようになるかもしれないという勘違いもあった。


もちろん私はスキー未経験のクラスだ。スキーの履き方、ストックの持ち方から始まり、他の人がすいすい滑っている脇で横向きになって坂を登る。そしてスキー板を『ハ』の字にして緩やかな坂を滑る。その繰り返し。うん、なかなか楽しい。案外このまま最後まで楽しく、職場の旅行を終わらせることができるのではないかと思った。


その日の午後。先生は今度は私達初心者をリフトに乗せた。

「いつまでも横向きに登って降りてじゃつまらないでしょう」

という理由で。

「全然つまらなくないです」

 と思ったが黙って付いていった。


ところがリフトを降りてすぐ、全員が驚いた。天候の加減で、その場所が氷でつるっつるのアイスバーンになっていたのだ。私達のクラスは午前中に自力で緩やかな坂を上り、ゆっくり滑って降りていた。それが午後リフトを降りると突然坂は長く急になり、しかも下は雪でなく氷。先生は

「おや、こんな状態だ。ひどいな」

とつぶやいた後

「まぁ、仕方ない。一人ずつ滑って」

 と『ハの字隊』に対してアイスバーン急降下を指示。それでもクラスの他の人は勇気があるので、頑張って坂を滑った。坂の上でためらう私に対し、先生は先に滑り降りて下から

「降りてこーい」

「降りられませーん」

の応酬。結局最後まで氷の坂を降りられなかった私は、結局スキー板を担いで坂を降りることになった。


そうやって苦労して坂を降りると、先生は再びリフトで上がろうと言った。私はそこでクラスを抜けた。そのまま休憩所で雪を眺めて過ごした。


クラスが終わってから先生は

「inaさんには悪いことをしてしまった。たまたま降りた場所がアイスバーンでちょっと難しいコースだった」

と反省していた。しかし先生が悪いのではない。私に勇気と根性が無かっただけだ。

そして休憩所でずっと時間を潰していた私は、別に不幸ではなかった。休憩所で雪を見てボウッとしていたことは、私にとっては楽しかった。少なくとも高いところに登ったと思ったらすぐに降りて、降りたと思ったらまた登るというエネルギーの繰り返しより、有意義な時間の過ごし方だった。


そしてスキーは二度とやらなくなった。


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