22.走り高跳び
繰り返し書くが私はスポーツができないが、いつも真面目に一生懸命取り組んでいる。むしろ真面目すぎるくらいだ。
今度は高校の授業での走り高跳び。一人ずつ順番に飛び、棒を落とした時点で終わり。飛べた人がいたら棒の高さを少しずつ上げていき、それぞれが何センチ跳べたか計ることになった。
最初は一番低い高さ。一メートルくらいだったと思う。全員が順番に跳んだ。いよいよ自分の番。よし、真面目に頑張って、この最低限の高さをクリアしようと助走の姿勢を取った。その時である。前回の体育の教師が
「止めなさい、inaさん。無駄だから。あとで低くするから側で見て待っていて」
と、跳ぶのを止められた。
そう言われたことはそれ程苦痛ではなかった。多分その高さは跳べないであろうことは真実だ。私は大人しく校庭の隅で、他の人が少しずつ高さを上げていくのを眺めていた。そして一番優秀な生徒がついに高跳びの棒を落として、最高記録はそこまでとなった。
よし、次は私の番だ。立ち上がって足首のストレッチをした。すると体育教師は
「はい、ここまで。今日の授業は終わり。棒を片付けて」
一度も跳ばないまま、その日の授業は終わった。
後で高跳びの棒を低くすると言った教師の言葉はどうなったのだろう。スポーツができない私のことなど、全く考えていなかった。ただ面倒な生徒を除外しただけだった。あの時「真面目にやれ」と怒ったはずが、真面目にやっていなかったのは教師の方ではなかったのか。
(教師なんて、その程度のものだ)
体育の教師が教えてくれたのは、大人に対する不信感だった。




