捨て子
朝を知らせる笛の音が町に鳴り響いた
明るいとも暗いとも言えない中街は目を覚ましたかのように活気づいていく
先程の静寂などは幻であったかのように様々な音や色に染め上げていく街
そこから幾ばくか離れた森の中一人の女が立っていた
その身なりのせいであろうか女はさながら亡霊のようであった
青白い不健康そうな肌にこけた頬、そしてその身を覆っている汚れたぼろ布
人としてまともな生活を送れていないのは言うまでもない
枯れ枝のように今にも折れてしまいそうな細い腕にはたしかに赤子が抱えられていた
汚れてはいるが整った顔と妙に曇っているようにも澄んでいるようにも見える目が不意にガラスのように固まった
女は静かにしゃがみこみ腕の中にある唯一の温もりをそっと木葉の上にくべたのだった
僅かであったが彼女の顔に悔しさと悲痛が入り混じった微笑が浮かぶ
ナーガ…
現在の苦痛など何一つ感じさせない囁きであった
それが彼女の与えてやれる全てであった
その数日後のことであった
女は空を眺めていた
あまりにも無機質な瞳で
もはや一言も語ることもない瞳で
灯火は消えた
種火はまだ燻っている
弱々しい輝きを放ちながら…
これはとある捨て子の物語