何かあったときには駆けつけるから!
僕が小学生の頃。同級生にミチヨちゃんて子がいたんだけど、水泳の授業でプールに入れたての冷たい水に浸かって、自由に遊んでいたときのことことだった。
「喜久田君、喜久田君!水がとっても綺麗だよ!」
「綺麗なのは、あんたの目だよ」
「えっ」
ホントにきらきらした目だったんだ。でもそれを言ったら、ミチヨちゃんの様子がおかしくなった。真っ赤な顔でうつむいて、僕をまっすぐ見れなくなった。
僕は特に意識せずにいたんだけど、ミチヨちゃんにとってはスゴいことだったらしい。
「喜久田君、危ない‼」
体育の授業で棒高跳びが終わって、僕は体育館のステージ横の階段に腰かけて休んでいた。ミチヨちゃんの声にはっと我に返ると、クラスのみんながかかえて運んでいる大きな棒高跳び用のマットが、僕のそばにある黒板をこちら側に倒そうとしていた。
「逃げて‼」
ミチヨちゃんが一人で黒板を押し戻してる隙に、僕は逃げ出した。
いつもミチヨちゃんは僕を見ていた。
ストーカー?かな
そうでもないかな?
中学にあがってもミチヨちゃんは僕を事あるごとに守ってくれた。
高校は別のところに行ったので、ミチヨちゃんの存在を僕は忘れていった。
大学入試の時、センター試験の会場で、僕は試験中に消しゴムを落としてしまった。監督官は気づいてくれず、僕は冷や汗を流した。
「すいません‼お腹が痛いのでトイレに行かせてください‼」
聞き覚えのある声がして、見ると、成長したミチヨちゃんが後ろの席から立って、こちらに歩いてきた。通りすがりに僕の落とした消しゴムを拾ってくれた。
今はミチヨちゃんがどこでどうしてるかわからないけれど、不思議な巡り合わせだな、と思う。
「・・・あれ?紙がない」
トイレの紙がきれている。どうしよう?
ポーン‼
扉の向こう側から誰かがトイレットペーパーをほおりこんでくれた。
「あっ!ありがとうございます」
用を足して個室から出たら誰もいなかった。
「まさか今のもミチヨちゃん・・・?」
嫌だ。嫌すぎる。
やりすぎだよ、ミチヨちゃん?
<fin.>