森での生活
「おはようリヴィ。冷める前にメシ食いな!」
「はい、、レベッカさん、、」
目を擦りながら欠伸をして椅子に腰掛ける。
テーブルの前には半熟の目玉焼きとベーコン、こんがりと狐色に焼きあがったトーストに温かい野菜スープ。
どれもよだれが垂れるほどに美味しそうだ。
目玉焼きにフォークを入れた瞬間、レベッカさんが「あっ!」と声を上げて振り返る。
「リヴィ!!あんた今日ルークにあうだろう!?」
「あ、、はい。お昼から薬草を届けに」
「渡して欲しい物があるんだよ!」
バタバタと2階に上がり、大きな音を立てて自室を荒らしている。
目玉焼きよりバターの溶けたトーストが食べたくなり、トーストにかじりつく。
「美味しい…」
「これだよ!これ!」
魔法を使ったのであろう、突然目の前に現れたレベッカさんに驚いてトーストが宙を舞うが、それは綺麗に皿の上へ着地した。
「この粉、ルークに頼まれてたんだがずっと見つからなくてねえ。
渡しといてくれるかい?」
「はい」と答えながら袋を受け取ると、スープを木のスプーンでかき混ぜて柔らかい野菜を食べた。
「今日は夜通しで部下の指導があるから、先に寝とくんだよ。」
「はい。
でもレベッカさん、無理は禁物です…。」
ガハハ、と豪快に笑うと魔法騎士団の紋様が描かれた紺色のマントを身につけ、腰に剣をさす。
「わかってるよ!あんたがいるんだ。
倒れるわけにもいかないからねえ。
じゃ、いってくるよ。」
私の頭を撫でておでこにキスをしてくれる。
「いってらっしゃい。」
レベッカさんは、私の祖父が亡くなってから私の面倒を見てくれている魔法騎士団の一員の女性で、優しくて強い、この森に住む女性の憧れである。
オリヴィアは普段、薬を作ったり怪我人の治療をしたりしている。
怪我人と言っても鍛錬で傷ができた騎士や転んだ子供たちの治療だが。
魔法使いの森は平和である。
表向きは。
平和なのに何故騎士団が出来たのか。
それは魔法の使えない人間との確執によるものである。
10年前、人間の国が荒み始めた頃、見兼ねた王妃の父が第一王女を引き取りに来た。
引き取る、と言ってもほとんど攫うようにして森に閉じ込めたのだ。
それ以来、平和の象徴を奪われた人間は魔法使いに抗議し、魔法で封じられた森に罵声を浴びせ、ゴミを投げ込んだり、火を放ち始めた。
魔法で外部から森への侵入は不可能だが、日を放たれては仕方がない。
人間の身勝手な行動に魔法使いの長であり、オリヴィアの祖父のエイブは魔法騎士団を設立し、人間との戦争に備えた。
誰からも愛された大魔法使いのエイブは2年前に息を引き取った。
それからは騎士団の中でも群を抜いて力のある魔法使い、アドルフが長を務めている。
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「さて、そろそろ行こうかな…」
皿洗いと掃除を終えたオリヴィアは、ルークに届け物をするために森の奥へと出かけて行った。