ボクとあなた
おはようございます。
さようなら。
ボクはずっと教室にいた。なぜかというとそれはボクの頭の出来が悪かったから。それだけだ。
ボクが勉強の天才だったらここにはいないし、ボクが芸術分野に秀でていたらここにはいない。
この学校はそういうシステムで動いている。ボクら生徒を道具として扱い、古くなったら捨てる。ボクらが働けば上の人が儲かる。
そんなシステムで動いている。
嫌だった。ボクはそんなシステムで動かされるのは嫌だった。だからボクは有能な脳みそを捨てて、天才的なセンスを殺して、ここで勉強という名の労働を強いられている。
教卓には滑らかな動きで命令をしてくる人型のロボットがあっちへ行ったりこっちへ行ったり大忙しだ。
大変なことで。
命令といっても、ロボットは自由に喋ることはできない。
できるのは「おはようございます」だけだ。
ポンコツにも程がある。
主に命令は目の前の端末で知らされる。
そして端末には新しい命令が示されていた。
『さようなら』
?
訳がわからなかった。
これまでの命令は『〇〇を作れ』だったり『〇〇しろ』だったりする命令型がされていた。
それなのに『さようなら』とは一体どういう意味だ?
ロボットに目を向ける。
そこにロボットはいなかった。
?
ほんとうに混乱していた。
ボクはこれまでやってきた命令を見直してみた。
そこにはボクが考えて諦めていたシステムの崩壊プログラムが構築されていた。
どうしてもわからない。
なぜそれがここにあるのか。
ボクはあなたになにかをしてしまったのか。だからあなたは消えてしまったのか。
ボク自身も消えゆくなかに
ボクが探していたあなたを見つけた。
「おはようございます」
あなたは変わらずにそう告げる。
「さようなら」
それしか言えないボクがいた。