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ニューゲーム?

更新が遅れてしまい申し訳ありません。

ブックマーク、評価ありがとうございます。


 チチチ…


 鳥の鳴き声とともに覚醒した千沙は、布団の中で一人呻いていた。彼女の中で昨日の大号泣は黒歴史のなかにしっかりと刻まれている。前世もあわせて齢むにゃむにゃな彼女は、昨晩の自分の行動に羞恥のあまり顔を熟れさせながら、現状把握という名の現実逃避をし始める。


(たしか、螢のお父さんは家には自分から話をしておく…と言っていたから、ひとまず家には帰らなくていいはず。見たところこの家の使用人も私にも友好的。それと…)



『ちぃちゃん、いままで………ね…。……今度は、…』


 ぼんやりと定まらない思考の中で一瞬だけ見えた彼の辛そうな顔と、途切れ途切れに聞こえた意味深な言葉。



(あれはいったいどういうことだったのかしら?もしかして螢の記憶もち?…いえ、もしそうだったらあんなに無邪気に私には近づかないはず。では、なぜ彼は今度は(・・・)と言ったのか?)



 考えても考えても答えは出てきそうにない。そもそも彼女だって、なぜ自分が転生を繰り返しているのかさえわからないのだ。この記憶だって、自分の妄想かもしれない。なぜここがゲームの舞台であるのかもわかっていない。なぜなら彼女は千沙である(・・・・・)記憶しかないのだから。

 

 そう考え始めると思考は次第に後ろ向きになっていく。それを振り払うように頭を振る。ここで暗くなっても仕方がない。

 手詰まりを感じて投げ出していた、右手をみやる。昨日の自分を励ましてくれた熱を思って、小さく嘆息した。


「わからないわ…」






「うん。なにがわからないの?」

「!!???」



 いつのまに。そう呟くと「顔をまっかにしてたところからかな」と螢がしらっと答える。始めからかよ!とツッコみかけた言葉は寸で飲み込んだ。距離が、近かったからだ。


 誰と?私と螢とのだ。



「うーん、ねつは下がってるね。でも、まだじっとしててね」

「ぎょ、御意…」

「ぎょい?変なちぃちゃん」


 とっさに答え、螢にくすくす笑われている彼女の中は大混乱だった。



(いや御意ってなんだよ御意って!そもそも彼の中で恥じらいというものはないのだろうか。二次元以外でおでここつんとか恋人同士じゃなきゃしないよ!…ここ二次元だった!!…それに、なんかいい匂いが…)


 ふわりと香った、懐かしい螢の香。そこまで考えて、はたと気づく。





「自分は変態かーっ」


「ちぃちゃんおちついてーっ」




 この日、高梨家はこの賑やかな騒音に当主がお気に入りのティーカップを割ってしまい、朝食を作っていた料理長は卵を握りつぶしてしまうなどと大混乱だったと、騒音で驚いて薔薇を雑草っともに引っこ抜いた庭師は語った。





「はっはっはっ!元気なのはよいことだよ!」

「父さま、笑いごとじゃないです!ぼく、びっくりしたんですよ!」

「本当に…申し訳ありません」



 その後、千沙たちは当主に呼び出されシンプルだが品のよい客間に集まっていた。


 客間は実に多様であった。ジェントルマンどこ行ったとばかりに豪快に笑う当主と、それにぷりぷりと怒る息子の螢。青い顔でひたすら謝る千沙に、鉄仮面の侍女長。もしこの場に第三者が踏み入ったならば、状況を理解できずに困り果てていただろう。千沙は今朝の自分を呪った。



「保護していただいたのにもかかわらず、朝から騒ぎ立ててしまい申し訳ありません」



 千沙が再度謝ったところで、当主が手でそれを制した。


「君は、わたしがこの程度のことで怒ると思っているのかね?」


「…いえ、決して、そのようなことは…」


 千沙は戸惑った。このような対応を彼女はしらない。自分が謝るような状況は家族に対してを除いて限りなくゼロだ。家族に至っては謝罪しても殴られ、床に引き倒されながらひたすら謝りつつ相手の怒りが解けるのを待つというのが常だ。だから、このようなときにどうすれば正解なのかがわからない。はいそうですかなど言えるはずもないのだ。


 戸惑っている千沙をみて侍女長がなにやら当主に耳打ちをした。そうだな、と彼は言うと居住まいを正して千沙に向き直った。思わず千沙の背筋ものびる。


「ここに君を呼び出したのは、決して罰を与えようとしたわけではない。子供が元気なのはよいことだ」


 ここで一度区切ると、彼はじっと千沙の瞳を見て次の言葉を紡ごうとする。その碧色の澄んだ瞳は螢によく似て、穏やかさの中に確かに光る知性があった。この瞳に、多くのものが信頼をおき従っているのだと千沙にもわかった。

 

 居住まいを再度正して向き直る。何を言われても、彼女は従うのみだ。たとえそれが、あの(じごく)に戻ることになっても、だ。





「君には、今日から高梨家の一員になってもらう」




 何を言われても、だ…







「えええええええ!!???」





 こうして千沙は本日二度目の騒音を招くこととなる。



やっとギャグ?というより明るい話が書けてほっとしています。作者です。無事に期末も乗り切りました。更新速度は遅いですが、ゆっくり見守っていただけると幸いです。

螢の口調はとあるキャラクターを少し意識して書いています。子供の口調むずかしい…。精進します。

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