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お嬢様の優雅な生活




 いらっしゃいませ。

 本日もご来店ありがとうございます。

 さて今日は先日の本の続きが入ったのでそれを読み聞かせて差し上げましょう。

 いえいえ、ご遠慮なさらず。

 お客様もそれをご希望で来店されたのでしょうから、それでは本日も貴方へ悲しくも儚い物語の続きを……え、まあ確かに悲しさは無いかも知れませんが、ですが優女様がお怪我なさって泣かれたり。

 ……いいんです! さて、では気を取り直してそれは昔の事でした。




「うーん良い朝」

 

 優女様はそれなりに早起きでございます。モテル女と言う者は美容のためにも、夜は早く朝も早くが基本でございます。


「っしょ」


 優女様は軽く伸びをされると、ご自分の部屋を後になさいました。恐らく今から念入りに身体を磨き顔を洗い歯を磨き、そして下着を吟味したのち凛とした姿で今日も今日とて、学園の男共をたぶ……魅了されるのでございましょう。


「おはよーう」

「おはようサヤちゃん」


 そんな優女様が朝食をお取りになるためかリビングへと向かうと、美しい大人の女性が彼女を出迎えました。

恐らくこの家の使用人でしょうが、胸が大きく出る所は出て引っ込んでるところは引っ込んでいるとは、優女様を差し置いて中々に生意気な事です。

 容姿にしてもまるで優女様を成長させたような顔立ちをしていて、本当にうら……全くもって全くでございます。


「お姉ちゃん珍しいね。こんな朝早くに起きてるなんて」

「う~ん、ちょうど一段落ついたからね」

「そっか、お疲れ様」

「ありがとう紗耶さやちゃん」


 ……さてお姉様と優女様の姉妹愛はまことに美しくございます。


「それでね~。あのお店の店員さんって本当に面白いんだよ」

「あのお姉ちゃんが良く行くお店の?」

「そうなの。顔も良いし人気ありそうなんだけど、面白い人なんだ。なんかね~よく本とかお客さんに読み聞」

「おはよ~」


 姉妹仲良く雑談をしていたお二人でしたが、そんな中に一人の見目麗しい小学生くらいの少年が乱入してこられました。その愛らしさときたら世の年下趣味の頭がお花畑な畜生女共が誑かして、さらってしまうのではないかとご心配になるほどでございます。


「おはよう健也」

「あーけんくんおはよう!けんくん、大丈夫? 朝起きなんて無理にしなくて良いんだよ?」


 さて愛らしいけんくん様に優女様はお姉さまらしく毅然とした態度でご挨拶をなされました。さすがでございます。

 さて、それとは対照的に優女様のお姉様は何処かの誰かを思い起こさせる態度で、けんくん様へと抱きつかれました。


「うん、だいじょうぶ。それにがっこうもあるし」


けんくん様はきっと困られているでしょうが、実の姉ですので邪険にも扱えない日々を送られている事は難なく想像できます。なんとお可哀想なけんくんさま。


「無理したら駄目だよ。学校なんて休んじゃえばいいんだからね。休んでお姉ちゃんと一緒にお風呂入っておねんねしようか?」

「しないよ。もうあさだし。ぼくもがっこうだよ?」

「けんくん無理しちゃ駄目。去年まで学校なんて通ってなかったんだからストレス溜まってるでしょう?」

「だいじょうぶ!しんぱいしないでおねえちゃん」

「けんくん!」


 なんと愛らしい笑顔でしょうか、この笑顔を見ては大抵の女はいちころにございましょう。事実お姉様は感極まった表情でけんくん様をその胸にお抱きになりました。


「お姉ちゃん。健也も困ってるんじゃない?」

「そうなのけんくん? おねえちゃん迷惑? お姉ちゃんの事嫌い?」

「ううん。すきだよ」

「けけけけんくん。おねえちゃんとちょっとお部屋にいこうか。大丈夫すぐ済むからね。うん、痛くないよ」

「え、でもがっこう」

「大丈夫。学校にもお姉ちゃんが連れてってあげるから。ちょ、ちょっとお姉ちゃんとお部屋で大事な事しようね?」

「で、でも」

「ちょっとお姉ちゃん。そろそろやめとかないと」

「ほら、けんくんいこうね?」

「う、うん」

加奈かな……何してるのかしら?」

「え、あ、あれ」


 どうやら御姉様のけんくん様への愛はちょっぴり暴走してきたご様子です。けんくん様もそんな御姉様に少し戸惑いながらも頭を縦にお振りになりました。

 しかし、次の瞬間に御姉様の後ろから恐ろしき声が聞えてまいりました。その声の主はお姉様をさらに成長させ凛とした、目つきの鋭い、けれど姉妹によく似た美しいご婦人様が立っておられました。


「い、いや。ちょ、ちょっとけんくんのストレスを発散させてあげようかなって」

「あーおかあさんおはよう」

「うん、おはよう健也。ちょっとお母さんはお姉ちゃんとお話があるから、朝御飯は紗耶お姉ちゃんと食べておいてね」

「うん。わかった」

「おはよう紗耶。じゃあそういう事だからお願いね」

「う、うん。おはよう……健也すぐ用意するから待っててね!」

「さ、さやちゃん! けんくん!」

「さって健也食べようか?」

「うん!」


 母君様に連れ去られていく御姉様の悲痛な叫びも、二人は何処か態度で無視され、仲良く朝食をお召し上がりになりました。仲良き事は美しき事にございます。




 なんやかんやとありまして、優女様は無事家を脱出なさり、学園へと到着なさいました。


「おはようさやちゃん」

「おはようあきちゃん」


 学園に到着されて、通り行く男共の視線を奪いながら御自分の席に向かわれた優女様。

そんな優女様に、三つ網眼鏡の定番過ぎるほど定番の格好をした、純情ぶった友人らしき女が朝の挨拶をしてこられました。

13歳程度の女であれば普通なのかもしれませんが、裏で何を考えているか分かった物ではございません。友人ぶった女が時には発情した男のように豹変してしまう物です。なんと嘆かわしい。


「秋ちゃんちょっと顔色悪いけど大丈夫?」

「大丈夫だよ。昨日ちょっと本を遅くまで読んでたからちょっと寝不足なだけだから」

「そうなんだ。夜更かしは禁物だよ?」

「うん、ありがとう」


 さすがは優女様。自然な素振りで友人を心配して見せて、好感度アップを狙います。こうした日々の積み重ねが学園のアイドルには必要なのでございます。

ましてや、こういう気の弱そうな女は格好の的なのです。たちの悪い男や女友達に簡単に騙されるタイプですからちょろいのでございます。

まあですが、それはそれでございましょう。優女様は殆ど敵を作らぬ天性のアイドル。きっとこの少女も優女様と居れば安心でございましょう。


「にしても秋ちゃん本好きだね」

「面白いからね」

「そっか」

「うん、そうなんだよ」


 二人はにこにこと笑顔を浮かべて教師がこの教室にくるまで、しばしご歓談をお続けになりました。

 しかし、いったい裏ではどんな事を思いながらやりとりをしているのやら『けっすましやがって。誰の時間を消費してると思ってるんだか、この小娘が!』とでも実は内心思っているのかもしれませんよ。隣の隣に座っているこの少年は。

いかにもそんな事を思っていそうな顔で眠っていますし、いやはや恐ろしい。




「好きです俺と付き合ってください」

「ごめんなさい」


 そして時は放課後。学園のアイドル優女様は今日もお尻を追いかけてきた、女なら誰でもいいとでも思っていそうな畜生な男に告白などを少々されておりました。


「お願いだ! きっと後悔はさせない!」

「ごめんなさい」


 中々に男らしい台詞を吐く男でございましたが、そこは優女様。そんな付き合ったら絶対に後悔しそうな言葉に心を乱されたりはなさいません。まことに見事な即答でございました。


「どうしてだ?」

「私好きな人がいるんです」

「……そっか。それなら仕方ないな」


 しつこい男でございましたが、優女様は必殺のモテル女スキルの一つである定番の断り文句で回避なされました。


「俺が言うのもなんだけど……がんばれよ!」

「はい」


 晴れ晴れとした笑顔で去っていく男。この後この現場を見ていた一人の少女が彼に告白する事になる……なんて現実はそんなに甘くないのでございました。




「ただいまー」

「おかえり」


 いつもの日課をこなしてご帰宅なされた優女様を服の肌蹴た御姉様がお迎えになさってくださいました。


「あれ、お姉ちゃん。生きてたんだ」

「紗耶ちゃんひどーい。お姉ちゃんの事嫌いなの?」

「まあ、それなりに好きだよ」

「ふふ、お姉ちゃんも好きだよ」

「けんくんよりも?」

「いい……二人とも大事な妹と弟よ。くらべるなんて出来ない」

「そっか残念」

「元気出してね」

「うん。かっくんの所行って来るね」

「わかったわ。またお話聞かせてね」

「うん!」


 優女様と言えど性別の壁を越えるのは容易くはありません。


「あ、今日はお母さん遅くなるらしいから帰るの遅くてもいいよ」

「そうなんだ」

「うん。けんくんの面倒もお姉ちゃんがしっかり見ておくから、紗耶ちゃんは何の心配もせず安心して朝帰りしてね」

「わかった。出来るだけ早く帰ってくるね」


 さすがはご姉妹と言ったやり取りでした。まさに阿吽の呼吸、お二人は血の繋がりによって心から通じ合っているのでございます。


「かっくーん」

「克也だって言ってんだろ」


 いつも通り幾多の困難を乗り越えた優女様は、かっくん様のお部屋へとたどりつく事に成功なされました。

 そしていつも通り頭が沸いたかのような甘い言葉をかっくん様へと投げかけます。かっくん様は一瞬うんざりとしたお顔をしながらも、辛抱強く否定の言葉を優女様へとお返しになられます。お可哀想なかっくん様。これには私目も同情を禁じえずベッドでいち……頭を撫でて慰めてあげとうございます。と私の友人なら思うことでしょう。間違いございません。


「かっくんじゃあアレしよっか」

「今日は何だよ」

「ほら、対戦パズルゲーム」

「何が悲しくて年下の女とゲームしなきゃいけないんだ」

「またまた、かっくんだってゲーム好きでしょ?」

「人並みにな」

「私の事好きでしょ?」

「……知るか」


 さすがは優女様。話の流れで自然すぎるほど自然にかっくん様から告白をさせようとなさいます。さすがはモテル女と言ったところでございましょう。

 しかしそこはかっくん様も大学の畜生な女共のせいで多少は慣れているのか、顔を赤く染めながらもひっかかる事はありません。

 恐らくけんくん様が相手でしたらこの策は成功していた事でしょう。さすがかっくん様でございます。


「私はかっくんの事大好きだからね」

「……その、俺も別に嫌いってわけじゃ」

「かっくん!!かっくん。ほら、ちょっとベッド行こうね。大事な話があるの、ほらおいで。大丈夫怖くないから」

「ちょ、ま、まてやめろ。ズボン脱がすな!おい、やめろ!やめろって!こら」




 この物語は優女様とかっくん様の爛れた関係を語る物ではございません。

 今回もかっくん様は毅然とした態度で優女様から貞操をお守りになりました。かっくん様は決して年下趣味の畜生ではございませんので、当然の流れでございます。


「はぁはぁ、げ、ゲームするんだろ」

「あ、そうだったね。私一番の楽しみは後に取っておく方だもんね」

「よっし今日は俺が勝つからな!」

「何だやっぱりかっくんもゲーム好きなんじゃない」


 かっくん様は何処か作り笑いにも似た笑みを浮かべながら、嬉々としてゲームの準備に取り掛かられました。



「あ、今日は早い目に帰るね」

「お、そうなのか。仕方ないな」

「夕飯の用意もしなきゃいけないから」

「……まあ夕飯くらいなら食っていってもいいけどよ」

「かっっくん! あっでも駄目。今日は駄目。ごめん」

「いや、別にそんな謝らなくても良いんだが」

「ごめんね今日お母さん遅いから、けんくんの夕飯も心配だし」


 お優しき優女様のお言葉に、少しだけかっくん様の目が柔らかな物へと変わりました。ですが、油断してはなりません、恐らくこれも優女様の特技の一つでございましょう。

健気な女に男とは弱く簡単に騙される生き物でございます。モテル女とはそれを心得ているものでございます。


「でも加奈さん居るんじゃねえの」

「……そうだね。でも下手したらけんくんが夕飯になるかもしれないから」

「何言ってんだ?」


 不思議そうに優女様の横顔を見つめるかっくん様。世の中とは謎と不思議に満ちていますね、いつかかっくん様にも分かる日が来るのかもしれません。

 その日が来る事を願いましょう。



 

 では本日のお話はここまでとなります。

 次回のお話はまたお取り寄せしておきますね。

 ではご来店ありがとうございました。




 ……ところでなのですが、サイトに登録と言うのはどうすれば良いのでございましょうか?

 いえ、私ではなく私の友人がですね、はい。



 つづく

 


ゲームしてないような気がするんですが、さやちゃんはゲームは好きなだけですから!

次回はもうちょっとゲームすると思います。

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