学園のアイドル。その名も!
元々別作品の嘘予告で書いた話が、結構いいなと自分で思ってしまって何をとち狂ったのか書き始めました。
これはようこそいらっしゃいました。
本日は悲しくて儚い物語を僭越ながら私が語らせて頂きましょう。
「好きです! 俺と付き合ってください」
「ごめんなさい」
言うほど昔ではありませんが、むかしむかし、あるところに、それは美しい13歳の少女が居ました。
彼女はよく学園内の年上の男や、発情期まっさかりの少年たちにおしr……失礼いたしました。
背中を追われては告白をされていました。
彼女は男性達にとってそれはもう魅力的な女なのでしょう。そのつぶらな瞳、綺麗な声、ただし胸などは年相応でしたが、そこは思春期真っ盛りの男たちです。
まさに妄想乙なのですと言って良い想像力を駆使してそんな障害など物ともしませんでした。
そんな色々とある日常生活を送っている少女A事このお嬢様。なんやかんやとありまして、今日も今日とて学園のアイドルである彼女――そうですね中学生ですから。……とりあえず面倒なので優女様としておきましょう――どこの馬の骨とも分からぬ輩に告白などを少々されておりました。
「どうして? 俺じゃ駄目なのか!?」
しかし断りの返事を返しても引かぬ男。多少は骨がある男なのかはたまた勘違い男なのか判断に迷う所です。しかしこれも青春。青い春なのでしょう。
優女様も『あらあら、私も罪な女ね』と思っているのかは分かりませんが、表面上は困ったような笑みを浮かべて困惑した素振りを見せておられました。
あざといですが、これも学園のアイドルには無くてはならない行動であり、一々計算でやってる訳でも無い事は説明するまでもありません。
「ごめんなさい。私今好きな人がいるの」
「……そっか、それなら仕方ないか」
ここで出ました。世のモテル男女の定番の台詞。
これは定番の断り文句であり、必殺の言葉を男へと優女様は放ちました。これを言われては大抵の男は諦める事でしょう。さすがは優女様です。
勿論優女様には好きな人など恐らく居ないでしょう。ですが、嘘も方便。モテル女はこれくらいのスキルは息をするように使えるものでございます。
「では私は行くね」
「ああ、時間取らせて悪かった」
『全くもってその通りであり、この男も多少自分の行いを省みる事ができましたか、無駄な時間を取らせやがって弁えろよ駄男が!』……と優女様が内心で思っていたかは定かではありませんが、私といたしましては思っていたのでは無いかと睨んでおります。
「はあ」
優女様は一人物憂げに溜息をつくと帰宅のために歩き出されました。
誰にも聞えないだろう場所でも、油断せず『振った私も傷ついてるのよ』と言いたげな仕草を見せて好感度を上げようとはさすがと言ったところでございました。
「ただいま」
優女様はご帰宅なされると簡単な身支度を整えて、またお出かけになられました。
モテル女は忙しいのは周知の事実であり。優女様もその例から外れてはおられません。
数分から数時間……まあそれなりに歩いた優女様は一軒の家の前で足をお止めになりました。具体的に言うと優女様のお隣の家でございます。
チャイムを鳴らして、この家の親らしき人物と挨拶を交わすと、無断で家に侵入なさりました。
親の了承はあったようですが、私が気にいら……とりあえずなんやかんやとありますが恐らく無断で進入なされました。
そして優女様が向かったのは一つのお部屋でございました。
「かっくーん邪魔するよ」
そのお部屋の内部には一人の男がおりました。少々鋭い目つきをしておられますが、男らしく人の目を引く容姿をしておられます。
好みが分かれるでしょうが、わた……好みが合えばモテル男性でしょう。間違いありません。
「誰がかっくんだ。年上の男に向かって」
「はいはい、わかったわかった。いいからアレさせてよ」
「お前人を何だと思ってるんだよ?」
「愛しの人。恋人。将来の旦那様。私だけの男。近づく女はこ……まあそんな所かな」
「……」
なんとあざといお言葉でしょう。優女様のお言葉にかっくん様は顔を赤くして照れてしまいました。そのお姿は世の女が母性本能をくすぐられる物でした。
「あ、かっくん照れてる? ねえ照れてるの?」
「うっさい。俺は大学生だぞ。そんな台詞聞きなれてる」
なんという事でしょう。
かっくん様は既に大学内の畜生な女共の魔の手にかかっておられたのです。なんと嘆かわしい。
「またまた。でも結婚は3年待ってね。私まだ13歳だから」
そう言って片目をつぶりウインクをなさる優女様はそれはもう憎たら……とても可愛らしく魅力的でした。
「うっさい。……とりあえずかっくんはやめろ。おれは克也だ」
「……かっくん!!かわいい!ねえ襲っていい?襲っていい?」
「いや、ちょ、やめろ! 押し倒すな! やめろこら!服を掴むな!」
このあとかっくん様は優女様に押し倒されて美味しく頂かれました。
……などと言う事は勿論無く。残、いえ、幸いな事にかっくん様はかろうじてその貞操を死守する事に成功なされました。
この私が語る物語はとても健全であり、優女様とかっくん様が爛れた生活を送る物語ではありません。
「はぁはぁ、おいサヤ。お前アレやりに来たんじゃなかったのかよ」
「あ、そうだった。かっくんが誘惑するから」
「してねえよ。ほら取り合えずそこ座れ」
かっくん様が優女様を『サヤ』だとか呼んでおられるようですが、恐らく優女様の名前なのでしょう。
ですが優女様もサヤも大佐も大した違いはありませんので、今までどおり彼女の事は優女様と呼ばせて頂きます。
そしてかっくん様に促された優女様は『アレ』と呼ばれる物のために一つの椅子に腰掛けました。
途中優女様がかっくん様の横顔を見ておられましたが、そこは見てみぬ不利をするのが人としての優しさでありましょう。まあきっと見とれていたんでしょうね。
「しっかしお前人の部屋にゲームするためだけに来るなよ」
「だって家だとゲームあんまり無いんだもん」
「買えよ」
「中学生のお小遣い舐めないでよ」
「はあ」
「それにかっくんの部屋ってPC2台もあるんだし、二人でオンラインゲームとか出来るよね」
「どうしてこんなことに」
かっくんさまは物憂げな溜息を吐かれます。そのお姿はとても様になり、何処かの女と違って微塵も計算などが含まれて居ない事が察せます。なんと可哀想なお人でしょうか、御労しい。
「よし、今日はイベント中だから。あのアイテムドロップするまで頑張らないと」
「はあ好きにしろ」
なんという事でしょうか優女様はゲーマーだったのです!
「ちょっと何よこいつら、いつまでボス前で張り込んでんのよ。どうせ時間のある廃人なんだから少しは学生様に譲りなさいよ」
「そうだな」
「ちょっ何よこいつら無言でPT申請してきた。そんなのいらないのよ。取り合えず譲れってのに」
「そうだな」
「ソロで倒せるイベントボスでドロップ率下げるPTなんて組んでも効率悪いのよ。私には廃人と違って時間が限られてるのに」
「ちょっと口悪くなってるぞ」
「かっくんは黙ってて。今日のイベントはかっくんのためでもあるの。このイベントアイテムをドロップできたらかっくんも私と同じ狩場に行けるんだから」
「別にいいよ」
「遠慮しないでいいの」
優女様はゲーム中は声は荒げずに少しだけ口が悪くなるという特技を持っておられるのです。
この特技が今まで役に立った事は特にありません。
「大体何よこのイベントは。何でイベントボスが限られてる上に一つのチャンネルに数体しか出ないのよ!」
どうやら優女様はお怒りのようです。ただこのゲームを私が、何処かの誰かに変わって擁護させて頂くのなら、この運営会社様はオンラインゲームの運営経験が乏しく、それでも試行錯誤しながら運営なさっておられるのです。
それにプレイヤーの度重なる面倒な要望にも出来る限り親身になって答えていらっしゃるし、そこから長い目で見ようじゃないかと評価してるプレイヤーも多いのでございます。
ですがそうは言っても今回のイベントに関して1プレイヤー側から言わせて頂ければ、やはり糞イベ乙なのです。本当にドロップ率悪いしむかついて何度ディスプレイを破壊しかけた事か……と私の友達の友達が言っておられました。
「なあ、今日は諦めないか?」
「大丈夫! 今調べたら今日の午後に緊急メンテがあって出現場所がランダムになったらしいの。こいつら廃人のくせに気付いてなかったみたい。取り合えず探し回ってFA取ればこっちのもんだよ」
「うん、そうか」
「うん、私とかっくんなら大丈夫。二人ならどんな障害も越えていけるから!」
「諦めも肝心じゃないかと俺は思うんだ」
「そうだねかっくん。じゃあ私は諦める事を諦める。 本当に私達って気が合うね」
「どうなんだろうな。俺はたまに噛み合ってない気がするけどな」
「そう? でもそうだね。私達にはまだ時間が足りないよね。もっと一緒の時間を増やして悲しみも喜びも一緒に経験しようね」
かっくん様には一つ悩みがありました。
それと言うのも優女様とたまに会話のキャッチボールが出来ない事でした。
何故か普段は優女様はまともな少女なのですが、ちょっぴり愛が暴走することがございます。
恋する乙女はお強いと昔から言いますので、結局のところ気にしたら負けなのでございましょう。
「さってかっくん頑張ろうね」
かっくん様はきっと彼女に出会った時から負けて居るのかもしれませんが、世の男共……少なくとも優女様の通う学園の男共からすれば十分勝ち組なので諦めも肝心だと私は思います。
願わくばこの二人に幸多からん事を。
では本日は此処までです。
この物語の続きは私も取り寄せておきます。では本日のご来店ありがとうございました。
……ところで本の安いお店を知っておられますか? ああ、いえいえ、ただちょっと私の友人が気にしておりまして、はい。
つづくかもしれない
読了ありがとうございました。
この作品は不定期連載になります。
かなり人を選ぶ作品ですので、不快になられていたら申し訳ございません