表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

決意

 まいなはお粥を食べてすぐ眠ってしまった。よほど疲れていたのだろう。もしかしたら、こんなゆったりとした空間で眠れるのも久しぶりなのかもしれない。

「かずと、ちょっといい?」

「はい」

 医務室長に呼ばれて別室へ移動した。

「まいなちゃんのことだけど、朝まではここで預かるわ。かずとはどうするの? 部屋へ帰ってもいいわよ」

「いえ、彼女のそばにいます」

「心配しなくてもあの子は逃げたりしないと思うけど」

「俺が気になんで」

「でもあなたも任務終わったばかりで疲れているでしょう」

「平気です。椅子でも寝れますから」

 医務室長は困った顔で笑った。

「分かったわ。毛布を持ってくるから」

「ありがとうございます」

 俺は一礼してまいなの眠る部屋に戻った。ベッドの傍にある椅子に再び座る。

 こうして寝ている姿は普通の女の子にしか見えない。威圧感や物々しさは全く感じられない。

 しかし、この子は確かにあのキャップ帽の幹部なのだ。青の騎士団が警戒する人物に含まれ、一番謎に包まれていた‘赤’の幹部と、まさかこのような形でご対面するとは。

 俺はまだこの子が実際に戦う姿を見ていない。どこかで、この子は偽者なのではと疑っているのだろうか。問いかけたって返事が帰ってくるはずもない、か。

「このキャップ帽がなかったら」

 俺はサイドテーブルに置かれた赤と白のキャップ帽を手にとった。これは俺も見たことがある。いや、こいつのせいで着用者の顔を見ることができなかったと言うべきだろうか。どこにでもあるキャップ帽。しかし、あの殺伐とした空間ではやけに目立っていた。無個性の個性、とでも表現すべきか。

「使い古された跡、これが本物であることは間違いない。けど」

 この子はどうして帽子を被って戦っていたんだ? これも、強制されたのだろうか。

「考えたって仕方ないよな」

 キャップ帽を元の場所に戻したその時、医務室長が毛布を持ってきてくれた。

 俺はお礼を言ってそれにくるまると、眠りについた。



△▽△▽△▽△



 静かな朝だった。いつもの荒々しい声も騒がしい音も聞こえない。ゆっくりと瞼を開く。真っ白な美しい空間に、どこか落ち着く香りがする。

 人影が視界の端で揺れ動いた。その瞬間、過去の光景が頭をよぎる。それは遠い昔の、お兄ちゃんがまだ家にいた頃の光景。つい、心の中でお兄ちゃんと呼びかけてしまう。

「おはよう。よく眠れたか」

 その声にはっとし、慌てて体を起こした。大丈夫、今の状況はちゃんと飲み込めているよな。そう自分に言い聞かせて、頭の端に残った光景を彼方へ追いやる。

「はい。おはようございます」

 昨夜の出来事は、寝て起きた今でもよく覚えている。

「着替え、ここ置いとくから着替え終わったら呼んで」

「えっと、良いんですか?」

「良いも何も、その格好じゃ目立ちすぎるからな。まぁ周りは制服着てるから、俺の私服じゃ目立たないなんてことはないけど」

「ありがとうございます」

「じゃ、後でな」

 そう言って部屋を出て行こうとするかずと君を私は慌てて呼び止めた。

「あのっ」

「どうかした?」

「いえ、たいしたことじゃないんですけど。そこの帽子、預かっててもらえませんか? それは、自分を欺くための道具ですから、もう欺く必要はなくなったので。もちろん、無理にとは言いませんが」

 かずと君は少し考えて、分かったと言い帽子を持って部屋を出た。ほっと一安心する。何と無く、帽子が視界にはいるのが辛かった。

 私は待たせてはいけないと急いで着替えを済ませる。かずと君の私服だと言っていたが、やはり結構大きい。上はぶかぶかでも平気かな、でも下は……なんて危惧する必要はないみたい。ちゃんとベルトが置いてある。なんて親切なんだろう。

「あの、終わりました」

 かずと君が出て行った方の扉を開けると、真っ先に目に入ったのは金髪を綺麗に一つにまとめた背の高い女性だった。腰にはレイピアが備わっている。

「お前が、赤の姫か」

「あ、えっと。青の騎士団さんの見解でいくならそうなります」

「さんはいらない」

「……すみません」

「私は青の騎士団団長補佐役の伊集院麗華。お前があいつらの幹部だとは想像もできんな。籠に閉じ込められたお姫様にしか見えん」

 そう言い残して麗華さんは医務室を去った。

「私は、疑われているんですね」

 視線を床に落として呟くと、かずと君が困ったように笑った。

「あの人は、良くも悪くも正直なんだ。でも、正義感が強くて真っ直ぐな人だよ。たぶん、今のまいなを見ても誰もあの幹部だなんて思わない」

「そんなに、恐れられているんですか?」

「まぁ、‘赤’の幹部ってだけで警戒はされるからな。特に、キャップ帽の奴は顔が見えない分謎が多くて」

 そこまで言って、かずと君は急に話すのを止めた。しまった、という顔をしている。

 確かに今の私は、キャップ帽を目深に被って髪を隠した私とはだいぶ違うだろう。だって、そうやって偽ってきたんだから。

「悪い」

「気にしないでください。それより、脱いだ服はどうしたら」

「それは、部屋の中に置いといてくれたらいいよ。じゃ、行くか」

 歩き出したその背中を慌てて追いかける。まだ彼のことをよく見たことはなかったが、こうして後ろ姿を観察するだけでも分かることがある。

 青地に白銀のラインがあしらわれたロングジャケットは、昨日話をした背の高い男性よりもシンプルなデザインながら、確実に高いくらいであることを象徴している。幹部クラスであることは間違いない。腰の辺りにある膨らみは、銃を携帯していることを思わせる。きっと一丁だけではない。何種類かの銃と弾薬をそのジャケットの下に隠し持っている。

 そんなことを冷静に判断している自分に気づき、はっとする。私は恩人に対してなんて無礼な真似を。

「まいな、もう少しこっちきて。こっから人通りが多くなる。変な目で見てくる奴とか、こそこそ話し出す奴がいると思うけど気にするな。俺にしっかりついて来い」

「はい、分かりました」

 私はかずと君に駆け寄った。そして、歩幅を合わせながら半歩後ろを歩き続ける。

 言われた通り、一つ廊下を曲がった先は青色の制服を着た人で溢れていた。若い人でも私より五歳か六歳は年上だろう。

 かずと君は迷いなく堂々と歩を進めた。私は周りを盗み見しつつ、かずと君について行く。

 早速私を見つけては、全身をくまなく観察してくる人、急に進路を変えて走り出す人、数人で話し出す人と様々だ。共通するのは私に注目しているということ。

「気にするなっていう方が無茶だったな」

 ぼそっと話しかけてきたかずと君に小さく首を振る。

「私はいいんです。けど、かずと君に申し訳ないです。私のせいで」

「元々、俺も人好きしない性格だからいつもこんなもんだよ」

 いつもこんなもん。その言葉に小さな含みがあることに、気づいてしまった。たぶん、意識してのことではない。できることなら、気づかない方が良かっただろう。けれど、気づいてしまった私は考えることを止められなかった。

 そう言えば、しっかりしているように見えるけれど、どこか幼さの残る顔をしている。もしかしたら、周りの大人たちに比べるとかなり若いのかもしれない。麗華さんも綺麗な人だったが、推定で二十四歳、大学を卒業したくらいの年だろう。かずと君が兄貴と呼んだ背の高い男性も同じくらいか、それより少し上くらい。門衛さんはだいぶ年のいった人だったから、ここにいる人の年齢幅は広いのかもしれない。

 青の騎士団がどういう組織なのか詳しくは分からないが、なんにせよかずと君はかなり若い方だろう。しかし位は高い、となると、周りからは特別視されるに違いない。人好きしない性格、と彼は言ったが、それが理由ではない気がする。

「着いたよ、入って」

 気づくと目的の場所へ到着していたらしい。ここはどこだろう。さっきより明らかに人の気配が減っている。

「ここは寮棟、でこの辺りは男性幹部専用個室がある場所。向こうに行くと女性幹部専用個室があって、反対側の通路には団員寮がある。一般団員は位に合わせて四人部屋、二人部屋、一人部屋が割り当てられる。幹部になるとこうして一人部屋の中でも特に立派な個室が与えられるわけ。他にも結婚している団員向けの官舎とかもあるけど、それはまぁいいだろ。で、ここが俺の部屋」

 私が警戒しているように見えたのだろうか、かずと君は丁寧に説明してくれた。

「おじゃまします」

「そんな恐縮しなくていいよ、しばらくここで暮らすことになるんだし」

 驚くことに、かずと君の部屋だと言われて入ったその場所は、かなり広かった。

「あの、かずと君の個室にお邪魔してもいいんですか」

 それは、普通に人として、申し訳なさを感じての問いだった。私のようなよそ者が、プライベートな空間を侵略するのだ。いくら広くても嫌なのではないだろうか。

 しかしかずと君は私の心配をよそに、笑って、もちろんいいよと答えた。

「見ての通り、一人で過ごすには広すぎるんだ。奥の部屋なんか全く使ってないし、物置にするほど私物もない。だから気にせず、まいなの部屋にしてくれ。さあ、いつまでも玄関で突っ立ってないで早く上がりなよ」

 促されるまま玄関で靴を脱ぎ、私の部屋にしていいと言われた部屋へ通される。本当に、なんにもない空っぽの部屋だ。けど、昨日までいたコンクリートむき出しの部屋よりは確実に落ち着ける。私なんかがこんな普通の部屋を使ってもいいのだろうか。

「悪いな、殺風景で」

「いえ、とても素敵なお部屋です」

 それは心からの素直な言葉だったけれど、かずと君は苦笑いで本気には受け取ってくれていない。

「寮で使わなくなった家具とか貰えるみたいだから、朝飯食ったら一緒に運ぼうか。たぶん、苦労なく過ごせる程度には揃うと思うよ」

「すみません、みなさんにたくさん気を使わせて」

「いいって、気にするな。それよりお腹空いただろ。ご飯貰って来るから、まいなはここにいて。もし誰かきても無視していいから」

「分かりました」

 かずと君は玄関でサンダルをつっかけて出て行った。さっきまでは作り良いのブーツを履いていたが、やはりそれも制服の一種なのだろうか。青の騎士団本部内でも、正式な格好をしなくてはならない場所とそうではない場所があるのだろう。私には、制服というものですら馴染みがないから、その辺の区別が分からない。そういえば、街ですれ違う中学生や高校生が制服姿で歩いていて、それだけでなんだか大人っぽく見えたものだったな。と懐かしい記憶が蘇り、少し胸が痛んだ。



......



 俺が朝食を持って部屋に戻ると、まいなは俺がここにいて、と言った場所から全く移動せず、その場で体操座りをして顔を伏せていた。やはり、居心地が悪いのかもしれない。ここに来る途中もかなり注目されてたし、事あるごとにすみませんと言うあたり、かなり引け目を感じているのかもしれない。そんなに気にしなくてもいいとは思うんだが、そうもいかないのだろう。

「まいな、こっち来て」

 俺が呼ぶと、はっと顔をあげて慌てて寄って来た。

「食堂で貰ってきた」

 そう言ってリビングにあるちゃぶ台に並べていく。パンにヨーグルトに牛乳、全部たいしたものじゃないけど、まいなはわぁと感嘆の声を溢した。昨夜のおかゆの時といい、この子は今までどんなものを食べてきたのか。それは、このほっそりとした顔つきが充分なくらい語っている。

「好きなだけ食べていいよ」

「ありがとうございます。いただきます」

 ちょこんと座って少しずつパンをかじる姿は、小動物のようで愛らしかった。俺も、まいなの向かいに座ってパンをかじる。ただ広くて虚しいだけの自分の部屋が、初めて心地良いと感じられた瞬間だった。

 そして朝食を終えると、まいなに少し待ってもらい、自室で制服から私服に着替えて早速行動を開始した。

「今から倉庫行って物漁るぞ!」

「漁るって、いいんですか」

 まいなは気が引けるのか複雑な表情だ。

「問題ない。どうせ倉庫にあったっていつかは捨てられるんだから、その前に使ってやる方が物も喜ぶってもんだろ。許可も取ってるし、大丈夫」

「そ、そうですか。分かりました」

 なんとか納得したようすのまいなを連れて、俺は寮棟にある倉庫、通称不用品の巣窟へ向かった。

 倉庫のシャッターを開けると、予想通り、団員が置いてった家具やら電化製品やらが無造作に積まれていた。この中から必要なものを探すのは案外大変かもしれない。

「おっ、かずとじゃん。そんなとこでなにしてんの」

 どこから手をつけるか頭を悩ませていたら、同期の奏太(そうた)が通りがかりに声をかけてきた。階級は俺より低いし、同期と言っても年上だが、奏太はそういった形式的なことを全く気にしない性格のため、俺が気楽に話せる数少ない団員だ。

「つかなに、その可愛い子。新入り? 俺にも紹介してよ」

 目ざとくまいなを見つけると、進路を変更して俺らに近づいて来る。相変わらずのアホさ加減に呆れるな。

「俺、泉谷(いずみや)奏太って言います。よろしくね」

「まいなです。よろしくお願いします」

 早速まいなに絡んでいるが、ここはどうしたものか。まいなは驚きつつも、奏太が差し出した右手を握り返した。

「嬉しそうだな」

 俺が嫌味っぽくそう言ってやると、満面の笑みで振り向いた。

「当たり前だろ、こーんな美人さんと握手ができてお知り合いになれたんだぞ! これを喜ばずしていられるか!」

 はいはい、分かりました。

 身を乗り出して喜びをアピールしてくる奏太を抑えながら、ちらっとまいなの様子を伺う。良かった、笑っている。

 しばらく熱く語る奏太の話をはいはいと聞き流していると、おもむろにまいなが口を開いた。

「お二人は、仲がよろしいんですね」

 自発的に言葉を発したのはこれが初めてて、俺は心の中でおっと声を上げた。しかし、俺より何倍もテンションが上がったらしい奏太に先を越される。

「そうなんですよー、分かります? こいつとは同時期に入団したんですけど、見ての通り無愛想でしょ、だからいっつも俺が話し相手になってやってて。あ、悪いやつじゃないんすよ、ただなんていうか、素直じゃないって言うかー」

 いつも以上に大袈裟に喋る奏太を俺は慌てて押さえ込んだ。なに言い出すんだこいつは!!

「あ、照れてるー。かずと君かわいー」

「うるせー黙れ奏太!」

「黙りませーん」

 そんなやり取りをしていると、クスクスという笑い声が聞こえてきた。まさか?

「あ、すみません。つい….…」

 恐縮したように体を縮こめて謝るまいなに、俺は驚きの表情しか返せなかった。まさか、こんな阿保が最初にまいなを笑顔にすることができるなんて……なんだか負けた気がする。

「まいなさん、笑顔も可愛いですね。緊張してるからかもしんないけど、さっきまでは強張った顔してたから心配だったんですよ。良かったー」

 こういう時、ぱっと気の利いたことが言える辺り、コミュニケーション能力高いよな。阿保だけど。

「お前さ、暇なの? 制服きてるから仕事中じゃないの」

 負けた気のせいか、俺は少し意地悪な口調になっていた。しかも、早くこの場から離れさせたいみたいなことを。

「えー、違うよ。今日は休日。でも暇だし訓練でもしようかと思ってな。たった今気が変わったけど」

 奏太が阿保で良かった。こいつは嫌な含みなんかなんにも気づいていない。今のは俺が一方的に悪かったし、追求されたらなんて返したらいいか。

「なあ、なにしてるか知らねーけど俺も混ぜてよ。まいなさんのこともっとよく知りたいし。あ、さんだとよそよそしいからまいなちゃんって呼んでいい?」

「私は構いませんよ」

「よっしゃー! んで、ふりだしに戻るけど、なにしてんの?」

 俺は気まずさを振り払うように軽く頭を振って、まだ興奮が収まっていない様子の奏太に現状を説明した。

「ちょうど良かった。奏太が手伝ってくれるなら多少楽になるよ。今、まいなの部屋で使える家具がないか探してたんだ」

「ふーん。こんなとこにあるやつで良いの? まぁ、たまに掘り出し物とかあるらしいけど。自分の家からは何も持ってきてないの?」

 簡潔に話しすぎた。こいつは噂に疎かったんだ。

「あの、私実は」

 まいなが慌てて自分の身の上を説明しようとしたのを俺は制した。こんなこと、本人から言わせる話じゃない。それにこれは俺のミスでもある。

「悪いな、奏太。説明が不足していた。落ち着いて聞いてくれよ」

 俺は昨夜の出来事からまいなの立場、そして俺が一切のことを任されていると、奏太に分かるよう丁寧に説明した。

「へー、それは驚いた。まいなちゃんも大変だったね。でももう安心しな! かずとはこう見えてしっかりしてるし、何かあれば是非俺のことも頼ってくれ。この中にいる限り、君は安全だ。怖い思いもしなくて良いんだよ」

 あーまただ。どうしてこいつはこういうセリフがぱっぱと思いつくのだろうか。

「あの、私のこと嫌いにならないんですか?」

「むしろ、どうして嫌いになるなんて思ったの」

「だって、私は皆さんのこと傷つけてたんですよ」

「けどそれは君の意志じゃない。だろ? まいなちゃん」

 まいなの瞳が軽く潤んだ。奏太の言葉が、固まった心に届いたのだろう。そして小さく勿論ですと呟いた。奏太はうんうんと何度も頷きながら小さくなったまいなの頭を優しく二回叩いた。そして倉庫へと向き直る。

「そういうことなら、なおさら頑張らなくっちゃな」

 意気揚々と腕まくりして倉庫に入って行く奏太を見て、なんだかごちゃごちゃ考えていた自分が阿保らしくなった。きっと奏太は何も考えちゃいない。本能のまま行動してるだけだ。けどそれが、結果的に良い方へと向かっている。今回ばかりは奏太を見習うよ。

「何してんだ、二人とも」

 奏太が振り向いて俺らを呼んだ。俺はまいなと視線を交わし、思わず吹き出す。きっとまいなも同じ気持ちだ。

「行くか」

「はい!」

 そしてやっと倉庫物色が始まった。

 最初はガラクタばかりかと思ったが、奥の方には案外良いものが良い状態で保管されていた。

 それを倉庫の外まで運び出し、入念にチェックする。二時間ほどでそれなりのものは手に入った。段々と欲が湧いてきて、他にもないだろうかとさらに探す。

「まいなちゃん、力持ちだね」

「筋トレしてますから、このくらいなんのそのですよ」

「奏太、そういうのって失礼なんじゃないのか」

 そんなたわいもない会話も、作業を進めるうちに自然と交わせるようになっていた。

 もういいだろう、という空気が流れ出したところで、三人とも自然と集まった。

「切り上げるか」

 俺がそう言うと、二人も頷く。

「じゃ、ちゃっちゃと運んじゃいますか。お前の部屋でいいの?」

「ああ、とりあえず部屋の前まで持って行こう」

 そうして重い物や大きい物は協力しつつ、黙々と運んでいく。最後に倉庫を施錠して、奏太とはそこで別れた。

「ちぇっ、もっと手伝いたかったなー」

「上官に呼ばれたんなら仕方ないだろ。暇な時にでも遊びに来い」

「そうするよ。じゃあなかずと、またねーまいなちゃん」

 こうして再び二人きりになった。

 俺は少し考えて、とりあえず中に運ぶかと提案する。俺も少しくらい気の利いたことが言えたら良いのだが、性分なのだから今更どうしようもない。

 更に黙々と作業を続けて、あることに気がついた。ベッドが足りない。

「どうしようか、せめて布団があるといいんだけどな」

 それなりに家具が並んで様になってきた部屋を眺め呟くと、まいなは恐縮して、左右に手を振り遠慮する。

「よく地べたでも寝てましたし、あったかい部屋があるだけで充分です。むしろこんなにも家具を貸していただいて、申し訳ないくらいです」

「いや、俺が納得できない。ちょっと交渉してみるよ」

 こう言われるとまいなも拒否しづらいのだろう。ありがとうございますと頷いて小さく微笑む。

 ちょうどその時、部屋の電話が鳴り響いた。出ると内線で、麗華さんからだった。

「悪い、まいな。呼ばれたからちょっと行ってくるわ」

 俺は手早く制服に着替えると、面倒だがブーツを履いて部屋を出る。

「いってらっしゃい」

 そう声をかけてくれるまいなに、俺もいってきますと答えた。

「もし誰か来ても開けなくていいから、この部屋にいてな。勿論くつろいでていいから」

 念のためそう付け加えて鍵をかけ、俺は騎士団長室へ向かった。



「失礼します」

 言いつつ重々しいドアを開けると、奥に広めのその部屋には口元に不敵な笑みを浮かべたあいつがいた。立派な机に肘をついて社長様気取りだ。傍には麗華さんが控えている。会うたびに思うが、麗華はなぜこんなにも威圧感を放っているんだろうか。

「そんな扉付近で突っ立ってないで、前まで来たまえ」

 あいつの声を聞くだけでイライラしてくるが、俺はそれを必死に抑えつつ部屋の真ん中あたりまで歩いた。

「それで、何の用だ」

「他でもない、まいな君のことだよ」

 部屋の空気がピシッと張り詰めたのが肌で分かる。いつもより人が少ないと思ったが、人払いされていたのか。

「お前が連れて来た少女は、確かに三守まいなで間違いないだろう。うちの有能な情報班に調べさせたら一発だった。彼女が確かなことしか言わなかったからかく乱もなかったしな」

 俺はまず一つほっとした。まいなは嘘をついていなかったし、元は一般人だという確証が取れたということだ。

 そして、プロフィールだと言われて渡された紙に目を通す。一晩でこれだけしっかりした個人情報が掴めるなんて、分かってはいるが恐ろしいな。

「写真なんかも見つかったようでな、確認するか?」

 俺は頷いて、麗華さんが差し出した数枚の紙を受け取った。そこには何枚かの写真がまとめて印刷されていたが、情報源や写真の日付なんかは載っていないようだ。たぶん、別に一覧のようなものも用意されているのだろう。機密事項、ということらしい。

 その点で腹を立てるようなことはない。こういった組織なら、たとえ幹部でも言えること言えないことがあるのは当たり前だ。本当に上位陣しか知らないようなことなんてザラにある。墓場まで持って行かなきゃならないこともな。

 それぞれの写真は、見た限り年代がバラバラだった。とりあえず探せた分全て載せたのだろう。しかし、どの写真も笑顔の人物で溢れていた。そして中心には必ず一人の女の子がいた。まだ幼い、最高で小学三年生くらいだろうか、いつも輪の中心にいる女の子。確実にさっきまで一緒にいたまいなの面影を残している。

「ありがとうございます」

 麗華さんに紙を返して一礼する。そしてすぐあいつに向き直った。

「どうだった」

「俺はまいなだと確信するよ」

「そうか、それなら良かった。まだ我々は彼女の顔をよく見ていないからな」

「他には」

「そう慌てるな。彼女は昨日、戸籍上では死んでる、と言っていたな。その点についても詳しいことが分かった。確かに三守まいなは小学四年生の夏休み中に行方不明になっている。その後、死亡は確認されていないが生きている可能性は低いとして処理されている。つまり、死体は見つかっていないという訳だ。その後のことは何もつかめていないし、行方をくらます前後の情報はなに一つ見つからなかった」

「何者かに消された?」

「流石私の弟だ」

 全く褒められてる気分にならない褒め言葉に怒りを感じつつも、今はそれどころではないと心を鎮め、視線で先を促した。

「まだ確信があるわけではないが、あり得なくもない話だろう。普通の女の子が唐突に居なくなって、しかもその周辺の事情がどこにも残されていないなんてな。ただの誘拐犯ならそこまで証拠を消せるとは思えないが、あるいは強大な力を持った組織的犯行なら?」

「寧ろそのくらいはしてくるだろうな」

「やはり皆見解は同じだな。とりあえず、今話せることは以上だ。また何か分かったら報告するよ」

「そりゃどうも。どうせいろいろと隠してるんだろうがな」

 こんなムカつく奴の部屋なんかさっさと出てってやる。

 精一杯憤りを顔に出しつつ、体を反転させようとしたところで、呼び止められた。

「だからそう慌てるな。早く彼女の元へ行きたい気持ちもわかるがな」

「何だよ」

 横目で睨んで返事をする。

「彼女のこれからの処遇についてだ」

 自分の体が一瞬硬直したのが分かった。仕方なく、あいつに向き直る。

「分かりやすいな」

 ここで反論したらまた笑われるだけだ。ぐっと堪えろ。

「彼女の実力は確かなものだ。それは、観察して来たお前なら無論分かっているよな」

「キャップ帽の幹部のことか」

「そうだ。そんな彼女が、こちらに一切の敵意を示さず助けを求めてきた。だから、私としてはそれに答えようと思ってな」

「はっきり言えよ、遠回しにしてないで」

「分かった分かった。つまりだな、彼女を我が青の騎士団に招き入れ用と思う。団員として」

 それは、俺にとっては願ってもない提案だった。しかし、すぐに頷けるわけではない。隣にいる麗華さんの気配が険しさを増した。

「お言葉ですが騎士団長」

「なんだね」

「私は今朝彼女に会いましたが、彼女が本当に危険視しているあの幹部のようには思えません」

「だったらなんだ。麗華君は彼女がデマを言っていると言うのかね」

「そうではありませんが、我々は見た目に騙されていると思います。彼女が姫である可能性は高いでしょう。しかし、格好が同じなだけで幹部とイコールにするにはまだ早すぎます」

 するとあいつは、鼻で笑ったかと思いえば、次の瞬間、顔をあげてたから笑った。そして、会話中見向きもしなかった麗華さんの方を見て、目を覗き込み、言った。

「君は彼女の何を見ていたんだい」

 すっと言い放たれたその言葉は、重い重い鉛玉となって麗華さんを撃ち抜く。麗華さんはぐっと押し黙り、おとなしく身を引いた。しかし、その瞳にはまだ納得できないという思いがこもっていた。

 麗華さんだけではない、考え方は違うが、俺も麗華さんと似たようなことを思っていた。本当にまいなが、あの恐ろしい幹部なのだろうか。

 だがあいつだけは、同一人物だと確信を持っているようだ。

「かずともまだ観察が足りないようだ」

 どうやら俺の考えも読まれていたらしい。唇をかみしめた。悔しいが、俺も麗華さんと同じ弾丸に撃ち抜かれた身だ。まだ目を見られていないだけダメージは少なかったが、これだけ距離があるのに、空気だけで読まれていたというのが更に悔しい。

「私は昨夜面会しただけだが、よーく見ていたぞ。彼女の背丈、筋肉のつき方、顔つき、肩幅……どれをとっても、報告されている幹部の情報と酷似しているじゃないか。寧ろ私は、過去一般人だったという方を疑ったな」

 鳥肌が立った。背筋がぞっとする。きっと麗華さんも同じ気持ちに違いない。本当に恐ろしいのは、今目の前にこいつなんだと。

 出会ったばかりの少女を、確実に自分の脅威であるか否か判断し、もしそうなら容赦なく仕留めにいく残酷さ、残忍さを持ち合わせ、さらに表には出さないよう平静すら装って……利用できるなら最大限利用して。

 お前は今、一体何を考えているんだ?

「麗華君は一瞬しか彼女のことを見ていないから判断が甘くなったのも分かる。かずとの場合追われているところからずっと一緒にいたのだから情が移ったのも分かる。まあ二人とも気づけなかったことは仕方ない。これからは、冷静に気配だけではなく見た目で得られる情報にも注意したまえ」

 そんなこと言われたって、お前みたいに考えられるやつ他にはいねぇよ。

「まだ不安が残るなら、今度実際に手合わせ願えばいいだけの話だ。それに、入団はまだ決まったわけではない。私は彼女の意思を尊重しようと思う。彼女が是非と言うのであれば、私は決して拒まないと、まいな君に伝えてくれ。頼んだぞ、かずと」

 俺は一泊あけて頷いた。反応が遅れてしまった。

「……あぁ、分かった。失礼しました」

 礼も程々に、俺は騎士団長室を後にした。



 部屋に帰ると、まいながお湯を沸かして待っていた。

「お帰りなさい。すみません、勝手にお台所を借りてしまって」

 なんだかほっと癒される。しかし、さっき奴に言われたことが気になって、つい観察じみた目で見てしまう。

 その時、まいなが不意にくすっと笑った。

「どうかしたか」

「あ、いえ。失礼を承知で伺いますが、何か言われましたか? お兄様に」

 ドキッとした。まさかまいなに言い当てられるなんて。

「ごめんなさい、どうか驚かないで。私、昔から観察力が優れているって自分でも気づいていたんです。普段生活する時は見過ぎないよう気をつけていたんですけど、ある時を境に、逆に求められるようになってしまって。私は嫌だったんです、人が隠している部分を見つけようとしているみたいで。それでも、やれと言われたらやるしかなくて、そのせいで更に見えるようになってしまって」

 目を伏せたまいなは、やはり俺には普通の少女にしか見えなかった。けど、俺はそれで良い気がする。見えて辛い思いをする人が目の前にいるのに、それを求めることなんて、俺にはできない。

「わっ!」

 やかんがキーという甲高い音を出して暴れ出した。まだ使い勝手がよく分かっていないまいなはあたふたしていて、慌てて俺が火を止めに走った。

「ふー、危ない。まいなが火傷しなくて良かったよ」

「あの、ありがとうございます」

「コーヒーいれるけど、まいなは何か飲む?」

「い、いいんですか、私もご一緒して」

「勿論、一人じゃ寂しいからね」

 俺がそう言って笑うと、まいなは瞳を輝かせた。

「私、コーヒーって飲んだことないんです。お父さんが大好きだったんですけど、飲ませてもらえなくて。だから、その、飲んでみたいです、コーヒー」

 遠慮がちに頬を赤らめながらそう主張したまいなは、やはり可愛らしい少女だ。

「了解。じゃあリビングで座って待ってて、すぐ持ってくよ」

「私、運びます!」

「いいって、いいって」

 まいなを座らせて、キッチンで俺がコーヒーを淹れると、まいなは小さく懐かしい香りと呟いた。それはきっと心の声が漏れ出したものだろう。観察力はなくても、それくらいなら感じることができる。ふっと笑みを浮かべつつ何も言わずに心で返事をした。良かったな。

「はい、コーヒー。熱いから気をつけて。苦かったら牛乳とか砂糖とかあるから言って」

「はい、ありがとうございます」

 まいなはちゃぶ台に置かれたコーヒーをまじまじと眺めてそっと口に運んだ。喉が動く。カップを口から外す。

 どう、なんて聞かなくても分かる。どうやらヒットしたようだ。俺も向かいに座ってコーヒーを飲んだ。静かな時、でも、温かい。

 先ほどの話をするのはコーヒーを飲み終わってからにしよう、と怒りや不安や恐怖でごちゃごちゃになった心を落ち着けた。



△▽△▽△▽△



 生まれて初めて飲むコーヒーは、苦くて温かかった。視線の先で嬉しそうにコーヒーを飲むかずと君はもう部屋に戻ってきた時の硬い雰囲気はなくなっている。良かった、安心できたみたいだ。きっと、昨夜会ったあの背の高い男の人、つまりはかずと君のお兄様に会って色々聞いたのだろう。

 あの人は、私と同じように鋭い観察眼を有している。それは、一目みた瞬間から気づいていた。ああ、この人は全て分かってしまうのだろうな、とあの時感じた。元々何も隠すつもりはなかった。けど、みんな何処と無く私のことを疑っているようだったから、きっとあの人に間違いないと言われたら、私のこと警戒するのだろうな。

 そう思っていた矢先の出来事だったから、私は何も驚かなかった。帰ってきて、かずと君の目が変わった時、ああやっぱりとしか思わなかった。けれど、変わったことに気づいてしまう自分が憎かった。あの人の目が鋭いだけならなにも変わらないのに、私の目も鋭いから、僅かな変化に気づいてしまう。だから、正直に自分のことを話す道を選んだ。どうしようもないものは仕方ない。気づいてしまうことを隠して何か思われるより、分かってもらう方が断然いい。私は自分が分かられていることも、相手を分かってしまうこともひっくるめて〝分かって〟いるのだ。

 かずと君がそこまで理解したかは怪しいけれど、それでも私は感謝しなければならない。こんな話をした私を、恐るどころか受け入れてくれたのだ。私は彼の優しい瞳に、つい癒しを求めてしまう。そんなこと許される立場ではないのに。

 彼は自分自身を人好きしない性格と言ったが、それは違うと確信した。彼は優しすぎるから、あえて人に近づかないのだろう。昼間の奏太君とのやり取りを考えてもそうとしか思えない。そしてお兄様もそれに気づいている。だったらどうして私をかずと君に預けたのだろうか。

 私はもしかしてという可能性を、まさかなとかき消した。

「ごちそうさまでした」

 私がコーヒーを飲み終わると、かずと君は神妙な面持ちで口を開いた。

「あのさ、まいな。いきなりで悪いんだけど」

「何でしょうか」

 かずと君は喜びと不安とを掛け合わせたような声音だ。多分、お兄様に聞いてきた話のことだろう。

 何を聞かれても正直に答えよう、と心を決めたその時、複雑な表情のままかずと君が切り出した。

「まいな、青の騎士団に、入団する気はないか?」

「え?」

 全く予想していなかった展開に、思わず変な声が出てしまった。さっきかき消した可能性の塊が再び浮かんできて、いやだからそれはないと慌てて何処かへ追いやる。が、塊の一部が頭に引っかかって、意識はしないものの離れようとはしなかった。

 やはり、あの人の考えていることはわいくら優れた観察眼があろうとも全く掴めない。

「勿論無理にとは言わないよ。けど、俺らと一緒にいる方がまいなも安全だし、もし嫌じゃなかったら……どうかな」

 この提案自体はどん底にいた私にとって、願ってもない素敵なものだった。たとえその裏に何が隠されていようとも、これまでの生活より酷いものはないと確信できる。早く、返事がしたい。

 私は思わず身を乗り出して早口で答えた。

「是非、入団させてください。私、どんなことでもやります。だから、どうかここにいさせてください。もうあそこには戻りたくない」

 勢いで言い切ってからはっとする。感極まって、つい余計なことまで口走ってしまった。それは紛れもなく本心なのだが……。

「良かった。まいながそう言ってくれて嬉しいよ、改めてよろしくな」

 どうやら危惧する必要はなかったらしい。かずと君は、乗り出した私の頭をぎこちない手つきでそっと撫でてくれた。人付き合いが苦手な、彼なりの努力なのだろう。

 そんな温かさに触れていると、また泣きたくなってしまう。

「あり、がとう……ございます」

 つい声が湿ってしまった。かずと君は口元を綻ばせる。

「いいって。それより、これからは仲間になるんだし、それに俺ら同い年みたいだからさ、お互いタメ語で話そう。な」

 ふっと緩んだ空気につられて、私の緊張もほどけていく。

 頬を熱いものがつったった。さらに追いかけるようにして右からも左からも雫が流れ落ちる。

 これで泣き顔を見られるのは三回目になる。

 まだ出会って二日にもならないのに、恥ずかしいな。泣き虫って思われないかな。私、普段は強気でみんなのお姉さんキャラなんだよ。

 そんなことを心の中で言ってみて、違うな、それは幸せだった頃の話だと訂正する。

「何者からも俺が守ってやるよ」

 当たり前のように私を抱き締めてくれたかずと君は、昔懐かしい兄を思わせつつ、また別の感情も私に与えた。





 まいなを守る。それは、‘赤’の奴らからだけではない。あいつ、俺の兄貴も、気をつけなければならない。青の騎士団の中にも、まいなを傷つける奴は多いだろう。分かってしまうまいなには、余計辛いかもしれない。こんなに繊細な心を持っているのに、今まで散々傷つけられてきてもうボロボロなのに、さらに追い打ちをかけなることなんて俺は許さない。まいなの身体も、心も、俺が守るんだ。いつも気を張って、平気そうに振舞ってはいるけれど、辛くない訳がないんだ。見る目がなくても、分かることは分かる。だからこうやって、涙することがあるんだろう?

 大丈夫、俺がそばにいる。絶対に君を守る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ