1話
「…んぅ……」恭弥はゆっくりと目を開けた。
恭弥の目に映ったのは見たことのない草や木々だった。
恭弥には何が起こったのか、分からなかった。
「ここは……何処だろう…」
恭弥は嵐がいないことに気付き、辺りを見渡した。
しかし、あるのは見たことない木や草だけ。恭弥は嵐を見つけるため、歩き始めた。
「嵐兄ちゃーん…!嵐兄ちゃーん…!」いくら叫んでも何の反応もなかった。
恭弥はとても不安になった。
「ガサガサ…ガサガサ……」
「!!」後ろの背の高い草を掻き分ける音がした。
「…嵐…兄ちゃん?」響也は恐る恐る後ろを振り返る。
だが、出てきたのは嵐ではなく、人間でもなかった…。そこにいたのは、牙が長く体が赤く虎のような姿を生き物だった。それに虎よりも一回りも二回りも大きかった。
「ガルルゥ……ガルルゥ~」
赤い虎はこちらを今にも、襲おう身構えていた。
「………うぅ…う……」
恭弥は動かなかった。
正確には動かなかないのではなく、足が竦んで動くにも動けなかったのである。
それを見た赤い虎は突然、飛び掛かった。響也はその勢いで尻餅を着いてしまった。響也は「兄ちゃん!」と目を瞑りながら心の中で叫んだ。
・・・・・・・・・・・。
あれ?と思いながら目を開くと、目の前に大きく開いている虎の口が見えた。
「わっ!」
響也は後ろに飛び退いて木に頭をぶつけた。
「痛い……。あれ?僕生きてるの?」
そう考えていると赤い虎は腹の方から血を吹き出しながら、ドスンと倒れた。
「恭弥!大丈夫か?」
急いで駆け寄って来る嵐が見えた。
「おい!大丈夫か?」
嵐は恭弥の顔を覗いた。
「うん…大丈夫」
戸惑いながら、頷いた。
「良かった」嵐は胸を撫で下ろした。
「嵐兄ちゃん、あれは何?」
「あれはレッドタイガーと言う魔物だな」
「ま、魔物?」
恭弥はびっくりして、聞き返した。
「あぁ、何となく分かっていると思うがここは俺たちがいた世界ではない。
いわゆる…異世界と言う場所だな」
「異世界?」
「いや、信じられないよな…」
「信じるよ!」
その言葉に嵐は驚いた。
「そ、そうか」
嵐は安堵した表情をした。
それから、嵐は恭弥にこの異世界のことについて教えた。この世界には沢山の種族が住んでいることや、魔法が存在していることなど。いろいろなことを教えた。
「恭弥、この世界には沢山の魔物や危険がある。だから、自分の身は自分で守らなければならない。だから、お前に身を守る方法を教えたいと思うのだが?厳しく教えるけどな。お前はどうする?」
「僕は嵐兄ちゃんのように強くなれるなら教えて下さい!」
恭弥は強く頭を下げた。
「分かった。だが、俺をちょっとばかり厳しぞ」
恭弥は頷いた。
「当分の間は、この辺りで暮らすことになるが、いいか?」
「はい、嵐兄ちゃんがいるから大丈夫です」
「まぁ、危なくなったらな。まずは、基本的な知識を教える」
「まずは、魔物についてだ。魔物には魔獣と聖獣に分けられている。」
「魔物の中で大半は魔獣だ。魔獣は人々に危害を加えてくる。聖獣はこちらからちょっかいを出さなければ、敵対することは無い。例えば、このラウも一応聖獣だ」
「えっ、本当に?」
嵐はとても驚いた。犬だと思っていたのが魔物だとわかったのだから。
「あぁ、本当だ。神竜と言って、SSSランクの上のXに入るな」
「Xランクって何?」
「ん~そうだな、例えば、さっきのレッドタイガーがCランクぐらいだな」
「ラウって、そんなに強いの…」
「ガウガウ」
ラウがどうだと言う顔をしている気がした。
「それから………
~数十時間後~
「はぁ~、やっと終わりました。」
恭弥は顔が若干、青くなりながら、仰向けになっていた。
「一通りは教えたと思うから、明日からは魔法などの練習だな」
「分かりました~」
恭弥はこれが毎日続くかと思うと、苦笑いした。
「では、食事にするか」
食事はさっきのレッドタイガーの肉や木の実を使った、料理だった。嵐兄ちゃんの料理はとても美味しかった。
これから何があるか、ワクワクしている気持ちと不安な気持ちもあるが、嵐兄ちゃんとなら大丈夫な気がする。
きっと大丈夫だと、思いながら料理を味わった。
次の日から魔法や獲物の捉え方などを教えた。恭弥は飲み込みがよく教えがいがあった。数ヶ月経ったくらいから、恭弥はCランクぐらいなら余裕で狩れるようになった。
~ 数ヶ月後~
「さって、そろそろ街に行こうか」
「はい!」
「いろいろな物を見れるぞ」
嵐たちは、近くの街まで歩き出した。
期待を胸に馳せて。
「俺がいた時から、どのくらい経ったのだろうか」
嵐の声は誰にも気づかなかった。
~魔物~
[レッドタイガー]
・体長5メートル程で体は赤く、虎に似ている。
・動きが俊敏で群で行動されると非常に危険。
・主に大きな牙や爪で攻撃する。
・Cランク。群れの場合はBランク以上。