プロローグ
青年は一人、大きな生簀の中にいる魚を見ていた。
そこには鯛や鯵などの魚が優雅に泳いでいた。
「嵐兄ちゃーん!」
可愛らしい少年がパタパタとこちらに向かって、走って来ていた。
「何だ?響也」小さな白い犬をを肩に乗せている青年が振り返る。
この青年、嵐と少年、恭弥はどうやら兄弟らしい。
「昨日発売された、最新巻の異世界物語、とっても面白かったよ」
「もう、読んだのか?」
その問に対して、恭弥は頷いた。
異世界物語とはとある作者が書いている本である。かなり売れているらしい…?
「そうか、そうか」と嵐は頷いた。
「じゃあ、いつも通り特訓をしましょう」
響也は唐突に出口の方に走りだす。
「おい。走るなよ」
嵐は恭弥に注意を促す。
「嵐お兄ちゃんに追いつきたいから~」
だが、恭弥はその注意を聞かなかった。
「分かった、分かった」
嵐も「やれやれ」と言った感じに走り出した。
暫くして、目的地に着いた嵐たちはストレッチを念入りにしていた。
その場所はある森の中で街が一望出来る、拓けた場所だった。
嵐たちは殆ど毎日、特訓のために来ていた。
特訓と言ってもただの組手だ。
嵐は肩に居座っていたラウを地面におろした。
「それじゃあ始めるか」
「はい!」
組手は始まった。まずは恭弥が拳を嵐に向けて放つが、嵐は避けながらその腕を掴み、地面に軽く叩きつけた。
「はぁ~。やっぱり強いです」
恭弥は叩きつけられた後、言った。
「今のは良かったと思うぞ」
「そうですか?」
恭弥は照れながら仰向けになっていた。
「もう一度お願いします」恭弥が起き上がる。
それから、陽が暮れるまで組手をやっていた。
「はぁはぁ……。疲れましたね」
恭弥は倒れこんでいる。
「そうだな」と言いながら、息を乱していない嵐を見て恭弥は「流石です」と呟いた。
恭弥が息を整えたのを確認して立ち上がった。
「それじゃあ、ぼちぼち帰ろうか?」
嵐が尋ねる。ラウが嵐の肩に飛び乗る。
「はい、帰りましょう」
嵐達が立って、我家へと帰ろうと横へ並ぶと、その瞬間嵐達の足下が突然光り始めた。
嵐達は驚いた。
そして、そのまま光に飲み込まれた。
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