表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

一言で仕様が変わる世界シリーズ

合言葉は「ヨクヤク」

作者: 山田りく
掲載日:2026/06/16

「合言葉は?」


「ヨクヤク」


「いいぞ、入れ」


街のメイン通りから少し路地に入り、入り組んだ道を抜け、看板のない店で僕は答えた。


「で?何が欲しいんだ?」


店員はぶっきら棒に質問を投げかけると、僕を睨むように解答を待つ。


「えっと、あの、その、えー」


「欲しいものがあってここに来たんだろ?遠慮するなよ」


少し乾いた口内を湿らすように、唾を飲み込みながら僕は意を決し応える


「僕、幸せになりたいんです」


「なるほど、それで?」


「だから、迷わない薬があるって聞いて…それが欲しいです!」


「まあ、そうだろうな」


店員は、頷くと店の奥に引っ込こんだ。


「えっと、どうすれば?」


暫く待つと店員は戻って来ると同時にカウンターの上に琥珀色をした小瓶を置いた。


「寝る前に飲むといい。君の希望通りになるだろう」


「本当ですか?本当に今の悩みや不安が消えますか?」


「寝る前に飲むと良い」


店員は、同じ事を繰り返すだけだ


青年はそれを受け取ると再度聞く

「これで、本当に僕の焦りや不安は消えるんですか? 最近、何をしても空回りばかりで、仕事も失敗ばかり、恋人は最近冷たくされる、早く結果を出さなきゃと心が壊れそうなんです」


薬剤師は優しく微笑んだ。

「ああ。だがね、これはただの薬じゃない。この合言葉の本当の意味を知ることで、効き目が完成する」


「本当の意味?」


「そうだ。君は『ヨクヤク』を『良い薬(良薬)』だと思ってここに来ただろう?」


青年は頷いた。


「実はね、それは『欲を約する』のヨクヤクなんだ。あれもこれもと求めすぎる心を、少しだけ引き算しなさいという意味さ。人間、一度に抱えられるものはそう多くない。まずは欲張るのをやめて、今あるものを大切にすれば、心は自然と軽くなる」


青年は手の中の小瓶を見つめた。

焦るあまり、自分にないものばかりを追い求めていたことに気づかされる。


「……良いヨクヤクだと思ったら、自分を戒める言葉だったんですね」


「いや、どちらも正解さ」

薬剤師はウインクをした。

「心を整える言葉こそが、人生で一番の『良薬ヨクヤク』だからね」


青年は深く一礼し、軽くなった足取りで店を後にした。鞄に仕舞った小瓶は、もう飲む必要すらないほど、彼の心を穏やかに満たしていた。


青年が去ったあと、店員はため息をつきながら

「ただの水でも売り方しだいでなんとでもなるもんだ」

「でも、ただの水じゃないのかもしれないね」

そう呟いた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ