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思ってたより心の距離感は違ってたみたい

作者: 兵衛門
掲載日:2025/12/31

最近文章書く練習をしていて、思いついた小ネタを投稿する事にしました。

 ある日の休み時間、クラスメイトの男子から綺麗に折りたたんだメモ用紙を渡された。

 別に口頭で言えばいいのに、と思ったけど彼がささっといなくなってしまった。


 (なんか表立って言えないこと?)


 あまり人の目に触れないようにそっと開く。

 ……私宛てのラブレターだった。

 

 「?!」

 

 ここ、こ、こんなの人に見られたらヤバい。絶対からかわれる!

 一瞬で顔から火を噴きそうなほど赤くなったのを自覚して、人に顔を見られないように机に突っ伏して小さくなることにした。

 思わずぎゅっとメモ用紙を握り潰して(あっ、しまった)と思ったけど、なんなの? なんでメモ用紙なの?!

 え? 普通こういうのってもっとちゃんとした紙に書くもんなんじゃないの?!

 ……ワンチャン嘘告とか?

 あるいは人違いか勘違いなのでは?

 

 私の席は教室のド真ん中なので、前後左右に人がいる。

 こんな厄ネタ人の多い教室で渡すなよ!!

 一応こっそりとくしゃくしゃになったメモ用紙を確認する。

 あれーやっぱり私の名前が書いてあるなー…。

 ???

 心象風景は宇宙猫。

 そもそもお前十分十五分程度の休み時間にこんなもん渡しておきながら、席隣じゃねーか!!!


 授業までに彼は帰ってきたが、まともにそっちを向くことが出来ない。授業なんか全然頭に入ってこない。

 ちらっと彼を横目に見るとフツーに授業受けて先生の話を聞いてた。……いやこっち見てないのかよ。フィクションだったらここで目が合うでしょーが。

 視線を外して改めて考える。

 私は腐女子でヲタクでゲーム好きで瓶底眼鏡で成績は普通、運動は苦手。化粧っ気もないし人見知りだし、髪も美容院に行くのが怖くて自分で適当に切ってるような女だ。まだギリ太ってないけどちょっとしたふよ肉は、まあ、ある。二の腕とかお腹とか。

 対して隣の彼は、身長も高めで痩せ過ぎな気はするけどすらっとして見えるし、私みたいな女にも普通に優しく接してくれて、結構モテるタイプなのに。個人的には顔も好きだ。ちょっと昔のドラマによく似た人が出ていて、そのドラマでの呼び名がそのままあだ名(ゆーたちゃん、と呼ばれていた)になっている。

 話してても実際楽しいんだけど、彼と話してるといつも他の人が混ざって来てしまって、私はフェードアウトしてばっかりだ。

 だって声が大きい人は怖いんだもんよ。ぐいぐい行く女子もノンデリ大声男子もみんな怖い。

 ……フェードアウトっていうか、弾き出されてないか私。

 いや、弾き出されて正解だ。彼らは私じゃなくて隣の彼、関谷(せきや) (りょう)くんと話したいだけで、私も彼らとは距離を置きたいんだから。


 ぐるぐる考えている間に今日の授業は全て終わり、帰宅する人、部活や委員会活動に行く人が教室から次々と出ていく流れに乗って、私は図書室に向かった。

 私は帰宅部だけど、図書室は静かで落ち着くから。

 途中でトイレに寄って、くしゃくしゃになったラブレターを検める。

 やっぱり「天野はる様へ」と私の名前が書いてあり、ド直球に「好きです。告白したいので放課後に第二校舎の食堂前で待ってます。」と書かれている。

 彼の字は女の私から見ても可愛らしい丸文字で、なんだっけ変体少女文字って言うんだっけコレ。

 私の字の方がへたくそに見えて、コンプレックスを刺激してくる。

 一番考えられる嘘告だけれど、ゆーたちゃんは性格的にそういう事をしない。と思う。

 

 図書室と同じ第二校舎の食堂は定時制の生徒にだけ解放されていて、日中は人が全然立ち寄らない場所だった。

 廊下の灯りは点いているけど、陽も射さず薄暗い印象だ。死角が多い場所だから直接そこに行かない限り人がいるかもよく分からない。

 四階の図書室に行くついでの体を装って、一階の食堂前を覗き込むと、彼は一人でスマホを見ながら待っていた。

 

 (ホントにいる……)


 どうしよう、信じられない。

 そりゃ信じたいけど、私だよ?!

 どこにそういう需要があるのか分からない。

 クラスの女子を思い浮かべるだけでも私より可愛い娘や綺麗な娘、スタイルの良い娘だっていっぱいいるじゃん。

 ゆーたちゃんがいたってだけで私は大混乱に陥り、フリーズしている間に見つかってしまった。

 ふっと顔を上げた瞬間、目が合ってしまったのだ。もう逃げられぬ。

 彼はやや緊張した面持ちで、それでも私を見て嬉しそうにぱぁっと笑みを浮かべてくれた。

 私は自分でもわかるほど挙動不審になりながらも、ゆっくりとゆーたちゃんの前に歩を進める。

 ここにきて急に物凄い喉の渇きを認識した。

 彼は急いでスマホを学ランの内ポケットにしまい、お互いの手が届きそうな距離に私が止まってから口を開いた。


 「来てくれてありがとう天野さん。俺、天野さんの事が好きなんだ。俺と付き合ってくれませんか」


 ……嬉しい気持ちと同時に猜疑心が首をもたげる。

 これが嘘だったら、多分私は立ち直れないくらいのダメージを負う自信がある。

 だから心の防御手段として疑ってしまうのだ。

 私は今ゆーたちゃんと目を合わせるのが、こわい。

 だから俯いて目を伏せたまま、「どうして…?」と答えるのが精いっぱいだった。

 ゆーたちゃんは私に酷い事はしない。傷つけるようなことは絶対しない、わかってる。いつだって優しくて誠実で、ちょっと不器用な彼は女の子を傷つけるようなことはしない。

 だからこそ。なんで告白の対象が私なのかが、わからない。

 仲は確かに悪くなかった。でも恋愛感情に発展するとは思えない。私は恋しちゃったけど!


 「最初は」


 彼はゆっくりと言葉を選びながら言う。


 「席が近い天野さんと仲良くしたいな、って思ったんだ。でも話してる内に天野さんの良いところがいっぱい分かって。色んな事を知ってるし、絵も上手いし、ちょっと前に漫画書いて読ませてくれたの、すごく好きで。打ち解けるまですごく控えめな人だけど、時々すごく口悪くなったりするギャップも魅力的で。天野さんって内に秘めた底知れない可愛さがあるなって思って見てたら、もう好きで好きでたまんなくなってた」


 け、結構言語化するわねゆーたちゃん……。


 「でも、私じゃなくても可愛い子はいっぱいいるよ? 誰とは言えないけど、ゆーたちゃん好きって娘は私が知ってるだけでも何人もいるんだよ?」


 「俺が欲しいの天野さんだから」


 くっ、ストレートな言葉が胸に刺さる。

 こんなん自己肯定感上がっちゃうじゃん。

 でも私なんかがすぐハイじゃあよろしくお願いしますっていうのもなんか、チョロそうに見えやしないか。

 チョロかろうがさっさと付き合っちゃえよという思いと疑り深いダークサイドの私がせめぎ合う。


 「ま、待って。ちょっと信じらんなくて……落ち着くまで待って」


 ヤバいもう落ちそう。顔が良いんだよ畜生!


 「じゃあ色よい返事が貰えるまで天野さんの良いところを延々と羅列するねw」


 「??!!?!」


 「俺天野さんの外見、実はかなり好みなんだよね。瓶底眼鏡にあんまり手入れしてないのにやたら綺麗な髪とか良い匂いするトコとか、肌が綺麗でやわもち感があるトコとか、 「わああああああ! わああああああ!!」 以前化粧もスキンケアもしてないとか言ってたけど、なんもしてないのにその肌は俺にとっては驚異的な萌えポイントだし 「ちょっちょちょ、待って待って待って!!」 雑な一本結びっていうけどうなじなんて最高にエロスを感じるん 「だだだ黙れぇぇぇぇ!!!」」


 ゆーたちゃんは意地の悪い事に腹を抱えて笑いながら、「どう? 俺と付き合ってくれる気になった?」などと意味の分からない供述を。


 「これは新手の脅迫なの?」


 「うん、付き合ってくれるまで、手段は選ばない所存」


 あっけらかんと言うなそんな事。


 「こいつ……! あーも―分かった付き合います! 後悔しても絶対別れたりしないからね?」


 「ありがとう、これからよろしくね、はるさん♡」


 満面の笑みで急に下の名前で呼びやがったこいつ!

 それだけでなんとなく、今までとは違う心の距離を感じてしまい、私の頬がまた熱くなる。

 わーん、私の彼氏がなんかすごい女たらしな真似しやがるよぉー><

最後まで読んで頂きありがとうございます。

楽しんで貰えたら良かったと思います。

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