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第47話 グラーノフ奪還戦 1日目 奇策

 俺は3万の精鋭を引き連れ、戦乱の中心・グラーノフに到達した。俺たちを迎えうつべく、黒鎧を身に纏ったカール帝国の大軍が、眼前に広がる。


 カール帝国の総大将は、やはり、この男、マルクス・レギオン。


 帝国は、総勢5万の兵隊を主攻部隊・維持部隊の二つに分けて、この戦争に挑んでいた。そのうち、主攻を担うのが、他ならぬマルクス率いる部隊である。


 アルビオン軍を迎撃するため、部隊は、グラーノフ市外に広がるモルグ平野に展開していた。その布陣は、伝統的かつ隙のない三列横隊であった。


 中央には、最も強固で防衛力を誇る重層歩兵軍。それを率いるのは、陸軍屈指の老兵・ホーネッカー中将。その老練な皺は、長く戦場で生き抜いてきた歴史そのものであった。


 両翼には、機動力の優れた騎兵隊を配備し、敵の攻撃力と自軍の防御を兼任させていた。この柔軟な部隊を任せれているのは、ガイウスに「戦争の天才」と認められた、若き軍人・シュニッケル中将。愛馬・ブリュンヒルデに跨り、凛々しい顔つきで、アルビオン王国に睨みを利かせていた。


 そして、前方には、長柄の武器と弓、そして、魔杖を持った異質な集団。魔法部隊。初手で敵の突進力を削ぐことが目的とされることから、厳しい戦況で常に最前線を張り続ける、過酷な部隊だ。この部隊を率いるのは、ルシウス・ドラキオン。魔法梯団将軍であり、ガイウスに次ぐ、軍部の実力者だ。エルフである彼は、その美しい髪を風に靡かせながら、ゆっくりと戦闘体制に入っていく。


「なるほど、兵力を劣るこちらをすり潰す気か」

「いかがいたしましょう。このまま正面から衝突すれば、損害は甚大になります」

「そうだな」


 俺は思案する。この状況を、ひっくり返す方法は、あれしかないだろう。


「ファタール中将、いいか」


 俺がその名を呼ぶと、不精ひげを生やし、ぼさぼさの髪を携えた男が、気だるげに現れた。その右腰には、軍規に反してウイスキーの小瓶がぶら下がっている。この男こそ、アルビオン王国歩兵団長にして、現アルビオン王国軍最強の男・ファタール。


「なんですかー、リアム殿下」

「3000人やる。先陣を任せた」


 俺の言葉に、ファタールは一瞬、その濁った目を向ける。何を言わんとしているか察したようだ。呆れた顔でため息を吐きながら、彼は困り眉で言う。


「これだから、王子様は。俺たちの苦労を知らず、無茶を言う」

「ならお前には、これ以上に良い策はあるのか」

「残念ながら、ないね。戦争ってのは、結局のところ、人数が多い方が勝つものだし。それに、この多勢に無勢な状況をひっくり返すには、多少の無茶も必要だろうよ」


 ファタールはふけだらけの髪を掻きむしりながら、観念したように言う。


「しゃあねぇな。俺たちが突っ込むのはいいが、ちゃんと策戦を成功させろよ。特に、騎兵隊のチャラ男。あいつ言うこときかねぇから。ちゃんと、連携するように伝えろよ」


 そう言うと、軍人らしくないその男は、着崩した軍服の襟を乱暴に正し、もとの布陣へと戻っていった。

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