42話 グラーノフ攻防戦①
「バルバロッサ戦線で、奇襲攻撃を受け、戦線が停滞しているとのこと」
「ほう、だが、あの都市に目立った守将はいないはずだが……」
優雅にワインを嗜みながら、カール帝国国王・ガイウスは報告を聞いていた。
カール帝国国王ガイウス率いる正規軍は、【東西の玄関口】という異名を持つ小都市トリトをわずか1日で制圧すると、破竹の勢いで進軍し、王都に迫っていた。
そして、その進撃の矛先は今、ある都市に向けられようとしていた。
グラーノフ。
牧畜都市で、堅固な要塞を持たない、田舎町。
ガイウスは、この都市も短時間で陥落すると試算していた。そのため、兵士を休ませることなく進軍させ、王都への攻勢までの時間をさらに短縮しようとしていたのだ。
だが、グラーノフに入った時点で、都市はすでにも抜けの殻であった。人っこ一人いない田舎町。ガイウスは一般兵に命じて、周囲を探索させる。
辺り一面、古びた建物しか建っていない。そんな中にポツンと佇んでいた、崩れかけた茅葺き屋根の納屋。
その納屋から、まばゆい閃光が放たれ……
ダダダダダン
突然の銃撃。
周囲の兵士は驚き、声を上げる。が、ガイウスは冷静だった。彼は即座に、発砲兵の潜む納屋に向けて、一斉に弾幕を浴びせた。
ダダン、ダダダダ、ダダダダダン
銃撃戦が止む。納屋の中に兵士が足を踏み入れると、そこにいたのは、血を流し倒れている主婦と十歳にも満たない幼子であった。ガイウスに、兵士たちがその報告を伝える。すると、彼はハッとした顔で、兵士に叫ぶ。
「まずい、これは陽動だ!!」
「今頃、気づいたって、遅えな」
上から見下ろすこの男。【真理の灯台】という革命組織で、元アルビオン王国陸軍将校だった男ヤコブ。そして、その横に無言で立つ巨体の男は、その弟であるゴーリキであった。
「この町一帯で、ゲリラ戦をしようってわけか」
「ご名答だ」
ただの主婦や子供が、容易に武器を所持できるはずもない。つまり、武器を調達したブローカーが、この町にいたということ。それが、こいつらということだろう。ガイウスは、そこに正規兵がいないということから、彼らが革命を企てる反動組織であると察した。彼は豪快に笑いながら、ヤコブに言う。
「アルビオン王国の反動組織はすべて、俺たちカール帝国側に付くと思っていたが、誤算だったか。市民にまで、武器を渡すなんて、面白いことするじゃねえか」
「まあな。とりあえず、死ね」
ヤコブは、黒い手榴弾を数発、帝国軍に投げ込む。その手榴弾が爆ぜると、帝国軍の密集した隊列に、血と土煙の渦を巻き起こした。
「野郎ども! あいつらを、もとの国に帰してやるぞ」




