第39話 軍議②
「バルバロッサは、俺に与えられた土地だ。軍部の介入を拒否する」
「どういうことだ、リアム?」
国王アルフレッドが、俺に言い放つ。その眼光は、暗闇の中に光る三日月のように、冷たく鋭いものであった。俺は、あっけらかんと答える。
「俺はそもそも、何もしたくない。ここまで忙しなく働いたんだぞ。これ以上、俺に何を求めるつもりだ?」
「バルバロッサに住む民は、どうするつもりだ!」
第二王子フィリップが叫ぶ。軍部が後ろ盾にいる彼にとって、俺の行動はとても許すことのできない行為なのだろう。勢いよく、机を叩き、俺を鬼のような形相で睨んだ。
「カール帝国に降伏するよう、各地の城将には命じてある。降伏したくないものは、王都まで逃げられるように、船を用意した」
「無駄に敵に土地を与えたのか!?」
「フィリップ兄さん、そう感情的にならない」
第三王子アーサーが、フィリップをなだめる。彼は優しげな表情を浮かべながら、俺に言う。
「軍部・宰相派の両派閥に顔が利き、宦官派が戦争に介入するのを抑え込めるストッパー役。今回の戦争を指揮するのに相応しいのは、リアム君しかいないんだよ」
「だが……」
少しばかり納得のできない様子で、フィリップがアーサーを見た。いやいや、そんなの初耳なんだけど。
フィリップ、もっと反論してくれ。
俺はそんな面倒ごと、やりたくない!!
しかし、そんな俺の考えをよそに、アーサーは朗らかに続ける。
「フィリップ、ここは感情論で語る場所じゃない。それに、いくらやる気のないリアム君でも、将軍の肩書きさえ与えてしまえば、やらざるを得ないと思うんだ、ねぇ父さん」
「あぁ、そうだな」
国王アルフレッドは、にやりと俺の方を見た。またこのパターンだ。面倒ごとを俺を押し付ける時の、憎たらしい顔をしている。
クソが……。
俺は田舎に引きこもって、スローライフを送りたいだけなんだよ。釣りの合間とかに政務する、そんくらい、ゆるい感覚で働きたいのに……。
国王アルフレッドが、威厳のある声で低く発する。
「第四王子リアム、貴殿を東征将軍に任ずる。東の雄・カール帝国を破り、我が王国に平和をもたらせ!!」
いやだーーーーー!!
なんで!?
今回は間違っても、こんなことにならないように、やる気のない王子ムーブできてたよね。
この状況で俺が言える言葉は、一つ。俺は下唇を噛みしめ、アルフレッドを見る。
「不肖リアム。国王の剣として、カール帝国を打ち破ってみせます!!」




