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第38話 軍議①

 ユスタキウスは、宦官という組織が壊滅させられることを悟り、動かなくなった。カール帝国が侵攻する前、宦官という組織は維持できなくだろう。フッと笑う。


 ユスタキウスは変身魔法を解き、もとの老体に戻った。憲兵隊が即座に駆け寄る。連行されていくその後ろ姿に、国王アルフレッドは声をかけた。



「ユスタキウスよ。貴殿がしたことは許せぬことだが、宦官という組織まで滅ぼすつもりはない」

「親父!?」


 俺が、父王アルフレッドに問う。彼は髭を撫でながら、薄い笑みを作る。その目線の先には、将軍ガレスがいた。


「たしかに、それ相応の罰は必要だろう。だが、偏りすぎるのも問題だ」


 なるほど。俺は、冷静さを欠いていたようだ。


 これから始まる戦争において、ユスタキウスを欠いた宦官派、ロデリックを欠いた宰相派、どちらかが欠けてしまえば、軍部に対して圧力をかけることができない、ということか。


 もし戦争に勝てたとしても、軍部が政治権力を握れば、軍国主義的な国家になるだろう。今のアルビオン王国の経済状況を考えても、戦争をし続ける余裕はない。それに、起こるかどうか分からない戦争特需を期待して、戦争を継続するようになれば、それは愚の骨頂でしかなくなる。


 静かに、されど厳格に軍人らしく佇むガレスが、国王の意思を悟りながら、声を張り上げる。


「私に野心などありません。が、王に忠誠を誓い、この戦争を我が国の勝利で終わらせなければなりません」

「ガレスの言うとおりだ。国王アルフレッドの名の下、軍議に移行する」


 軍部の要人たちが、国王の前にぞろぞろと立ち、資料を配布し始める。医務室に運ばれたロデリックや、憲兵隊に連行されたユスタキウスやジュリアス。中心人物を欠いた各派閥で、新しい勢力が蠢動しゅんどうし始めていた。


「バルバロッサにこんな大軍、送り込んで。ほんま、おおきにねー」


 【影の四公】財務官・レフトランド。宦官派の収賄の管理を一任されていた人物。ユキタキウスすら、わずかばかりの関与が認められた、収賄の罪。しかし、これに、彼が関与した形跡は一切見当たらなかった。黒い金策を操るのに長けた人物で、宦官の首魁しゅかいといっても過言ではないだろう。


「貴殿が、情報を売ったんじゃないのかい。ムッシュ・レフトランド」


 宰相派・官房長官ニョッキ。ロデリックの腹心であり、この状況において、ロデリックの正統後継者と呼べる人物であろう。鼻にちょび髭をたずさえ、紳士服を着たその男は、鋭い目でレフトランドを糾弾した。


 緊張が走る王宮内。


 そんなことなど何もなかったかのように、俺は静かに手を挙げた。


「なんだ、リアム?」


 国王アルフレッドが尋ねる。俺は、あっけらかんと言葉を続ける。


「バルバロッサは、俺に与えられた土地だ。軍部の介入を拒否する」

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