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第37話 宦官

 ユスタキウスが、国王アルフレッドの喉元に、長い爪を迫らせる。


「おい、ユスタキウス」


 俺の声で、ユスタキウスの足が止まった。


「リアム王子? 私にまだ用があるのかな」

「ユスタキウス。お前は、自分の目的のためになら、簡単に人を殺す。だが、それは【宦官】という組織を守るためだ。そうだろ?」


 ユスタキウスは、俺の方に顔を向けずに言う。


「それがどうした?」

「セルバは、最期に俺にこう告げた。俺とお前は似ている、と」


 ユスタキウスが俺の方に向き直る。俺は、言葉を続ける。


「この組織を守るためには、ロデリックら宰相派が邪魔になる。もしカール帝国がアルビオン王国を侵略しても、この国はカール帝国の属国として、王権を維持できる可能性は高い。そうなれば、アルビオン王国の王族を支える【宦官】という組織は存続できる」

「なるほど。リアム王子は【宦官】という組織自体を許さない、と言いたいわけですか」


 ユスタキウスは俺をじろりと見つめる。そして、俺に向かって、飛びかかってきた。瞬間、国王アルフレッドが王杖を振り下ろす。


 堕天の重撃(ラプラス=ショック)


 ズドン

 

 とてつもない重力が、身体を支配する。誰も立ち上がることができない。俺やユスタキウスは、地面にはいつくばったまま動けなくなった。


「リアム、申せ」


 俺は身動きのとれない身体で、胸ポケットから紙を取り出した。財務調査表。ナルニアから受け取ったその紙を、俺は国王アルフレッドによろよろと渡した。


「ここ1ヶ月の仮想通貨の利用履歴だ」

「【黄金の天秤】は、革命組織でしょう。なぜ、リアム王子、あなたがそれを持っているのですか?」

「偽書とでも言いたいのか? 交渉の結果、得たものだ。なんなら、契約書を見せてもいい」


 ユスタキウスは苦虫を噛み潰したような顔で、俺を見ていた。そして、国王アルフレッドはうっすらと笑みを浮かべ、ユスタキウスに言う。


「このお金の不自然な動きは何だ?」

「宦官が、政財界の要人に渡した賄賂でしょう」


 ザワザワと辺りが騒然となる。ユスタキウスは声を張り上げる。


「何を勘違いしている? それは、私一人が命令して、やったことだ。今、私が国王を殺害しようとしたように、全て、私一人が考えた謀略だ!!」

「昨夜の件もですか?」


 俺は聞く。身に覚えのないその言葉に、ユスタキウスは瞬時に反応できず、動揺を見せた。


「昨夜?」

「昨夜の件は、あなたは関与していなかった。つまり、ユスタキウス個人ではなく、宦官という組織の判断だったということだ」


 俺は、憲兵隊に捕縛されたジュリアスを、ユスタキウスの前に連れてきた。そして、ジュリアスの下に付き従い、【黒服隊】を構成している、王宮の執事たち。


「俺は、昨日自室で、暗殺されそうになった!! 憲兵隊も見ていた。証拠もあるぞ」

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