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第34話 内乱

 ロデリックが落ち着きながら、声を出す。


「内乱期、我が祖父エルダーは、ここにいるユスタキウスの祖父にあたる人物は、カラシニコフを味方につけるため、ある契約を持ちかけた。その内容は」

「や、やめろ!!」


 ユスタキウスが叫び声を上げる。今までに見たことのないような取り乱した顔になったユスタキウスは、銃弾を彼に向かって放った。


 ロデリックの胸に、銃弾が食い込む。が、ロデリックは倒れず、にやりと笑った。


「覚悟を決めた男が、銃ごときで死ぬと思うか」

「くっ……」


 周囲の動揺。ユスタキウスは、即座に、国王アルフレッド直属の軍隊・近衛騎士団に取り押さえられた。


 第一王子エドワードは、声にならない声を出している。無理もない。幼少の頃から、教育係として自身を育ててくれた男。そんな男が、今、目の前で自身の保身のためだけに、人を撃ったのだ。


「エ、エドワード様」


 すがりつくユスタキウス。それを冷たい目で見下ろし、エドワードは言った。


「なぜ、ロデリックを撃った!?」

「エドワード、さま?」

「国王として、常に人のために動け、と教えたのは、そなただろう。自身を慕い付いてきてくれた宦官たちをないがしろにしてまで、その位置にしがみつきたいのか!?」


 エドワードの目には、涙が浮かんでいた。ユスタキウスは憔悴しょうすいしきって動かなくなり、近衛騎士に取り押さえられた。


 胸に赤いシミを作ったりロデリックのもとに、ドラコが駆け寄る。


「この答弁、私が代わりに行います」

「ドラコ、よい」


 血を吐きながら、ロデリックは言う。ロデリックは、高く玉座を見ていた。


「この命を賭してでも、やらねばならぬことがあるからな」



 ざわめく王宮。


 そんな中、一部始終を静かに見ていた男が、王杖を打ち鳴らす。



 カン



「皆、ロデリックの答弁を聞くように」



 国王アルフレッドの声が、重く響く。静まりかえった室内で、ロデリックはかすれた声で話し始めた。


「我が祖父・エルダーはカラシニコフにこう持ちかけた。王室典範の一部権利をカラシニコフに譲り渡す、と。その権利の私物化の結果生まれたのが、宦官という組織だ」


 ザワザワザワザワ


 周囲が騒然とする。絶対王権。神から与えられた国王の権利。この権利を、一貴族に売り渡すことも、ましてやそれを買うことなど、とてもではないが、許される行為ではない。


「そして、カラシニコフと我が祖父エルダーの共謀により、第一王子を擁していた英雄ブルーダーは……」


 ロデリックがせきこむ。赤い血が付着した手で胸を押さえながらも、くぐもった声で言った。


「終戦協議と嘘をつかれ、毒殺さ」


 瞬間、血が噴水のように、噴き出す。


 バタッ


 ロデリックが倒れ、カーペットに赤い血が染み込んでいく。ドラコがロデリックのもとに、駆け寄る。


「お、親父!!」


 フ、フハハハハ、ハハハハ


 甲高い笑い声。


 ふと、笑い声の方向を見る。その音を発した男は、ユスタキウスであった。

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