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第28話 生還

 薄暗い部屋で、目を覚ます。ボロボロの木製のベッドに、チラチラと点滅するろうそく式のランプ。


 

 ここは、いったいどこだ!?


 

 俺は、バッと身を乗り出す。薄暗い部屋に、ぼんやりとした影が浮かび上がる。



「おやおや、目を覚ましましたか」


 目の前には、腰の曲がった、背の低い老人。鼻が長く、床にまでつく白い髭。目はしわでつぶれてしまい、モグラのようになっている。


「ご老人、あなたは誰ですか?」

「私はアイアント。【鉄の槌】という組織の、会長を務めているものですよ、リアム様」


 俺は、自分の名前を呼ばれ、身構える。


 革命組織である彼らが、俺を助けた理由は何だ? 俺を殺したことにしたいのであれば、首だけを持っていけばいい。なのに、わざわざ俺を助けてまで、したかったことは……。


「あなたを助けたのは、王族に恩を売るためです」


 俺の表情を読み取ったらしい。アイアントは、またゆったりとした口調で話し出した。


「私たち【鉄の槌】は、鉱山労働者の集まりです。太陽すら見ることのできない暗い洞穴どうけつで、長い間、働かされてきました。私たちの血肉から得た鉄は、貴族たちによって、他国に高値で売られ、その一方で、わしらの手元に残るのは、その日一日食べていけるかどうか、の給金だけじゃ……」

「噂には聞いていたが、まさか、そんなにひどいとは……」


 アイアントは、俺の目をまっすぐ見る。


「それを取り仕切っている多くのものは、宦官です。ユスタキウスです。あの者を排除しなくては、私たちに真の平和は訪れません」

「そうか……。なるほど、な」


 ユスタキウスと対立できる王族は、今のところ、俺くらいだろう。俺には後ろ盾がいない。だから、好きな時に好きなだけ、暴れることができるのだ。


「で、俺を助けた、ということは?」

「ユスタキウスを失脚に追い込んでほしい、ということです」


 アイアントのそばに、少年がかけ寄る。その坊主頭の少年は、俺の目の前に立つと叫んだ。


「せっかく、おいらが助けてやったんだ。絶対に、あのタヌキ親父を失脚させろよ」

「こらこら、ネロ。目上の人には、敬意をもって話しなさい」


 俺はネロの手を取る。まめだらけで、ひび割れの多いその手を握りしめ、俺は言う。


「あぁ、任せてくれ」


 感謝の言葉を述べると、俺はその暗い洞穴の一室から、ひっそりと出ていった。



◇◆◇◆



 ドン



 エリアスは、カインを力いっぱい殴る。カインはうつむいたまま、下を見ていた。俺を探すために幾度も兵士が派遣されたが、この3日間にわたって、死体すら発見されていない。王族の失踪事件として、世間でも話題になりつつある。


「なんで護衛のお前が死なずに、あいつが死んだんだよ!!」

「……、すまない」


 息を荒げたエリアスは、キッとカインを睨む。そして、ぽつりと、カインは涙を落とした。その涙は、深い悲しみを含んでいた。


「俺の策は、あいつがいないと、ダメなんだよ。あいつの意図をみとる能力が高いから、俺の提案した政策は、机上の空論じゃなくなるんだ」

「あぁ」

「だから、あいつがいないと、俺も死んだも同然なんだ……」



「なに、俺がいないと、そんなに困るの?」

「「リアム!?」」

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