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第20話 結婚報告

 目の前には、いかめしい顔つきの男たちがいた。


 正面には、老宰相ロデリック。短い短髪が逆立ち、頬杖をついている。ギロリと、俺の目を睨みつけながら言う。


「久方ぶりだな、リアム殿下」

「結婚の挨拶に参りました。ロデリック様」


 俺は頭を下げる。その右隣で、静かに佇む男。ロデリックの長男であり、俺の許嫁カサブランカの父・ドラコ。漆黒の髪を辮髪べんぱつのよう編み込み、三日月のような鋭い目をしている。政界では、ロデリックの腹心として、財務大臣を務めている。


 俺は結婚なんてしたくないのに……。


 そんなことを内心ぼやいていると、ロデリックが笑った。


「何の話だ、リアム殿下? 私が貴殿を呼び出したのは、その件とは関係ないぞ」


 俺がぽかんとする。カサブランカはわなわなと震えている。


「もう、おじいちゃん。話合わせてって、言ったじゃん」

「お前には、まだ結婚はさせん!!」

「お父さんは、黙ってて!!」


 カサブランカの甲高い声が、室内に響く。ドラコが、俺を恨めしそうに見ている。やめろ、俺を巻き込まないでくれ。


 そんなことを意にも介さず、ロデリックは本題に入る。


「結婚は、お前たちの好きなタイミングですればいい。が、今日の話は例の件についてだ」

「その件に関しては、月初めの御前会議でまとめて報告しますよ」


 俺は話をはぐらかす。が、ロデリックはそれを許さず、すぐに話を戻す。


「じゃあ、これは知ってるか? 貴殿が革命組織に密書を渡したということを、宦官派が御前会議で進言しようとしていることは」


 ロデリックは、蛇のような目で、じろりと見つめる。どうやら俺が何をしたのか、彼は断片的にだが、掴んでいるようだった。


 俺を失脚させる理由は、彼にはない。ならば、本当のことを話しても、問題はないはずだ。


「はい、知っていますよ。ただ、確たる証拠は掴まれていないと思いますが?」

「フッ、だといいがな」


 意味深な台詞をロデリックは吐き捨てる。それに俺は違和感を覚えるも、すぐに考えを戻した。せっかくの機会だ。このチャンス、利用させていただこう。


「ロデリック宰相、ドラコ財務大臣。それぞれに1つずつ、頼みたいことがあるのですか?」

「何だね?」


 俺は、ロデリックに、今回の策謀を伝える。少し考え込むような表情をして、ロデリックは答えた。


「ふむ、言い換えるならば、俺の引退と引き換えに、ユスタキウスの息の根を止める、ということか」

「どうでしょうか?」


「私の政治生命もこの歳だ、残りわずかであろう。そして、宿敵を葬れる機会など、そうそうやって来ないものだ」

「ですが……」


 ドラコが父ロデリックの身を案じ、止めようとする。が、ロデリックはそれを静止し、俺の方に向き直る。


「その策、俺が乗ってやろう」

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