第14話 捕縛
屋敷の中には、主だった【真理の灯台】のメンバーが座っていた。リーダーであるエレナを中心に、軍事を司るヤコブやゴーリキ、事務を担うゲコエルなどの幹部が揃っている。
「遅かったじゃねえか、リアムさんよぉ」
「兄ちゃんの言う通りだ」
ヤコブとゴーリキが口々に罵る。彼らを一瞥し、俺は何も言わず席に着いた。
「無視たぁ、どういう了見だあぁ!? ここでお前を殺して、何もかも無かったことにする方が、俺らにとっちゃあ楽なんだぜ」
ヤコブが机に足をたたきつけながら、悪態をつく。
ヤコブの言う通り、王族である俺を殺した方が、【真理の灯台】という組織の名声に箔を付けることができる。そして、この名声は【真理の灯台】の資金力に直結するのだ。
革命勢力の主な資金源は、国民である。国民は彼らに密かに資金提供を行うことで、この経済低迷の続く王国が再建されることを望んでいるのだ。
現在、革命勢力は【真理の灯台】、【鉄の槌】、【黄金の天秤】の3勢力に分裂している。結果、この3勢力は資金を奪い合う状態となり、革命組織全体が深刻な資金不足に直面しているのだ。
つまり、彼らが俺を殺すこと以上のメリットを提示してやらなくてはならない。
「私個人としては、密約の提供は十分な価値を持ちます。そして、私たちの支持層である貴族たちにとっても。しかしながら、ほとんどの無知な国民にとって、それはプロパガンダとしての効力を発揮しません」
エレナは続ける。
「だから、私たちがこの説得に応じて、武力革命路線を放棄する条件は1つです。国民の支持を得られるものを、私たちに提供してください」
どうやら、【真理の灯台】は全体の相談で方針を決定したようだ。エレナは、「密書を手に入れ、真実を究明する。そのことがいずれ革命の道を開く」という穏健的な考えをしている。それとは対極的に、ヤコブは「革命というのは、常に現実に根ざしており、現実から離れたところで革命はおきない」という急進的な思想を持っている。
この案は、エレナ派とヤコブ派による討論のすえ出た、落とし所といえるだろう。俺は、エレナの含みを持たせた言い方から、察する。
「もちろんだ。俺はお前たちに、その全ての条件をクリアするものを提供しよう」
「ほう、それは興味深いねぇ」
ヤコブは俺の言葉に愉快そうなうなずき、話を促す。俺は続ける。
「俺は王子だ。だから、俺は他の貴族と同様に、領土を」
ガタン
扉が勢いよく開く。
中に入ってきたのは、鷲の紋章を肩に携えた屈強な男たち。
内乱期、宰相エルダーによって作られた特殊部隊であり、今もなお、宦官派・宰相派といった政治権力に染まることのない正義の組織。
憲兵隊。
「おいおい、リアムちゃん。やってくれたねえ。どこで情報を漏らしてきたの」
ヤコブはひきつった笑みで、俺を見る。エリアスは慌てふためいており、カインは俺をこの場から逃がす時間稼ぎをしようと臨戦体勢に入る。
この部隊を率いるコルソン警視正が声を張り上げる。
「今から、お前たち【真理の灯台】幹部を、国家転覆の容疑で捕縛する。第四王子リアム、貴様も革命勢力との内謀の疑いで逮捕だ!!」




