表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/53

第13話 覚悟

 俺は、王宮に帰ると、一目散に自室へと戻った。ゆっくりとソファーに座り込む。執事であるセルバは、俺にコーヒーを出してくれた。


「坊ちゃん、今日は一段とお疲れの様子で」

「あぁ、色々あってな」


 眼鏡の奥からやわらかな目で、セルバは俺を見つめていた。コーヒーは穏やかな味がする。俺のために、ミルクを少し多めに入れてくれたようだ。


「なぁ、セルバ。もしやりたくないことをしなきゃならない時、お前ならどうする?」

「……、そうですね」


 少し考えるような仕草をした後、セルバは俺の方を振り返りながら、言った。


「長年王家に仕える中で、私も時たまやりたくない仕事をさせられることもあります。その時、私は決まってこう思うようにしています」


 俺はコーヒーをすする。ほんのりと温かいコーヒーを息で冷ましながら、俺はセルバのゆったりとした声を聞く。


「私は、組織の歯車に過ぎないと」

「歯車?」


 俺が尋ねると、彼は微笑みながらうなずいた。


「ええ。私がどんな行動をしようと、何も変わることはない。でも私がしなければ、その嫌なことを誰かが必ず代わりしなければならなくなると。そう思うと、嫌なことでも少しばかりやろうと思えるものですよ」

「誰かがやればいい、とは思わないのか?」


俺の質問に対して、朗らかな笑みを浮かべる。


「誰かが嫌な思いをするくらいなら、このじいはその重みを肩代わりしますよ。それに……」

「それに?」

「私は私のせいで、その誰かが嫌な思いをすることを耐えられませんのて」



 セルバはそう言うと、俺に優しく笑いかけ、話を切り出す。


「ところで話は変わりますが、坊ちゃんに元気を出していただこうと、リリアーナ殿下もお呼びしております」

「お兄様ー!!」

「リリアーナ!?」


 リリアーナが駆け寄ってきた。俺は突然飛びついてきた妹にたじろぎつつも、ぎゅっと抱きしめる。その身体は、思ったよりも小さかった。


 まだ幼いこの少女に、俺と同じ重荷を背負わすわけにはいかないな。


 腹をくくる。


 俺はセルバに頭を下げると、まだ半分ばかり残っているコーヒーを机の上に置いたまま、自室の外へと出た。



◇◆◇◆

 交渉の日が来た。


 指定された場所は、今は廃墟となってしまった古びた貴族の屋敷だった。ここに【真理の灯台】の幹部たちはいる。エリアスとカインは俺と共に、古びた門をくぐる。


 覚悟を決めろ。


 月明かりに照らされた俺たちは、その屋敷の中に、一歩足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ