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第11話 交渉②

「これは、王立図書館との契約書!?」


「ああ、俺が【真理の灯台】に密書を渡していたという情報を王立図書館に渡すことを交換条件に、密書の一部がもらえる契約となっている。まぁ、先生にとっては、『密書の存在がある』という情報だけでも、十分価値はあると思うが」


「これが分かれば、真実にまた一歩近づくことが……」


 俺は意地の悪い笑みを浮かべながら、彼女に言う。


「残念ながら、今、俺の手元には密書の原本がなくてだな。俺を殺してしまえば、教授が求めている真実は、一生闇の中に沈んでしまうんじゃないかな」

「なるほど、よく考えたわね。私たちに自分たちを撃とうとしたという既成事実をあえて作らせ、交渉を有利に進める、と」


 エレナは一息つくと、俺に質問する。


「あなたは、これを代償にすることで何を望んでいるの?」

「俺が欲しいのは、【真理の灯台】の武装路線の放棄、そして、他の革命集団の内部情報だ」


 その言葉を聞き、エレナは疑うような目で俺の様子を見る。


「あなたが差し出す情報の重みと、あなたが提案した条件は釣り合いが取れていない。『国家機密の情報を革命家に売り渡した』、これは、王族といえど死罪になるレベルのことだし、国家転覆罪の要件にも入る。あなた、何が目的なの?」


 俺は、幹部たちの目を見る。これから始まるであろう宦官かんがんとの政治闘争、そしてカール帝国との大戦、この2つの闘争に彼らの存在は必要不可欠なピースとなってくる。逆に彼らがいなければ、俺はこの2つにおいて確実な敗北を喫することになるだろう。だが、今は彼らにその目的を話すことはできない。はぐらかすこととしよう。


「後でおつりが出るだけ働いてもらうさ」


エレナはふっと笑うと、俺の目を見た。その深紅しんくの瞳は、なにか強い意志を宿しているような瞳だった。


「まだ、手の内は見せるつもりはないと。良いでしょう、協力しま」



パーン



発砲音



「おいおい、そりゃあねえんじゃねえのか、エレナお嬢ちゃん」


 ツカツカと長髪をなびかせながら、男は言う。ショットガンを担いでいるその男は、つかつかと俺の前まで歩いてきた。隣には、オークのような見た目をした、巨体の男が付き従っている。


 違和感の正体はこれだったか……。エレナたちの派閥と彼らの派閥。この組織は二分化してしまっているのだ。彼女が登壇した時のまばらな拍手。彼女の「銃を下ろせ」という命令に即座に従わなかった貴族たち。不穏な違和感の正体を察する。


 もともと穏健な路線であった彼女が、どうして急速に武装闘争方針に転換したのか分からなかった。が、こいつらが力を伸ばしていたのか。


2人の男は俺たちの前に来ると、立ち止まる。ニヤリと笑うと、ヤコブは俺の頭に、懐から出した短銃を突きつけた。剣を抜こうとするカインを、手で制止する。


「ヤコブ先生、ゴーリキ先生。お久しぶりです」

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