最強従者は今日も自由 第一章 第二話
「言うのも憚られるが、そこらでくたばってる有象の次に伏さないでくれよ?」
糸垂は、剣の先端を地面に擦り、
砂利の音を鳴らす。
「憚られるの意味を知っているかい?
理解しているなら、もっと遠回しものだと思うが」
対してシーナンは、苦笑いを浮かべつつ、
言葉を返す。
「アンタ、頭が固いってよく言われるんじゃないか?」
「はは、どうだ、かっ!?」
ーキィ゛ンッ・・・!
言葉の途中で、嫌すぎる、剣が擦れる音がする。
「これを防ぐか」
「不意打ちとは関心しないな・・・っ!?」
現在の糸垂は、
剣を逆手に持ち、また、低く跳び一気に距離を詰めたため、上着が靡き、また、片足が軽く浮いた状態である。
言うなら、跳躍の直後、着地の体勢をキープしているようなものだ
重なった儘の剣を押し弾き、反力で跳び距離を取る。
「なるほどな、これを耐えれるなら確かに、
騎士団長も伊達じゃない訳だ」
「不意打ちで終わる訳かい?
ならば、次は此方から行かせて貰う・・・!」
そして、シーナンは剣を引き抜く。
その瞬間、その一瞬、
その間だけ、確かに、
シーナンの周囲の空間が、ー歪んだー
「『空裂』」
一気に距離を縮め、剣を振ってきたシーナンに対し、
糸垂は、剣先をただシーナンの剣に添えた。
それだけのはずが、
確かに空間を割くはずだったその刃は、
止められた。
いや、ただ空を薙いだ。
「・・・!?」
「構を使えるか、いや、団長の座なら当たり前か?
実践だったら驚いてる暇なんざないぞ・・・!」
糸垂は後ろに距離を離し、剣を鞘に構える。
「・・・ーーー『止水』」
その後は、
・・・一瞬だった。
剣を砂利に向ける糸垂と、
倒れて天を仰ぐシーナン。
「私の負けだよ」
そうして、一瞬の間ができた。
「また、いつか、手合わせ願いたいものだ」
「・・・機会があったらな」
そうして、静寂が訪れる。
「糸垂かっこいい!!!!!」
その静寂は一瞬で破られたが。
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「騎士団の人はどうだった?」
屋敷に戻るなり、
エントランスでアデサラに話しかけられた。
「一人、見込みのあるやつはいましたが、
それ以外はからっきしですね。
まぁ、国の騎士団なんて殆ど形式的な物なので、
影響は少ないでしょうが」
「一応評価はしているのね?」
糸垂は一瞬、口を噤んだ。
「不意打ちを止められたので
それに、あの構は悪くなかった」
「・・・なるほどね?
にしても珍しいわね。
糸垂が他所の人を褒めるなんて。
まぁ、いいわ。
今日はもう休んでいいわよ」
「では、そうさせて貰います」
そうして、今日もまた、
一日が終わっていく。




