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叛逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにする~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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異変

 その後は、順調に魔の森を進んでいく。


 俺はオークや、上位種のボブゴブリンなどを倒す。


 ちなみに、ホブゴブリンは一回り大きくなったゴブリンのことだ。


 カグヤは薬草や果実を採取し、ハクが周りを警戒しつつカグヤを護衛している。


 何より……ハクがいることにより、安全に休息を取れるのが一番助かる。


「クロウ!これ食べてみて!」


「ん? おっ、サンドウィッチか」


 お昼休憩なのでカグヤは魔法袋から、サンドウィッチを差し出してくる。

 俺はそれに口を近づけ、そのままかぶり付く。


「うん、相変わらず美味い」


「ふぇ!? て、手で取ってよ!」


「す、すまん」


「べ、別にいいけど……あーん」


「お、おう……あーん」


 先程は無意識だったが、意識すると恥ずかしい。

 カグヤも、耳まで真っ赤になっているし。


「やはり美味いが……なんの肉だ?」


「オークよ。醤油とニンニクで、隠し味にりんごを絞って入れてみたの」


「それか、この甘みと酸味の正体は。なるほど、カグヤは料理上手になったんだな」


「えへへー、そうでしょ? い、いつでもこれでいけるわ!」


「はい? どこか行くのか?」


「そういう意味じゃないわよ!クロウのバカ!」


 すると何故が、肩を叩かれた。

 相変わらず、この辺はわからん。

 すると、ハクが首だけ動かしてくる。


「グルルー」


「おっ、悪い悪い。ほら、食べな」


「グルッ!」


 俺達の今の状態は、ハクが木を背にしてうつ伏せの状態で寝転がる。

 その長いフカフカの胴体に、俺とカグヤが寄りかかっている形だ。

 このおかけで、こうしてのんびりと食べていられるってわけだ。


「これなら安心して食べれるわね!」


「ハクは気配に敏感だから、敵が来てもすぐに気づくだろう。さらに、パスによって気づいたことがすぐに俺に伝わる」


「グルルー」


 ハクから『もっと褒めてとか、任せろ』という気持ちが伝わる。


「おう、ありがとな」


「なんて言ったの?」


「褒めてとか、俺に任せろってさ」


「ハク! 良い子! 頼りになるわ!」


「グルルー……」


 カグヤが顎の下を撫でると、ハクがうっとりした表情になる。

 こうしていると、ただの大きな猫って感じにしか見えん。

 英気を養った俺たちは、再び探索を続ける。


「この辺から気を引き締めていこう。おそらく、以前ドラゴンがいた場所に近い」


「わ、わかったわ……」


「グルルー」


 するとハクが、ガクヤの顔をペロッとする。


「わぁ!? 顔を舐めないでー!」


「なるほど、俺がついているか。先に言われてしまったな。ガクヤ、俺とハクがいるから安心しろ」


「グル!」


「う、うん!」


 意識を高めて、魔の森の奥にいく。

 こっから先は、銀等級以上の魔物しか出てこない。

 油断すれば、やられるのはこちらの方だ。


「グル……!」


「ほう? 俺より早く気づいたか。やはり、森の王者には敵わんか」


 ハクに少し遅れて、俺も気配に気づく。

 そして、森の奥から魔物が現れた。

 それは人型に近い姿をしているが、似ているのはそれだけだ。

 身長二メートル以上に逞しい身体、そして額から一本の角を生やしている。

 鬼のような顔を持ち、お伽話に出てくるような魔物だ。


「あ、あれって……オーガ? 悪いことすると、オーガがやってくるってやつ……」


「ああ、その話の元になった魔物だ。二足歩行の魔物としては、最強種と言われている」


 ただ、あれは普通のオーガだから銀等級だ。

 噂では、ジェネラルやキングは桁が違うらしい。


「ガァァァァァァ!」


「ひゃん!?」


 オーガの咆哮に、カグヤが尻餅をつく。

 同時に、俺やハクにもビリビリと圧が伝わってくる。


「中々の気迫に咆哮だ。だが、その行動は万死に値する……ハク! カグヤを頼むぞ!」


「グルッ!」


 よし、これでカグヤは安全だ。

 俺も、久々に何も気にせずに戦える。


「ふむ……良い機会か」

 

 強くなるために、もう一段上にいかなくては。

 俺は剣を地面に置き、オーガに近づいていく。


「ク、クロウ!?」


「大丈夫だ、そこで安心して見ててくれ」


 魔力を、身体中にくまなく通す。

 全身を強化し、剣すら通さないイメージをしろ。


「ガァァ?」


「よう、強い肉体が持ち味なんだろう? 殴り合いといこうか!」


「ガァァ!」


「ハァァ!」


 俺とオーガの拳と拳が激突する。

 すると、押し返されたオーガが驚きの表情を浮かべた。


「カァ!?」


「人間と殴りあうのは初めてか!?」


 俺の右の拳が、オーガの腹にめり込む。

 相手は腹を手で押さえて、苦しそうにしている。


「ガァァァァ……!」


「そんなものか?」


「グ、グガァァァ!」


 怒りに任せて、オーガが拳の連打をしてくる。

 常人が喰らえば、木っ端微塵になりそうな拳をあえて受ける!


「ガァァァァァ! ……ガ?」


「……なるほど、通常種オーガならこの程度か」


 ダメージを負っていない俺の様子に怯えたのか、オーガが一歩下がる。

 これ以上の戦いは無意味だな。


「グガガ………」


「もう終いか——魔拳突き!」


「ゲハッ!?」


 俺の魔力の込めた正拳突きが、オーガの腹を貫通した。

 そして、オーガが仰向けに倒れこむ。


「よし、素手でも肉体強化すれば倒せるようだ」


「クロウ! 凄いわ! まるでエリゼみたい!」


「グルルー!」


「二人とも、ありがとな」


 よし、これは大きな収穫だ。

 今までは戦争や集団戦ばかりで、実戦さながらの稽古どころではなかった。

 だが、これなら鍛えつつも稼ぐこともできる。

 オーガなら、冒険者ランクも上がりやすくなるだろうし。


「さて……カグヤ、ハク、体力はどうだ?」


「まだ平気よ!」


「グルルー!」


「二人とも平気か。まあ、カグヤはいざとなればハクに乗ればいい」


 そのまま、奥に進んでいくが……少し経って異変に気付く。


「……おかしい」


「え? どういうこと?」


「静かすぎる……こんな奥なのに魔物もいない」


「グルル……!」


 ハクが『何か大きな気配がする』と伝えてくる。


「ハク?……どこからかわからないが、強い気配を感じるんだな?」


「グルッ!」


「ハ、ハクって、この森の王者なんでしょ? そのハクが強い気配を感じるって……」


「引き返した方がいいか? いや……遅かったか」


 なるほど、気づかないわけだ。

 俺とハクは、ほぼ同時に空を見上げる。


「ク、クロウ?」


「ハク! わかってるな!?」


「グルッ!」


 ハクが、すぐにカグヤの側に寄り添う。

 次の瞬間、空から何かが降ってきた。

 そいつは木々を倒しながら地面に倒れこむ。


「こいつは……ワイバーンか!」


 銀等級の魔物で、ドラゴンに似ているが似て非なる魔物だ。

 胴体は細いし、身体のほとんどを翼が占め、毒のある長い尻尾が特徴的な魔物である。

 ただ、数少ない空を飛ぶ魔物ということで、冒険者達から恐れられている。


「《《そのワイバーンを倒す存在ということは》》……来たか」


「グルル……!」


 そして……空から赤い皮膚の大きな生き物が、ゆっくりと降下してくる。

 大きな翼、鋭い爪、ギョロッとした眼、俺さえも一飲みできそうな大きな口。

 体長五メートル超えで、見るものに畏怖を与えるその姿。


「ゴギャァァァァァ——!!」


 そう、完全なるドラゴンである。

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