とある貴族視点
王都にある屋敷の中、俺は怒り狂っていた。
あまりの腹立たしさに、家具や花瓶を部屋に投げつける。
それでも怒りは一向に収まらない。
それもこれも、あのクソ息子のせいだ。
「クソッ! 今更出てきやがってクロウめ……余計なことをしてくれる! どうする? いくら縁を切っているとはいえ、俺の息子であることに変わりはない」
「貴方!」
そんなことを考えていると、妻であるエルラが部屋に駆け込んでくる。
「どうしたエルラ!?」
「さ、宰相様が……」
「失礼しますよ、ごきげんよう。ゼーネスト伯家当主、ロドマン殿ですね?」
宰相……来たか……早すぎる!
まだ、何も言い訳を考えていない。
俺は焦りを抑えつつ、冷静を装う。
「はい、そうです。何か、私にご用でしょうか?」
「ほう? 表向きは動じていないですね? 流石は、腐っても伯爵家当主ですか」
この……腐っているのはお前の方だろうが!
次々と、自分の邪魔者を排除しているくせに!
何処の馬の骨ともしれない婿養子の分際で……!
「……いくら宰相様とはいえ、言い過ぎではありませんか?」
「いえいえ、反逆者の父親にはこれで充分ですね」
「アレは息子などではない!」
確かに前妻の子であり、血の分けた息子ではある。
だがとうの昔に捨てたし、そもそも生きているとは思ってなかった。
数年後に生きていると知ったが……その時には英雄と呼ばれ、逆に手出しができなくなっていた。
「絶縁はしていますが、父親であることに変わりはないでしょう。では、とりあえず死んでもらいましょうかね?」
「なっ!? 何故だ!?」
「色々と余罪も出てきましてね。そちらの奥方からも。相当悪どいことをされているようで……元妻の家の後継を殺したり……」
「ッ〜! お前だってやっているだろうが!」
あまりの言い方に怒りの沸点が超える。
すると、宰相の空気が変わった。
「お前? これはこれは……」
「ま、待ってくれ! 謝る! ど、どうすればいいんだ!?」
「そ、そうよ!何をすればいいのよ!?」
忘れてはいけない!
こいつは、何十人と政敵を始末してきた。
俺達を殺すことなど容易いだろう。
俺とエルラは頭下げ、必死に命乞いをする。
「お二人共、死刑です……が、助かる方法がひとつだけあります」
「なっ、なんだ!?」
「カグヤを連れ出し、クロウを殺すことですよ。アレがいると、私の計画に支障が出るのでね。ただし、カグヤは殺してはいけませんよ? アレには使い道がありますから……」
「なに!? 今のあいつは強いのだろう!? 私達では、勝てるわけがない!」
それに、あいつは俺を憎んでいるはず!
どっちにしろ、殺されるではないか!
「わ、私も恨まれているわ!」
「それは自業自得でしょう。ですが、手は打ってあります。貴方達には、餌となってもらいます。そして、いざという時のために《《あるもの》》を渡します。それがあれば、最悪失敗してもどうにかなるでしょう」
その提案に俺達が逆らえるわけもなく、仕方ないので了承する。
その後、宰相バーグ侯から、手順の説明を受けた。
そして、俺の気が変わった。
これなら、確かにいけそうだ。
あいつも人間だし、もし失敗してもコレがあれば……。
「いいでしょう。無事果たせば、無罪放免ですな?」
「ええ。それさえ果たせば、こちらでもみ消しておきましょう。その後は仲良くできそうですね」
「わかりました。それさえ聞ければ十分です」
うむ……丁度良いかもしれん。
アイツは邪魔だった。
才能もあり正義感も強く、可愛げもない。
せめてもの慈悲で、追放だけですませてやったが……その内勝手に死ぬだろうと思っていたのに、アイツは生き残っていた。
幸い、口煩い女は死んだがな。
だがコレで終わりだ、俺の罪も消えて邪魔者も消える。
考えようによっては、いいこと尽くめではないか。
クロウよ、最後に親孝行をさせてやろう——父の為に死んでくれ!




