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叛逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにする~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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旅立ち

 久々にゆっくり寝られた俺は、辺境伯邸の庭で素振りをしていた。


「カグヤを守るためには、もっと強くならねば……」


 どんな相手でも、負けない強さを……傷ついているカグヤが安心して過ごせるように。

 すると、エリゼが屋敷から出てくる。


「ふむ、朝から精が出るな。それに良い太刀筋だ。あの小僧だったクロウが、こんなに強くなるとは……昨日は任せると言ったが最終試験だ、今から手合わせをする」


「願っても無いチャンスですね。エリゼには一度も勝ったことがありませんから。手合わせのルールは?」


「魔力強化による肉弾戦でいこう。ただし顔はなしだ。出立前に怪我を負わせるわけにいかんし、見栄えも悪いしな」


 その言葉に、少しカチンときた。

 俺だって、それなりに修羅場はくぐってきたつもりだ。


「おや? 俺に怪我を負わせる自信がおありで? 俺こそ、怪我をさせないように気をつけますね。女性の顔に傷をつけるわけにはいきませんから」


「ほう……?言うようになったな……後悔するなよ!」


「そっちこそ!」


 それが合図となり、お互いに魔力を高め殴り合う!

 その一発一発は重く、ばちばちと火花が散る。

 今の俺と肉弾戦で互角とか……やはり、当時は相当手加減をされていたのだな。


「クロウ! 随分とやるようになったな! 魔力コントロールも完璧に近い!」


「アンタこそ相変わらずだな! これでも、相当強くなったんだが! 負けはしないが勝つのも難しそうだ!」


「贅沢な奴だ! 私に勝てる奴など、そうそういないというのに!」


 確かにエリゼは強い。

 おそらく、俺が出会った誰よりも。


「だが俺は誰にも負けるわけにはいかない!」


「くっ!?」


 渾身の一撃を放つと、エリゼが後退する。

 俺は拳を掲げ、エリゼに宣言する……自分への誓いと、エリゼを安心させるために。


「俺は最強を目指す! どんな理不尽なことからもカグヤを守るために! そしてカグヤが何か願ったのなら、俺は全力を尽くしそれを叶える!」


「……いい気迫だ。悔しいが、やはりお前に任せて正解か。ふふ、まさか私が押し負けるとは」


 どうやら、少しは認めてくれたらしい。

 すると、今度はカグヤが屋敷から慌てて出てくる。


「ちょっと二人共!? 朝から何をやってるのよ!?」


「カグヤか、おはよう。おいおい、寝癖がついてるぞ?」


「お嬢様、おはようございます。おぐしを直しましょうね」


「そ、そうじゃなくて! 二人共傷だらけじゃない!」


 そう言いながら、こちらに近づいてくる。


 「全くもう……この者たちの傷を癒したまえ、ヒール」


 エリゼの手が光り、身体が温かいものに包まれる……これは回復魔法か。


「そういえば使えるようになったと言っていたな。凄いな、カグヤ」


「お嬢様、ご成長なさいましたね! 私、感激です!」


「もう! 大袈裟よ! その……当時クロウが怪我ばっかりしていたから、ずっと覚えたいと思っていて……わ、私の所為でもあるしね!」


 まあ、たしかに……『お嬢様に近づくな!』と言われて、傷だらけになっていたな。

 俺は懲りずに近づき、その度にさっきみたいな殴り合いになったっけ。


「カグヤ……俺のために……」


「別にクロウのためだけじゃないから! 覚えたら、怪我をした兵士達を治せるかなって……その、王妃として励ませるかなって……でも、意味はなかったわ」


「カグヤ、それは違う。意味がないことなどない。それは、いつの日かきっと役に立つ。

 それに、それはカグヤの努力の証でもある。それを自分で否定してはいけない」


「クロウ……ありがとう。クロウは、いつだって私の欲しい言葉をくれるのね。私は、いつも勇気付けられるわ」


「そんなのは、お互い様だ。うん、カグヤには笑顔が似合う」


「そ、そう? 私も頑張らないと……!」


 カグヤは何故が両頬をペチペチと叩いている。

 何か気合を入れるようなことがあったのだろうか。


「よくわからないが、応援するとしよう。俺に出来ることがあれば、なんでも言ってくれ」


「これは全くもって噛み合っていませんね……前途多難ですか。まあ、私にとっては良いことですか」


 その後、朝食を済ませたら……いよいよ出発の時間となる。

 俺とカグヤはフードを被り、こっそりと裏口に向かう。

 見送りは、ヨゼフ様とエリゼだけだ。


「では、クロウ。すまんがよろしく頼む……!」


「私からも頼む。 お嬢様をお守りしてくれ……!」


 そう言い、二人して頭を下げてくる。

 本当なら自分達で守りたいだろうに、俺を信頼してくれている。

 この期待……裏切るわけにはいかない。


「二人とも、頭を上げてください。これは俺自らが望んだこと、頼まれなくてもカグヤは俺が守ります」


「よ、よろしくね……これから二人きりかぁ」


 俺は先に馬に乗り、もじもじしているカグヤに手を差し伸べる。


「ほら、行こう。カグヤ、これからもよろしく頼むな」


「そんなのこちらの台詞だわ……クロウ! これからも私と一緒にいて!」


「当たり前だろ。言われなくても一緒にいる」


「……うん!」


 笑顔になったカグヤを後ろに乗せ、マルグリット王国に向けて走り出す。


「クロウ! お嬢様を泣かせたら承知しないぞ!」


「カグヤ! クロウと仲良くやるんじゃぞ!」


 「お父様! エリゼ! 二人がいてくれて私は幸せよ! また会える日を楽しみにしてるわ!」


 カグヤは手を振りながら、そう応えるのであった。

 そして二人が見えなくなると、トスとカグヤが俺の背中に寄りかかる。


「クロウ、振り向かないでね……背中、貸してくれる……?」


「ああ、見ない。俺のでよければ、いつでも貸そう」


「ありがとう……グスッ……ヒック……お父様……エリゼ……!」


 カグヤを溺愛している二人に託されたこの使命。


 必ずや、果たしてみせよう——俺の全身全霊をかけて。






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