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トネリの超越者、ヴィギレ

 マセナ・リィって奴は『プラスチック爆弾型の異能技術兵器(モータル・ウェポン)なんて、アキラ様には使えない』とか言っていた。

 まあそりゃそうだろう、まず引っかからないし、それで殺しちゃったら偉いことだ。ボクシングの試合で不幸な事故が起きるのとは、わけが違う。


 その一方で、アキラの方も配慮していた。

 挑戦者を殺したらまずいので、手加減して勝てそうにないと思ったら、ギブアップしていたようだ。

 まあ俺だってそうしていたかもしれないが、それが原因で俺が弱く思われているのなら悲しい話である。


 つまるところ、実際の力関係は……。

 俺>(越えられない壁)アキラ>(越えられない壁)超越者(ブレイブ)異能者(モータル)

 ぐらいなのに、連中のイメージだと。

 超越者(ブレイブ)≧俺≠アキラ>異能者(モータル)

 ぐらいに落ち着いているのだ。


 力は相手の方が上かもしれないけど、知恵と技が合わされば私たちが勝つ!

 という悲しい思い込みのせいで、今後も自分を強いと思い込んでいる雑魚が突っ込んでくるのだ。


 ここに来て、アキラの気持ちが分かってきた。

 確かにそれを相手にするのは、やるせない。


「なあアキラ……お前偉いんだろ、言って止めるとかできないか?」

「できるなら、そもそも貴方を襲ったりしないわよ……絶対誰も言うこと聞かないわ」

「それ偉いって言えるのか?」

「なによ、絶対王政、独裁政権でも作っていればよかったの? 無理言わないでよね」


 マセナだって、強いっちゃあ、強かったのだ。

 俺を倒すには、レベルが足りなかったってだけで……でもそれが一番大事なわけで。 

 ああ、いや、でもな……よく考えたら、こいつの作った町で一番強い奴を倒したんだから、町の方だってまともに対策を練るんじゃないだろうか。

 たとえば……残り全員が一気に来るとか。


「つうかさ、残りの超越者(ブレイブ)が全員来るって可能性はないのか?」

「無いわね、全員仲が悪いもの」

「俺たちだって、仲が悪いって程でもなかったと思うんだけど……大丈夫なのか、お前の町」

超越者(ブレイブ)って、各組織最強ってだけで仲間ではないわ。私たちに当てはめればわかるでしょ」


 そりゃそうか……。

 たとえばトドロキとかホノオが超越者(ブレイブ)って呼ばれるようになったとしても、他所の組織の超越者(ブレイブ)と仲が良くなるかって話だもんな。

 他の組織の奴と協力しないで、俺たちで一緒に戦うよな……。


「それに……全員自分が一番強いって思ってるから、他の子が全員負けても自分なら、って思うはずよ」

「それは大丈夫じゃないな……」

「そ、そうね……た、ただね! 貴方が黒タイプであることは知られているから、数で押してくることはないはずよ!」

「それはいいことなんだろうか……」


 長い戦いを終えて帰ってきたのに、今度は人間相手の戦いになるとか……。

 俺はいつまで戦えばいいんだろうか……。


「で、でもね! 逆に言って、残る超越者(ブレイブ)を全員倒せば、さすがに町の人たちも諦めるわよ!」

「諦めて、どうするんだよ……俺を受け入れてくれるのか?」

「それはまあ……受け入れるっていうか、降参っていうか」


 世界を救って帰ってきたのに、暴力で屈服させないと受け入れてもらえないって何だろう……。

 とはいえ、残り四人を倒せばいい、っていうのは気楽だ。

 さすがに第二第三の超越者(ブレイブ)とか、隠れた実力者とか来られたらたまったもんじゃない。


「……ん、なんかエンジン音。っていうか、プロペラの音が」

「二人目が来たようね、こうやって堂々と来るのは……ヴィギレかしらね」


 空を見上げると、そこには昔見たような大型のヘリコプターがあった。

 上空で止まったまま、なんかドア的なものが開いて……人が飛び降りてくる。


「……特撮か?」

「いや、現実よ」

 

 金属製のスーツを着たヒーロー、って感じの姿をしたのが現れた。

 荒れた地面を大きくへこませながら着地して、豪華な身分証明書を突き付ける。


「治安維持部隊トネリ所属、超越者(ブレイブ)のヴィギレです! 無駄な抵抗は止めて、おとなしく逮捕されなさい!」

「……なあアキラ、お前って特撮番組を参考に街づくりをしたのか?」

「そんなことないわよ……ホノオの趣味よ」

「ああ……」

「返答を要求するわ!」


 本人は極めて真面目なんだろうが、ジェネレーションギャップで、少々笑ってしまった。

 しかしながら、それが相手を怒らせたようである。

 とはいえ、こっちにも言い分はある。


「なあヴィギレさんよ。ちょっと聞きたいんだが、俺はどんな罪で逮捕されるんだ?」

「他者を汚染した罪です! これは殺人と同等の扱いであり、二名を汚染した貴方には相応の罰が下されます!」

「……なるほど、十億が目当てじゃなさそうだな」

「当然です!」


 金目当てじゃない、ってのはいいことなんだろうか、悪いことなんだろうか。


「しかしなあ、捕まったら、裁判だかなんだかのあと死刑になるんだろう? それで俺がおとなしく捕まるとでも?」

「罪の意識があれば、おとなしくするでしょう!」

「罪の意識って……」


 俺は胸のアキラと、腰に下げていたマセナを示した。

 これ犯罪の証拠って言えばそうだが、俺はこいつらに殺されかけたのである。


「確かに俺は、二人を汚染した。それが罪だってのはわかるが……俺は危うく殺されるところだったんだぞ? まさか無抵抗で殺されていればよかったって言うのか?」


 俺は、俺にとっての正論をぶつけた。

 さて、警察は何と答えるのか。


「逃げればよかったのです!」

「それはまあ、そうだけども……相手は銃とか持ってたぞ?」

「それでもです!」


 物凄い理想論をぶつけてきたぞ、おい……。


「確かに貴方がここに帰ってきた時点では、貴方に罪はありません。世論がどう動いたのかはわかりませんが、少なくとも私は貴方を逮捕しようとは思いませんでした。ですが、貴方は二名を汚染した! それが罪でなくて何なのですか!」

「いや、だからなあ……正当防衛だろう」

「貴方のいた時代はともかく、現在の正当防衛は『逃げようとして押した』などにしか適用されません! 殴られたから殴り返すなどは、過剰防衛です!」

「……」

「相手が暴力を振るってきたからといって、暴力をふるっていい理由にはなりません!」


 なんか、俺もこいつが嫌いになってきた……。

 少なくとも、こいつが他の超越者(ブレイブ)に嫌われているのは、納得である。


「もういいや、無駄な抵抗ならぬ、有効な抵抗をさせてもらうぜ」

「公務執行妨害も加わりますが……!」

「どうせ死刑だろ」

「犯罪者の思考ですね! ならば実力行使です!」


 盾と警棒、防具を着ている女戦士。

 如何にも警察、機動隊って感じだ。

 なんかSF的な色合いだが、真面目な警察のようにも見える。


 そして実際、腰を落として防御の構えをとっていた。

 警察と戦っている、という感じがすごいな……。


「さあて……行くぞ!」


 俺は初手で念動弾を撃った。

 ドッチボールぐらいの弾丸が、ヴィギレの持っている盾に命中する。

 一撃で盾を吹っ飛ばせるかな、と思ったそれを、彼女はしっかりと受け止めていた。


「へえ……ぶっ壊れない当たり、青が入っているな。だが頑丈な青だけなら受けきれないはず……っと!」


 間合いを詰めて、盾に蹴り込む。

 ずむ、と蹴った手ごたえ、足ごたえがあるが、それでも吹き飛ばせない。

 むしろ、俺が吹き飛びそうになる。


「この重量感……茶色か!」

「その、通り!」


 盾で受け止めた俺の足へ、警棒を叩きつけてくるヴィギレ。

 俺の脛に、奇麗に打ち込んできた。

 すげえ、痛い。


「あ、あだだだだ! こりゃあ強いな……超越者(ブレイブ)ってのは、伊達じゃないか」

「そちらこそ……叩き折るつもりでしたが、痛いで済ませるとは……」


 ヴィギレも言っていたが、俺の足は大丈夫だった。

 ちょっと痛いってぐらいで、骨は大丈夫。それどころか、普通に戦えるぐらいだ。

 昔骨が折れたこともあったけど、そん時は痛いっていうどころじゃなかったしな。


「しかし、青と茶色か……こりゃあ強い。だがハスカールの異能技術兵器(モータル・ウェポン)と違って、色が普通だな」


 茶色の特性は、加重。防御でも攻撃でも効果を発揮する、重量級の強さだ。だが頑丈じゃないんで、俺の打撃を受けきれないはず。

 これに頑丈な青が加わっていると考えるべきだが、その割に色が単調じゃない。


「当然! トネリの異能技術兵器(モータル・ウェポン)は独自の科学異能混成技術ハイブリット・テクノロジーによるもの! ただ異能に頼るだけではなく、高度な科学技術との混成品であり、ゆえに色が露出することはない!」

「……元の武器も頑丈ってことか」


 俺たちの時代にも、武器に超能力を帯びさせる奴はいたが……。

 赤の場合は武器がそのままボロボロになったし、青の場合は結局超能力で武器を作るのと同じだったんだが……。

 上等な武器なら、その限りじゃないってことか。


「……で? その警棒でしばきまくって、俺を倒すってか? さすがにそれは舐めすぎだろ!」


 俺は念動力で加速して、間合いを詰めつつ後ろに回った。

 盾での防御が間に合わないタイミングで、後ろから念動弾を叩き込む。


「ぐう!」

「やっぱ、この鎧も『そう』みたいだな……だが!」


 青の硬さも、茶色の重さも、無限大ってわけじゃない。

 今の俺の力で打ちまくっていれば、それだけで壊せるし崩せる。


「さあさあさあ!」

「ぐ! なんのおお!」


 俺の連続攻撃に対して、ヴィギレは振り向きざまに反撃してくる。

 警棒での一撃を、俺は腕でしっかりと受け止めた。


「いっだいなぁ……だが、攻撃力はマセナほどじゃない。赤も黄色もないなら、オーラで防ぐまでもない!」


 攻め一辺倒の赤色や黄色と違って、茶色は攻防に秀でて、しかも持久戦ができる。

 だがその分、攻撃力は他二つに比べて控えめだ。

 青は攻撃力がそんなでもないから、結局重いだけの一撃だ。

 これぐらいなら、難なく耐えられる。


「そらよっと!」

「ぐう!」


 俺の前蹴りが、ヴィギレを吹き飛ばし、転ばしていた。

 俺はまだまだ余裕だが、ヴィギレはそうでもないだろう。


「強い……!」

「無理すんなよ。今降参するなら、俺は汚染なんかしないぜ?」

「だ、誰が、犯罪者に屈するものか!」

「そうは言うけどなあ……青も茶色も堅実に強い分、格上殺しには向いてない。このままやっても勝てないぞ」


 ますます警察って感じだ。

 しっかり防御を固めて、相手を弱らせる。

 だが格下相手ならともかく、格上相手に防御を固めても意味はない。

 駆除業者や軍隊みたいに、確実にぶっ殺すための武器とかは持ってない以上、俺にとっては脅威じゃない。


「私を……トネリを侮辱するな!」


 ふらつきながらも、立ち上がるヴィギレ。だがその装備は、もうすでにボロボロだ。

 彼女が壊れたヘルメットを外して投げると、そこには血まみれの顔がある。

 正直に言って、これ以上痛めつけるのは気が進まない。


「そうは言うけどなあ……このままやっても……」

「だああああ!」


 ヴィギレは盾を捨てて、猛然と襲い掛かってくる。

 警棒を両手で掴んで、全力で打ち込んで来ようとする。

 さてどうしたものかと思っていると……その警棒は、投げてきた。


「は?」


 結構な硬さ、結構な重さだった。

 顔に飛んできたので手で受けるが、少しひるむぐらいの威力はあった。

 問題なのは、今のが苦し紛れじゃないってこと。

 警棒以外に、なにか本命が……!


「かかったな、神」


 弱っていたのは演技かってぐらい速く、ヴィギレは俺の懐に飛び込んできた。

 そして鎧の中からぶっといワイヤーを取り出すと、俺の体に巻き付けていく。

 これは……!


「お前は倒せるのかと言っていたが、私は一言も倒すとは言っていない。仮に貴様を殺すとしても、それは執行官であり、私ではない。私の仕事は逮捕……捕縛だ」


 車が走るようなでっかい橋に使われてそうな、太すぎるワイヤー。

 それを俺の体にしっかりと巻き付けて、そのまま工具のようなアタッチメントで固定する。

 びっくりしていた俺は、なすすべもなく、ワイヤーでぐるぐる巻きにされていた。


「少し弱ったふりをすれば、あっさりと油断する。私たちを人間だと、保護する対象であると侮る……神とは傲慢で、だからこそ油断するな」

「このワイヤーで縛って、俺をどうにかできるつもりか? 重くて頑丈でも、念力を封じる力はあるまい!」


 手も足も縛られて、地面にずずん、と倒れた俺。

 普通なら茶色による加重だけで死ぬかもしれないが、俺は元気だ。

 なにせ青にも茶色にも、念力を封じる特性はない。ただ拘束されているだけだ。

 そういうのは、俺たち黒の領分だ。


「それなら、そのワイヤーをちぎればいい。建築にも使われるそのワイヤーは、全力のアキラ様でもちぎれない代物。それを私の青と茶で補強している以上、汚染することもできない。詰みだ」

「どうだろうな? 俺はそのアキラに勝った男だぜ」

「……くだらない、それが自信の根拠か」


 ヴィギレは、心底から俺を見下して、見下ろしていた。

 それこそまさに、犯罪者を見る目だった。


「お前がアキラ様に勝てたのは、彼女がお前を気遣ったからだ。お優しいあの方が、久しぶりに再会したお前を、本気で殺せるわけがない。その情に付け込んだからこそ、お前は勝てたのだ。それを実力をはき違えたとはな」


 なかなか言ってくれる警官だ。

 そういわれたからには、俺も真面目にならないとな。


「そういうお前はどうなんだ? お前はアキラに勝ったが、それを実力だと言えるのか?」

「当然だ」


 かわいそうになるぐらい、ヴィギレは自信満々だった。


「私は、アキラ様より強い。いや……トネリの、人の技術は、とっくの昔に神を越えている!」


 そういわれたからには仕方ない、俺も実力を見せてやらないとな。


「んじゃあ、ちぎってやるよ。おらあああ!」

「ふん、好きなだけあがけ。それは全力のアキラ様でも……な?!」


 俺が力を込めただけで、ぶちぶちと音を立てて、普通にちぎれるワイヤー。

 その張力で暴れまわるワイヤーは、そのままヴィギレを吹き飛ばしていた。


「ちぎれたな、どうする?」

「ば、バカな……一メートル三百万はする、最高級のワイヤーだぞ?! それを私の念力で補強しているんだぞ?! なぜこんなにあっさりちぎれる!」

「今度こそ、打つ手なしみたいだな」


 俺はあっさりと自由になり、吹き飛んでいるヴィギレを逆に見下ろした。

 呆然としているヴィギレへとどめを刺すべく、俺は胸ポケットのアキラに質問をした。


「なあアキラ、お前あのワイヤー、ちぎれなかったのか?」

「……一メートル三百万円のワイヤーよ? ちぎれるわけないじゃない」


 アキラは、開き直って素直に答えた。


「そんな高級品、ちぎったら損失だわ」

「だとよ」

「そ、そんな……そんな!」


 残酷だなあ、トドメだなあ。

 実に無様で見ごたえがある、正直すっきりした……ん?


「許せない」

「おい、何が許せないんだ?」

「許せない!」


 ヴィギレは、怒っていた。

 なぜかわからんが、凄い怒りぶりだ。


「警察官に逮捕されないなんて、一番許されない! 最強の警察官である私に、勝つなんて許せない!」

「それは、なんだよ」

「人は過ちを犯すもの……だからこそ、法で裁かないといけない……それを、力づくではねのけるなんて……あっちゃいけない! どんなに偉人でも、どんなに偉業を成しても、人は法の下で平等なんだ! 強いから許されるなんて、ありえない!」


 ……つまりあれだ、俺が強すぎるから、憎いってか。


「お前は、この世界で生きる資格がない! お前は生きているだけで、他の人の迷惑だ!」


 まったく、言ってくれるなあ、正義の味方は。

 いやはや……ムカつく。


「世界を救うために、一生懸命戦って……強くなって、勝って……それで、生きているな、か。なあアキラ、俺は悪いか?」

「私は、そう思わないわ。でも……殺すのは止めてあげてね」

「よし来た……」


 俺は憎悪をもって、技を発動させる。

 黒いオーラをヴィギレの足元に回して、そこから一気に噴出させた。



「ベビー・ベッド!」



 俺が地面を汚染させて作ったのは、それこそベビーベッドだ。

 転落防止の柵がある、赤ちゃん用のベッド。ただし、大人が乗れる大きさがある。


「な、何のつもり?!」

「俺の汚染技の一つだ……そのベッドの上に乗っているなら、人でも物でも無差別にオモチャへ変えていく!」

「そんなの、私の青で……受けて見せる!」


 俺の汚染は、格下にしか通じない。

 特に青タイプが相手だと、通常以上のレベル差が必要だ。


「私は現役の超越者(ブレイブ)唯一の青タイプ! つまり青タイプとしては最強! いくら黒い神だからって、その私を汚染させられるわけが……ない!」


 ベビーベッドがせり上がってきたことで、転んでいたヴィギレ。

 だが何とか立ち上がり、そのまま柵を乗り越えようとする。

 木製の柵に手をかけたところで……その手が、布製になっていることに、そいつは気づいた。


「は?」

「青タイプとしては、最強だったか? それが自信の根拠だったのか?」

「そ、そんな!」


 装甲に覆われていた腕が、装甲ごとぬいぐるみになっている。

 今はまだ片腕だけだが、もう片方にもそれが及びつつある。

 いや、両足がぬいぐるみになったことで、もはや立つこともできなくなった。


「そ、そんな! 私は確かに、念力を維持している! それを汚染するなんて……ど、どれだけ実力差があるっていうのよ?!」

「そうだなあ、少なくとも、二桁三桁は違うんじゃないか?」


 二倍三倍どころじゃない、桁違いのレベル差。

 正確に測定できないから何とも言えないが、多分それぐらいの差はあるだろう。


「それじゃあ、それじゃあ……! 誰も、お前には抵抗さえできないってこと?! 最初から、こうすることもできたの?!」

「まあそうだな」

「だったら、なんで?! 弱らせる必要だってないはず!!」

「それはな」


 胴体も布になり、もはや顔だけが人間だ。

 その彼女へ、俺は真意を教える。



「桁違いの格下相手に最初から倒しにかかるなんて……悪い(・・)だろ?」

「ふ、ふざける……」



 最後まで言い切ることもできないまま、ヴィギレは等身大のぬいぐるみになり……。

 ベビーベッドの上に倒れて、さらに小さくなっていった。


「一気にこうすることもできたのに、時間をかけるなんて……趣味が悪いわね」

「これは、俺の趣味が悪いんじゃねえよ」


 それを見ていて呆れた様子のアキラだが、仕方ないと諦めてもいた。



「俺の、機嫌が悪いんだ」



 俺の理屈で言えば、ここまで怒らせた、ヴィギレが悪い。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れさまです。 今作も面白いです。
[一言] 更新お疲れ様です。 おもちゃ化が血生臭くないからこそ、やりすぎ感が出なくていいですね!
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