悪い大人
黄の神、アキラ。青の神、イズミ。紫の神、ヒシメ。そして赤の神、ホノオ。
この世界に残り、文明の復興に勤めた四柱の神。
この四柱が最初に作った町こそ……『セントラルベース』。
現在この世界にはいくつかの集落と都市が存在しているが、その中でも最大規模であろう。
最大規模の都市であるだけに、その住人の数も十万に達している。
そこには多くの人間が、文明的で平和な暮らしをしている。
彼らは文明崩壊以前と変わらない、幸福な暮らしを営んでいる。
それが可能なのも、このセントラルベースが強大な軍事力と防衛機能を有しているからだろう。
四方に青タイプのバリア発生装置が存在し、有事の際にはこれを展開して外敵の侵入を阻む。
また都市内部には複数の武装組織が存在しており、外部の敵を速やかに撃滅する。
神が作り、人が集まり、生まれ、育ってきた町。
これはもはや国家であり、新しい世界の雛型と言えるだろう。
もはや人類はさまよう子羊ではなく、立派な文明人なのだ。
そして……。
人が大勢集まっているということは、それを管理する必要があるということ。
十万人の巨大都市、その管理者たちは……。
この都市を治める最後の神が、敗れたことを把握していた。
「突然強大な黒タイプの反応が出現し、アキラ様が単独でそこへ向かい……そのまま戻ってこないそうだ」
「状況から見て、黒の神に敗れたのだろう。彼女を倒せるほどの黒の神と言えば、異次元に突入した神々の一柱……スサブ様ぐらいのものか」
「アキラ様は昨今の情勢に苦言を呈されていた一方で、現状を受け入れてもいた。だからこそこの都市を治めるものとして、最後の同胞としての慈悲で、一人で討伐に向かわれたのだろう」
最後の神であり、最高権力者であるアキラ。
彼女に次ぐ地位にある、五人の権力者、五大老。
男性三人、女性二人からなるこの会議では、黄の神不在と、黒の神の帰還にどう対応するのかを話し合っていた。
その表情は、実に愉快そうだった。
「いやいや、ありがたいありがたい。先祖代々、地道にネガキャンをしてきたかいがあるというもの」
「おやおや、そういう言い方は良くありませんな。まるで我らが捏造をしたようではありませんか」
「然り然り、事実を民へ明かすことのなにがネガキャンなのか。やましいところのある者たちが悪いのですよ……」
「それにしても、アキラ様も早まりましたなあ。彼の帰還を大々的に公表して、公的に守る選択肢もあったはずなのに……それをされれば、我らも切り崩しに手間がかかったでしょうな」
「彼女も御年なのでしょう。もうだいぶ気力も萎えておられた……」
この五人にとって、アキラは目の上のたんこぶであった。
絶対的な権力者であり、権威の象徴であり、なによりも死なない。
彼女が何もかもを好き放題にできたわけではないが、彼女の発言に力があったことは事実であり、彼女の意向に反する事柄を進めるとなれば無駄に労力が必要となる。
彼女が消えるのなら、こんなにうれしい話はない。
「もう、イモータルの時代は終わった……これからは、人の時代に変わる!」
「そう、もう長命者に導いてもらう必要などない! 我らは我らの力でやっていける!」
「文明が崩壊したときと違い、多くの兵がおり……今のアキラ様よりも強い戦士さえいる!」
「アキラ様を打倒したであろう黒の神、スサブ……なにも恐れることはない!」
「彼を殺して、新しい時代の始まりを、我らが叫ぶのだ!」
黄金時代の始まりを予想して、彼らは笑う。
しかしながら、彼らは知らないのだ。
最後の神であるアキラがいなくなった今、この都市に未来などないということを。
この都市の文明が、エネルギー源が、彼女に依存していることを、知らないのだった。




