一人ぼっちたちの再会
俺は、スサブという者だ。
性別は男で、年齢は……よく覚えてない。
学歴は、高校を卒業できなかったから、一応中卒ってことになると思う。
ただ、俺が高校を卒業できなかったのは、俺個人の問題じゃない。
俺が高校生だった時に、世界が滅びたからだ。
大昔のゲームでよくあった、最終戦争。それが起きて、日本とかそういう国家が全部滅びた。
もちろん当時高校生だった俺が、何かかかわったわけじゃない。なんか気づいたら戦争になってて、気付いたら世界が滅びてただけだ。
けどまあ、無関係でもなかった。
俺たちが高校生だった時、世界に変な玉がばらまかれた。
漫画やアニメでよくある、これを体にくっつけると超能力者になれますって奴だ。
俺も友達も、それが体にくっついて、超能力バトル的な展開に巻き込まれたりしていた。
当時は、そんな大ごとだと思ってなかった。
日常にちょっとスパイスが加わる程度だと思っていた。
だけど世界全体だとそんなことがなくて……気づいたら世界中で革命やら戦争やら反乱やら暴動が起こって、そのまま滅びた。
それでも俺や仲間は、超能力者になれる玉……超進化宝珠ってやつの力で、なんとか生き延びた。
家族は、まあ……ああ、そういうことだ。
俺たちはそこでようやく、超進化宝珠が何なのか、どこから来たのか調べ始めた。
そんなすぐに見つかるもんじゃなくて、十年とか二十年ぐらいかかった。
そして、真実にたどり着いた。真実にたどり着いたって言うか……超進化宝珠を通じて、犯人が連絡してきたって感じだがな。
笑っちまう話だが、異次元にいる強力な存在が面白半分で地球にばらまいたらしい。人間っていう脆弱な生き物を進化させる力を持った玉は、そいつ自身が作ったんだそうだ。
ばらまいたらどうなるか観測していて、それで滅びたところを見て大爆笑ってなもんだと。
で、調べていくうちに強くなった俺たちに対して、バカげた力の差を見せたうえで……。
『ここまで強くなる奴が出てくるとは思わなかった』
『これからも暇つぶしで干渉するかな』
『それが嫌ならここまでこい、俺を殺してみろ』
って言ってきた。
俺と仲間たちはそれを知って……いや違うな。
仲間の一人が、殺しに行くと言い出した。
正直勝ち目があるとは思えなかったけども、他に行くっていう奴もいたもんだから、俺もついていくことにした。
残って世界を復興させる選択肢もあったし、そっちを選ぶ仲間もいた。だけどまあ、俺が残ってても役に立てないと思ったし、殺しに行くって言ったやつは俺にとって大事な友達だった。
だから及ばずながらもついていこうと思ったんだが……。
ここで、今の俺だ。
RPGのラスボス戦みたいに、壁も天井も床もない、特殊効果だけの空間。
そこには超進化宝珠をばらまいた張本人である、異次元の怪物アザトスの死体と……。
俺と一緒にここまで来た、四人の仲間の死体が転がっていた。
「……嘘だろ、ちくしょう」
俺自身もボロボロで、あと一回殴られただけでも死にそうだった。
だがしっかり生きていて、しばらく休めば体が治るとわかった。
それが、ちっとも嬉しくない。
とんでもなく長い時間、この異次元を進んできた。はっきり言ってしんどかったけども、仲間と一緒だったからなんとかやってこれた。
ラスボスであるアザトスに勝てなくても、自分が死ぬことになっても、覚悟はできてた。
俺みたいなどうしようもない奴が、ここまで来れただけでも満足だったからだ。
だけど、俺だけ生き残るなんて、想定していなかった。
そしてそれが……。
『ふむ……本当に負けるとは思わなかったな』
涙で前が見えなくなっている俺の耳に、アザトスの声が聞こえた。
それは幻聴なのかもしれないが、正確なことを言ってくる。
『そして……生き残ったのが、こいつとはな。いや……これは完敗だ』
聞きたくないことを、こいつは肯定してくる。
『我はお前たちにこう言ったな……我との戦いに役立ちそうもない奴を、なぜ連れてきたのかと。それに対してお前たちは『こいつがいるからここまでこれた、役立たずなんかじゃない』と答えた。正直馬鹿馬鹿しい話だと思ったが……これは己の過ちを認めざるを得ん』
俺たちとコイツの戦いは、本当にぎりぎりだった。
俺があと一回殴られていたら、こいつが勝っていた。
『攻撃力が高いわけではなく、手数が多いわけではなく、防御が堅いわけでもない。そんな者がいても、ちくちく殴るぐらいしか意味がないと思っていたが……そのわずかな差が、結果につながったな』
やめろ、黙れ。
そんなことは、俺だってわかってるんだ。
『一番役に立たないお前を、一番後回しにした。その結果がこれなら……ああ、まったくお前には価値があった。お前がいなければ、私は勝てたのだからな……』
死体になったはずのアザトスは、俺を憐れんでいるようですらあった。
世界を滅ぼしてもゲラゲラ笑っていた怪物に、かわいそうに思われるなんて耐えられない。
『お前たちの言う通り、ここまでたどり着いたものを、見くびるべきではなかった』
そこまで言ったところで、アザトスの声が消えた。
気配と呼べるものまで、きれいさっぱりなくなっていた。
代わりに、仲間の声が聞こえてくる。
『スサブ……聞こえるか? ああ、聞こえているんならいい。俺たちは勝った、こいつを殺せた。それで俺は満足だ』
一番仲が良かった、トドロキの声が聞こえる。
超能力者になる前から友達だった、如何にも主人公って感じの奴だった。
めったなことじゃ謝らないあいつが、俺に謝ってくる。
『……でも、お前は違うよな。本当に、お前には悪いと思ってた。俺が自分勝手にアザトスを倒すと言い出して、お前はそれに付き合ってくれた。お前なら来てくれるって思ってたけど……本当に悪かった』
トドロキ、謝らないでくれ。
俺はお前に謝られる理由がない、俺が死ぬべきだった、お前が生きるべきだったのに。
『おい、スサブ。なんでお前が謝る、お前は何も悪くないだろ』
仲間の一人、イカルの声が聞こえた。
そいつはむしろ、怒っていた。
『トドロキが、シナが、ヨロコが死んだのは、お前がそんなにボロボロになったのは……俺が守れなかったせいだ。俺が守り切れていれば……真っ先に死ななければ、全員が生きて勝てたはずだった』
だけどイカルも、俺に謝っているようだった。
『だから気にするな。お前は悪くない、俺が悪い。それだけだ……気に病むな』
気に病むなって、それは無理だろ……。
気にしない方がどうかしてるだろ。
『あ、あははは! あははは! ははは……ははは……ご、ごめん、最後の別れだから、明るくやろうと思ったけど、そんな空気じゃないね』
今度は、ヨロコの声が聞こえた。
明るい女子で、なんでこんなところに来たのかわからないぐらいいい奴で、いつだって励ましてくれた。
『なんていうかさ……勝ったからいいよ、私は気にしない。スサブが生き残ってくれたおかげで、私たちは胸を張って、アザトスを倒せたって言える。あんなに苦労したのに、こんなクズに負けたなんて、ちょっと耐えられないからさ』
ヨロコは、こんな時まで、励ましてくる。
『だからさ……自分だけ生き残ったことを、気にしないで。私たちにとっては、それだけでいいんだから』
違うだろ、俺が一番価値がなかっただろ。
俺だって、俺以外の誰かが生き残ったなら、それで満足して、お前たちみたいに言い残せたさ。
でも、俺は違うだろ。俺が生き残って、どうするんだよ。
『スサブ君』
最後に、シナの声が聞こえた。
優しい女の子だった、俺にだっていやな顔をしなかった。
彼女だって、死んでいい子じゃなかった。
『きっと、辛いと思う。でもね……自殺とか、そういう悲しいことはしないでね』
ムリだろ、コレ……。
生き恥もいいところだろ、死んでもいいだろ……。
『スサブ君は、生きてていいんだよ。それはずっと一緒にいた私たちが、一番よくわかってる。だから、幸せになってね』
これでこの後、平気で幸せになったら……それはそれでどうかしてるだろ。
『スサブ……俺たちは先に行く。ここまで強くなったからかどうかは知らんが、死後の世界ってところまで行けるらしい』
『ずいぶん長く生きてきた、今更未練はない』
『地獄か天国かわからないけど、何千年でも待ってるからさ。また会おうね』
『私たちはアザトスを倒したわ、今度こそ世界を救ったの。胸を張って……かっこよく帰ってね』
ラスボスも味方も、好きなことを言って消えていった。
改めて、俺は一人。
アザトスの死体と、仲間の死体。
それだけがある空間に、俺は取り残されていた。
「……あ、ああ……」
言っておけばよかった、アイツらへの思いを。
ずっと一緒に戦ってきた仲間に、感謝とかそういうのを言えばよかった。
なんで俺は、駄目なんだ。
クソ……。
「……帰ろう」
俺は、仲間の死体に近寄った。
これはもう残骸であり、仲間そのものじゃない。
これを持ち運ぶような趣味は、俺にもない。
だから、せめて髪ぐらいは持ち帰ろう。
「残った仲間が、きっとどうにかしてくれてる……俺たちが守った世界は、アイツらが立て直してくれてるさ」
あれから何百年たっているのかわからないけども、きっと大丈夫。
あんな化け物に俺たちが勝てたぐらいだ、アイツらだってちゃんとやってくれてるさ。
「ああ……帰ろう」
もう帰れないと思って始めた旅が、帰ることで終わる。
俺は感慨にふけりながら、みんなの髪を切り取った。
そうだ、それはきっといいことだ。
※
※
※
一日ってのは、朝昼晩だ。一年って言うのは、春夏秋冬だ。
異次元空間には太陽なんてものはなかったから、感覚は全くなかった。
それに超進化宝珠のおかげで、俺たちは老化しなかった。
だから年月なんてものは具体的にはわからなかったが、それでも何百年も経っていることぐらいはわかっていた。
奥へ進むほど敵が強くなっていった、異次元の道。
行くときは五人でも大変だったが、そこを逆に戻っていくのは一人でも簡単だった。
それでも結構な年月を要したが、そんなに大変ってことはなかった。
俺は強敵相手にはちまちま通常攻撃を当てるぐらいしかできないが、格下相手にはまず負けない。
いや、これは俺というか、俺を含めた『黒タイプ』の性質だ。
まず超進化宝珠は、宿主に合わせて色を変える。
その色ごとに特色があって、発揮できる超能力に系統があるのだ。
ちょっと大雑把な言い方になるが……。
トドロキは赤で、攻撃力が高かった。イカルは青で、防御力が高かった。
この雑な説明だとちょっと勘違いさせるかもしれないが、だいたいこんなもんである。
で、俺は黒だった。
この黒、RPGとかでもたまにある、『相手を一撃で戦闘不能にする技』を得意とする。
そしてRPGがそうであるように、自分より強い奴には通じにくい。なんなら、同格の相手にだって通じない。
だけど、格下相手にはとにかく強い。異次元の道にいる怪物たちをねじ伏せていくのは、強くなった俺にとって簡単だった。
「考えたくないが……俺とイカル以外だったら、疲れて死んでたかもな……」
自分でもイヤになるくらい、俺はあっさりと故郷にたどり着いていた。
何百年ぶりかに味わう、太陽の光と地面の感触。
まあ太陽の光と言っても、あいにくの曇りなんで光は控えめ。大地と言っても、戦争によって荒れ果てた、草一本生えていない荒野。
戦争前は日本のどこを探してもこんな風景はないはずだったが、戦争のあとはどこもこんな感じだった。
出発する前は忌々しくて、すぐに離れたかったが、それでも見れば感動する。
「……まあ、数百年ぐらいじゃなあ」
と、同時に、がっかりもした。
いや、がっかりだけしたわけじゃない。
たったの数百年で、何もかもが元通りになっていたら。
それはそれで、きっと悲しいだろう。
他の奴なら復興していた方が喜ぶかもしれないが、俺は駄目な奴なのでそう思っていた。
まあ、同時に思うところもあった。
これ、人類が絶滅しているのではあるまいか。
俺たちが出発する前の時点で、かなり人類はヤバかった。
それから数百年経っているんだから、滅びていても不思議じゃない。
ちょっと不安になってきた。
まあ残った奴らも、俺と違ってまともで優秀だったから大丈夫だと思うが……。
「クローンで無理やり増やすわけじゃないなら、数百年で人口が回復するわけないし……結構歩き回らないと、人里につけないか?」
さてどうしようか。
俺は安心したくて、人里を早く見つけたかった。
だがあてずっぽうで歩き回っても、そう簡単に見つけられるわけがない。
そう考えていたのだが……。
「ん?」
ふと見上げれば、分厚い雲が空を覆っていた。
なのだが、その雲を突き破って、何かが降ってくる。
黄色い光の流星が、俺のすぐ目の前に着弾していた。
「高レベルの『黒』反応があったから来てみれば……」
「お、おお……!」
「やっぱりアンタだったわね、スサブ」
「アキラじゃないか!!」
アザトスを倒しに行った俺たち、それと別れて残ったメンバー。
そのうちの一人、アキラがそこにいた。
黄色い短髪、切れ長の目をしていて、背も高い。
如何にもモデル体型の女子が、そこにいた。
ただ顔はちょっと幼さが残っている。
着ている服は女性もののスーツで、正直ちょっと背伸びしているような、外見年齢に合っていない服装だった。
だが俺と同じ年齢のはずなので、少なくとも百年以上は生きているはずだった。
「久しぶりだなあ、アキラ!」
「……スサブ」
長年一緒に居た仲間を一気に失った俺としては、この再会が最高にうれしかった。
何なら、こいつ以外の全人類が絶滅していたとしても、こいつに会えただけで満足なぐらいだった。
「ずいぶん大げさに喜ぶわね、スサブ。見た目と同じように、中身が成長していないのかしら」
「おいおい、相変わらずきっついなあ! そんなこと言うなよ、仲間だろ?」
「まあそうだけどね……」
俺もアキラも、すこしばかりのあいだ、何も言えなかった。
残った方と攻め込んだ方。お互いに仲間がいたはずなのに、一人ずつしかいなかった。
それを言い出すことも、聞きだすのも抵抗があったからだ。
「……それで、戻ってきたってことは、そうなの?」
「ああ、アザトスは倒した。俺たちが、きっちりな」
「そう……それで、トドロキたちは?」
「……」
俺は、何も言えなかった。
俺にできたことは、四人分の遺髪を見せることだけ。
超進化宝珠の影響で、それぞれの色に染まっている髪を見て、アキラは察してくれた。
変な話だが、泣いてはいなかった。だが、悲しそうな顔をしてくれた。
俺はそれだけで十分だった。
「で、アキラ。イズミとヒシメ、ホノオはどうした?」
「……」
俺は俺で、気になっていたことを聞く。
アキラと一緒にここに残った三人は、今どこで何をしているのか。
そう聞いた俺に、アキラは首を左右に振った。
「……そうか」
「文明を復興させ、人類を繁栄させる。その為に頑張って……立派だったわ。私だけが、生き残って……」
「いうなよ、俺も似たようなもんだ」
アザトスを倒そうとした五人で、生き残ったのは俺だけ。
ここに残って復興させようとした四人で、生き残ったのはアキラだけ。
だがそれでも、再会はできた。
俺はもう、それでよかった。
「それで、人類が絶滅した、ってことはないんだろ? 街に案内してくれないか?」
「貴方を?」
「当たり前だろ! 人類を救った英雄様として扱えなんて言わないが、俺にそこいらを歩き回れっていうのか?!」
ここで、アキラは露骨に困った顔をした。
それは、大人の顔だった。
「スサブ……」
「なんだ」
「貴方には、感謝しているわ。いえ、貴方たちには感謝しているの」
「……だからなんだ」
「でもね、スサブ……貴方だけが帰ってくる……それだけは、許容できなかった」
「どういう意味だ」
アキラはここで、俺から目線を切った。
「……異次元に、戻ってくれないかしら」
何を言っているんだ、としか言えなかった。
何百年もかけてアザトスのところにたどり着いて、それで仲間を失いながらも勝って帰ってきて、それで異次元に戻れ?
「なんでだ!」
俺は静かに聞くつもりだった。
だがそれは、叶わなかった。
俺は怒りを込めて、叫んでいた。
「パレードで迎えろなんて言わないさ、お前が来てくれただけで嬉しいさ! でもなんで、異次元に戻らないといけないんだ!」
「もうこの世界に……貴方の居場所がないからよ」
アキラは、心底から申し訳なさそうだった。
だけど、それで納得できるわけがない。
「居場所ってなんだ!! 俺のことを憶えているのは、お前ぐらいなもんだろ!!」
「そうよ……でも、だからなのよ……」
アキラは、頑として聞き入れてくれない。
「貴方たちがアザトスの元に向かった後、貴方と同じ黒タイプの超能力者がとんでもない悪事を働いたの。その結果、黒タイプの超能力者は、黒タイプであるというだけで排除されているの」
「それはまあ、わかるっていうか……俺がいた時もそうだったけども……」
俺自身も、自分がまともだとは思っていない。
仲間以外からどう思われていたのかも、はっきりわかっている。
それでも、俺自身は表を歩けないようなことはしていない。
「俺は、世界救ったんだぞ?! それでもだめなのかよ!!」
俺は思わず、アキラの両肩をつかんでいた。
「世界をあんなふうにした……この地球をこんな風にした元凶をぶっ殺してきたんだぞ?! それでも『黒タイプだから駄目』とか言うのかよ!!」
アキラは、残酷なことをはっきり言ってくる。
せっかくの再会が流れるほどに、残酷すぎる現実だった。
「貴方が世界の為に戦ったこと、アザトスのところへ向かったことは、ちゃんと語り継いでいるわ。歴史の教科書にも、ちゃんと書いてある」
「だったら……!!」
「それでも……もう過去になってしまっているの」
俺は、電撃でも受けたようにしびれていた。
「じゃあ……誰も、もう、俺たちがやったこととか、やろうとしたことを、知っているうえでなんとも思ってないんだな?」
「……うん」
「俺が帰ってきたとしても、他の奴と同じ扱いになるんだな?」
「……そうなの」
「俺がここに残っても、石を投げられるだけなんだな?」
「ごめんなさい」
アキラは、謝ってくる。
こいつが悪いわけじゃないことは、俺だってわかる。
そしてこれを拒否すればどうなるかも、分かりきっていた。
「……わかったが、俺は異次元には戻らない」
俺は、アキラの肩から手を離した。
「俺は、俺たちは……あのアザトスの脅威にさらされない世界にしようと思ってた。でもその結果が、俺たちを昔話扱いするってことなら……俺だって、この世界に配慮しない」
「それはつまり……この時代の子に襲われたら、反撃するって意味よね?」
「そうだな」
「……そりゃそうよね」
アキラは闘争心をむき出しにして、俺と向き合った。
「スサブ、貴方は間違っていない。それに私だって、貴方が正しいと思う。でも私にだって、立場ってものがあるのよ。友達が相手だからって、法を犯している者を許すわけにはいかない」
アキラは、俺へ宣戦布告した。
「貴方が出ていかないなら、戦うしかないわね」
「そうか」
こうなるとわかっていて、俺は出ていくことを断った。
ああ、まったく……俺は駄目な奴だ。
「一応言っておくけどな、ここを出ていったときの俺とは違うぜ?」
「それはお互い様でしょ……じゃあやりましょうか」
だがここで退いたら、俺は死んだ仲間に顔向けできない。
あいつらは俺に価値があると言ってくれた、だからここで自分をないがしろにはできない。
「そういえば聞き忘れたな……あれから何年経ってる?」
「三百五十年よ」
「……そうか」
「もういいわね……死になさい!!」
三百五十年ぶりに再会した仲間から、殺されそうになってる。
それが三百五十年っていう月日そのものが原因だって言うんだから……本当に、笑えなかった。




