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35.あなたたち! 覚えてらっしゃい!

「今日、ここへ来るのも随分迷いました。

 でも、来てよかった。

 やっぱり、姉様達はおかしなことなんてしていなかった。

 ちゃんと、女神フローラの御下から私達を見守ってくれている。

 それが明らかになったのは、あなたの勇気のおかげ」


 イザベルはアンナに微笑む。


「あなたは、事件当時も出来る限りのことをした。

 そして、隠れていればやり過ごせるのに、過去に立ち向かった。

 マリー・テレーズ様は、あなたを悪く思ったりなんてしていないわ。

 だから、助けてくださったのよ」


 ね、とイザベルはアンナの顔を覗き込んだ。

 しかし、アンナの瞳はまだ昏い。


「あ! そうだ、マリー・テレーズの手紙は?

 アンナに宛てた手紙があったじゃないですか」


 ノアルスイユは手紙の件を思い出して声を上げた。

 まだ渡していなかったようで、慌てて管理人が持ってくる。


「私にお嬢様が手紙を?」


 震える手で手紙を受け取ったアンナは、一読すると「お嬢様……お嬢様……」と切れ切れに繰り返しながら、また激しくむせび泣いた。

 そのアンナを優しくイザベルが慰める。


「アンナ。もしなにか、つぐないがしたいのだったら、うちの修道院で、しばらく孤児院を手伝ってくれないかしら。

 あなたなら、子どもたちに刺繍や作法を教えることもできるでしょう?

 正直、手が足りなくて、毎日毎日大変なのよ。

 落ち着いたら、もとの暮らしに戻っても良いし、そのまま女神フローラにお仕えする道を選ぶなら、私が推挙状を書くわ」


「は、はい……

 ありがとうございます」


 ようやくアンナは、涙をぐいと拭った。


「じゃあ、私達はこれで失礼しましょうか。

 カタリナ様も参りましょう」


「今日は本当にありがとうございました。

 馬車でお送りしますわ」


 腰を上げたカタリナに、イザベルは違う違うと手を横に振った。


「いえいえ、送っていただくのではなくて……

 私がカタリナ様に協力したら、十日間、修道院で静修をするとお約束いただきましたよね。

 まさか、誇り高きサン・ラザール公爵家のお嬢様が約束を違えるなどということはないでしょうけれど、お忙しいカタリナ様のこと、一度お屋敷に戻ってしまったら、なかなか時間が取れなくなるでしょう?

 ぜひこのまま、お越しください。

 お父上にも、ご了解いただいておりますから」


 イザベルの口調は朗らかだが、眼は全然笑ってない。


「いいいいいいつの間に、父と!?

 じゃなくて、わたくし、こんな格好ですし、着替えも用意しておりませんし!?」


「大丈夫、大丈夫。

 私もアンナもおりますから、その素晴らしいドレスも綺麗に脱いでいただけます。

 静修の際は、下着からなにから、こちらでご用意するものを身に着けていただくのですから、なんの用意もいりません。

 御身ひとつでいらしていただければ」


 イザベルはぐいぐい行く。

 カタリナを逃すつもりはないようだ。


「え? え?

 でも、じきにセニュレー侯爵家の執事かなにかくるでしょうから、対応しないといけないし、どういう記事にするかソレルともっと打ち合わせをしておかないと」


 おろおろっとカタリナが周囲に助けを求める。

 こんなカタリナは、初めて見た。

 ノアルスイユは思わずニヤニヤしてしまった。


「侯爵家の対応はこちらで引き受けよう。

 結構な時間になってしまったし、戻るのは早朝の方がいい。

 それにこの件、私が噛んでいると、セニュレーに早くわからせた方がいいだろう」


 普段、カタリナに振り回されがちなアルフォンスが、めちゃくちゃ朗らかにイザベルを後押しした。

 侯爵の弟が危篤と聞いて慌てて駆けつけたら、王太子がひょっこり出てくるとか、執事が腰を抜かす予感しかしない。


「打ち合わせも、馬車の中ですれば十分でしょう。

 大筋を詰めておいて下書きを送ってもらえば、後は修道院でチェックすればよいのでは」


 ノアルスイユもこの際乗っかっておいた。


 カタリナは、すがるような視線を記者に投げるが、記者はこの流れで逆らうとか無理ですと言わんばかりに、ぷるぷる首を横に振っている。

 管理人も、一緒になってぷるぷる首を横に振っている。


「さ、参りましょうカタリナ様。

 善いことをするのに遅すぎるということはないけれど、早ければ早いほど、女神フローラはお喜びになります。

 アンナ、あなたはそちらを」


「はい、イザベル様」


 にこやかな笑みを絶やさないままイザベルがカタリナの右肘をがしっと取ると、アンナが左肘をしっかり取り、カタリナは玄関へと連れて行かれる。

 ホールを通り抜ける時、イザベルは表情のない眼で、救護を受けているシャルルを一瞥した。

 アンナは顔を伏せ、足を早める。


 クリフォードがサン・ラザール家の馬車を呼び、アルフォンスとノアルスイユは、三人が乗り込むのを丁重に助けてやった。

 記者も挙動不審に乗り込んで、扉を閉める。


「あなたたち! 覚えてらっしゃい!」


 カタリナの悪役のような捨て台詞を残して、馬車はパカポコと修道院へと向かった。


カタリナ「どうしてわたくしがこんな目に!!」

ノアルスイユ「自業自得では…と思った方はぜひ『いいね』をお願いいたします!」(眼鏡くいいいいい)

アルフォンス「どのくらい読者の皆様がいいねをくださったか、完結一週間後くらいにお知らせしたいものだね」(にっこり)

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