ある冒険者の恒久的活動記録
やあみんな! 俺はテオス・シェンと言う。
性別男、年齢不詳の冒険者だ。
アンジとエンジのお供二人を従えて、各国の問題を片づけている。
問題の内容は様々で、ある時は人々の希望を背負う勇者様を支援する軍団の中に紛れている。
この勇者一味を魔王ゴルンへたどり着かせて、平和を勝ち取るために協力をするのだ。
「善なる神シャンよ! 貴方のご加護を僕のパーティーと支援する味方達にお授けあれ!!」
そう言うと彼らは自分達を奮い立たせて魔王城に突撃する。
結果を言うとパーティーと軍団に負傷が出ただけで、不思議と死者は出なかった。善の神様も少しは働いてるらしい。というより大変な苦労をしている。
「すげえよ大勝利だ、一人も死ぬことなく勇者様を敵の本拠地へ送り出せたぞ」
「みんなテオスさんのおかげだぜ! 強い魔物はあの人だけで倒しちまうし
魔物が攻撃して危ない味方は全部テオスさんが守っちまうからな!」
「おおその通り!
英雄テオスと善神シャンに栄光あれ!!」
みんなの感謝にシャンも喜ぶ事だろう。だが正直言うと俺はそこまで大した事はしていない。
強い魔物と言ったがあくまで彼らから見た場合であり
俺からすれば、せいぜいスライムとそん色ないレベルなのだ。
つまり塵芥と変わらない。
「テオス様ほらほら急いでください、あの勇者達では返り討ちになるだけです」
「そうですよ、おぜん立てのために人類軍に紛れ込んだんですから」
うるさい奴らだ。
そう思いながらも俺は自分の仕事を片づける。
勇者パーティーより先回りして、魔王の小うるさい四天王をやっつける。
俺に偉そうに口上を垂れる魔王には、死なない程度の重傷を与えてやった。
おっといけない。魔王が勇者達へ俺の事で余計なことを言わぬようにしないと。
魔法で制約をかけておくとしよう、コレでいい。
その後━━
俺の目論見通り、勇者達は世界を救った英雄として名を残す事になる。
俺はあくまで歴史の裏で動くだけだ。
彼らに悟られてはいけない。
まったく面倒な事だな、慣れたけど
▽
ある時は二百年前に賢者が封印した邪竜が世界によみがえり神が作りし世界を滅ぼそうとした。
アンジ、エンジそれと、たまたま仲間になったラキ・ガリューの四人で邪竜を倒すクエストをする俺。
「テオス様、やはり私には無理です」
「あきらめるなラキよ、向こうも苦しいのだ。大丈夫! この俺が支える限り善なるお前に負けはない。
シャンよこの勇氣ある少女に力をかしたまえ!」
俺はラキが握る杖に手を添える。
そうする事で突如ラキがかざす邪竜封印の杖が強く輝き、邪竜を粉々に吹き飛ばした。
功績はラキへ譲り俺は彼女と幸せな夜を過ごす。
「私一人では無理なクエストでした。テオス様は不思議な人です、困った私の前に現れて何も言わずに手を貸してくださいました。
貴方はきっとシャン様の使いなのですね。
……また会えますか?」
「約束はできぬ。だが善神シャンは何時でもお前を見守っている」
俺はラキに別れを告げて、彼女は「テオス様の力を必要とするものは大勢いるのですね」
と寂しそうにうなずく。
仕方のないことだ。俺は歴史の影に潜みながら、力及ばずとも邪悪と戦う善の者達を助けてやらないといけないのだから。
「テオス様落ち込まないで下さい。きっとラキとあなたの子が新たな勇者となり人々の希望に育ちますよ」
アンジとエンジめ、業務連絡口調で言うんじゃない。
俺はこれでも落ち込んでいるのだぞ。
▽
ある時勇者のレベルではどうしようもない存在。
邪神とはこの俺が直接戦う事になる。
ここでいう直接とは功績を譲る者がいないという意味も含んでいる。
「このわしが……こっ、こんな若造に敗れるとは。長き眠りで力を蓄えて、神に成り代わり世界を支配するわしの計画を。
よくも! よくもクソガキの分際でっ……!」
俺は倒れ伏してる邪神の顔を踏みつけて言い放つ。
「誰がクソガキだ小僧が! おおかた伝説の魔王の真似をして神界に攻め入る氣だろう?
神殺しの魔王テイオスが神界でどうなったかも知らぬひよっこが、主なき魔界を牛耳り魔王を僭称するなど不届きにもほどがある。
よって俺が貴様に罰を下す!」
俺はあ・あ・あ……あなた様はぁ~と情けない声を出す邪神を一撃で葬ると、お付きの天使アンジとエンジに下界でのクエストが残っていない事を確かめて神界に帰る様にする。
千年前、かつての魔王テイオスは神界で神を殺し世界を掌握する。
理由は若さゆえの幼稚なもので、支配者になりたいからだった。
神を倒したまでは良かったが神のいない世界はシステムが破綻し無に帰ってしまうのだ。
慌てる俺は|俺が倒した魔王《実はこいつも神殺しの魔王》の後を継ぎ三代目の神となって、この世界を見守っているというわけだ。
「本年のクエストはすべて終了ですお疲れさまでした。
テイオス様いいえ、三代目の善神シャン様」
こいつ等はシステムに過ぎず仕える相手の素性はどうでも良い。
俺が消えても新たな神に仕えるだろう。
俺には皮肉に思える天使の声が聞こえた。
とほほ……。
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