第七話
寮生活はなんとも充実したものだ。
幸い……と言ったらあれだけど、王子や王女と別! コレ大事!!
いやまあ身分差があるからね、さすがに私のような平民と同列の寮になんて生活された日には護衛の兵士で寮が埋まっちゃうもんね、仕方ない仕方ない。
何よりいいのがイナンナの家近くってところよ!!
イナンナのご両親が営む雑貨屋さんは文具が中心だけどちょっとした食料品なんかも売っていてすごく便利。
私が利用していた宿屋さんも食堂代わりに来てねって言ってくれたし、色々幸先いいわあ……コレって私が美少女だからかしら?
いいえ、前世の徳ってやつかしらね! なんも覚えてないけど!
(それにしてもクラス分け、とんでもなかったわね……)
この学年の一年次は学力順じゃなく、身分でクラス分けされることになっている。
それはこれまでの生活環境の違いから生まれる意識の違いで生み出される諍いを少しでも減らすためだ。
その上で学力や実技で個々の実力を明確に示すことで、次第に互いに歩み寄れる……ということになっているというか、そこで傍若無人な振る舞いや自分の実力のなさを身分差でどうこうしようとする人間はオトされる、まあそういうことだ。
怖いナー人間怖いナー。
(吸血鬼くらいみんなのんびりしちゃえばいいのに!)
大抵のコトじゃ死なないし、食事はするけど最悪そこらの自然から分けてもらうんで済むから争ってどうこうする必要もないのよね。
なんなら睡眠だって頑張れば一ヶ月くらい寝ないでもいけると思う。本を読んでいるとそういうことあるし。
(……そう考えると長寿な上に温厚でエコな生態系よねえ、吸血鬼)
なのにこんなに怖がられちゃって!
悪の権化みたいに言われる度に私の繊細な心が傷ついちゃうわ……。
まあ、それはともかくかくとして。
そういうわけで王子と王女は勿論一緒のクラス、そんでもって王子の護衛というハルトヴィヒって人が同じクラス。
王女の護衛二人は平民らしくて、そこは忖度が働いたのかスィリーンさんが一緒らしい。
で、私と同じクラスにジャミィルさん。
イナンナは残念ながら隣のクラスでしたよ! トホホ……。
(……ハルトヴィヒに比べればジャミィルは私を最初から敵視していない、だけどそれをまともに受ける方がだめよねえ。仮にも王女様の護衛、そこそこの実力があって当然と思わなきゃ)
私は温厚だし? 美少女だし?
争いなんて嫌いだけど、吸血鬼ってだけで世間は許しちゃくれないなんてこの理不尽な世界を生きるにはやはり地位向上を図らねば。
私は実家の本を読み尽くしちゃったから、これからも本を読みたいのよ。
私も私でやっぱりウィクリフ一族なんだなあって思っちゃったりなんかしてね。
色んなところも行ってみたいし、本も読みたいし、美味しいもの食べたいし、本も読みたいし、友達もほしいし、本も読みたいの。
勿論、恋だってしたい。
吸血鬼だからってあれこれ諦めたり、しょうがないよねって見なかったことにするのはいやだもの。
やれることはやらなくちゃ。
(よし! 明日からの学校生活、頑張ろう!!)
この美少女フェイスがあれば大丈夫!
特に理由はないけど、私はそう信じているよ!!