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第六話

「やあ! きみが三位にいた子か! どんな子か会ってみたかったとちょうど話題にしていたところなんだ」


「折角ご一緒できるのですもの、よろしければこの後お茶でもいかがかしら?」


「ア、ハイ」


 どうしてこうなるんだ、どうしてこんなところにいるんだよ王族!!


 おかしいなあ、私、学園が持つ寮の中でもお安いところを紹介していただこうとだね……苦学生を演じて他にも優秀な民間出身の学生とかと知り合っておいて、反感を買わぬよう友情を築きつつ貴族層たちからも支持を得て最終的に王族へ紹介してもらう……という計画が台無しなんですけど!?


「改めて自己紹介をさせてくれ。僕はカタルージア王国第二王子、アイネイアス=ドゥンケル・マイネモーテ・カタルージアだ」


 私に負けず劣らず長い名前だな、ところどころ古語が使われている辺りはさすが王族ってところかな?

 確かカタルージア王国は小国が互いを守るために身を寄せ合った結果、残った最後の王国の王をトップに置いたから代々名前が受け継がれているとかそういう話を聞いた気がする。

 王家には特別な力があって、それは多くの血と交わったからだとかなんとか……。

 アレは誰に聞いたんだったかな、叔父さんだったかな……?


「わたくしはサタルーナ王国の第一王女、ミアベッラ=フラミーニアと申します。どうぞ、ミアと呼んでくださいな」


 対するサタルーナ王国はかつて女王が聖女だったということもあって、男女関係なく王位継承権があって王家の血を大切にしているという、閉鎖的ってわけじゃないけど開放的ってわけでもない国だったと思う。

 その上、山に囲まれた国ということで天然の城塞と豊かな自然を元に軍事的に力を溜めている国だっけな。

 王家の血筋を守る以外は、実力主義者って話。

 確かおばあさまが聖女と会ったことがあるとか言ってたんだよなあ。小娘が云々って。


「は、はあ……マリカノンナ=アロイーズ・ニェハ・ウィクリフです。よろしくお願いいたします」


 とりあえず愛想笑いをしておこう。

 私に今できるのはそのくらいだ。


「それとあれは僕の護衛で、同級生にもなるんだがハルトヴィヒ・ヌルメラ」


「あちらはわたくしの護衛で、男性がジャミィル・ブランドン、女性がスィリーン・ブランドン。この二人は双子ですの。やはり同級生となりますから、どうか仲良くしてやってくださいまし」


「はあ」


 少し離れた所にいる護衛の男性二人と女性一人が私にぺこりと頭を下げる。


 ハルトヴィヒって人は人の良さそうな赤髪の好青年だけど、いつでも腰に佩いた剣にいけるよう手をやっている。

 対するジャミィルとスィリーンは双子って言われてもあまり似てないな、美形ってところは同じだけど。

 黒髪に黒目、褐色肌。異国の血が混じっているからか、余計に目つきが鋭く見える。


 せめて、睨むの止めて挨拶しろと言いたいところだ。

 まあ彼らからしたら大事な護衛対象に見知らぬ女が近づいて不安なんだろうけどさ。


(むしろ私の方が近づかれてビビってんだけどね!)


 まあ私も年上のレディとしてね? そんな動揺してるとこなんか見せないけど!


「それにしてもマリカノンナさんのお名前、随分と古めかしいけれどどこの貴族の方かしら。寡聞にして存じませんけれど、お伺いしても?」


「ああ、いえ。古い家だとは聞いていますが私の出自は平民ですよ。サナディアから来ました」


「まあ。ウィクリフとは古語で『書を綴る』という意味ではなかったかしら? 大事なお役目にある家かと……」


「いやいや、そんな」


 ぶっちゃけると家名なんてモンは私たちには記号みたいなモノなんだよなあ。

 他の種族とか、一族からあそこはどんな家だよって言うので『書を綴る』って呼ばれてるからウィクリフってだけの話。


 吸血鬼一族が大体ウィクリフだわ。

 遠くの物事を聞きに行くよりも聞いてそれを書にまとめたらまた聞きに行かなくていいっていうものぐさ爆発の結果だよ!

 笑うがいいよ!


「サナディア! それは遠くから来たんだな、是非今度話を聞かせてくれないか!」


「いいですよ」


 王女……おっと、ミア様は私のことを値踏みするような視線で見ているけど、王子の方は無邪気な様子だ。

 でもこういうタイプの方が、勘に優れているっていうし……バレないように気をつけなくちゃ。


(さてはて、これからの学園生活が無事にいくかな……?)


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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃー、並み居る貴族を押しのけて、 平民(自称)が3位にくい込めば気になりますわなあ。 悪目立ちしちゃいましたねえ。 この自己紹介で初めて名前をお互いに知った、て事は、 受験の合否は番号で…
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