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折角できたオトモダチをなんとかして助けてあげたい。
だけど正体を明かすのは躊躇われる。
そんなとき、どうする?
いやあ、思いつかないよねそんなん急に言われてもさあ!!
「ってワケなんですけどセンセイどう思います~?」
「おやまあ、学生らしい相談でもしてくるかと思ったら面倒な悩み事だねえ」
「生徒が悩んでるんだからそこは教師らしく助言ください」
「内容が学園のことじゃないから却下」
「複数の生徒に関わる問題だしなんだったら学園にも影響するじゃないですかーやだー」
「棒読みすぎて笑えないね」
センセイは優しげな笑みを湛えたまま、ばっさりと私の縋る気持ちを切り捨てる。
いやまあ棒読みは本当ですけど。
だってなんも手助けしてくれないんだろうなーって予想はしていたのでね。
そもそも、エルフ族だって聖女召喚とかについての情報がどこかで出てしまわないか、その事実自体を隠したいわけじゃないけど悪用する連中がいないかを見張る役を買って出ているわけだ。
ついでに人間族との渉外役ね。
見た目と物腰が中身とは反比例しているから都合がいいんだよね。
あ、いや性格が悪いって意味ではなく。
(その代わり、他の種族はエルフ族に対してそれなりに労力とか資源を提供しているからお互いさまなワケで……)
我らが吸血鬼一族は穏やかに本を読む暮らしを手に入れた代わりに、世界の記録係としての役割を担っているわけだ。
それがいつ、なんの役に立つのかは知らない。
でも今回ミア様が知りたがったように、いつか誰かが大切な理由を知るためには必要なのかなって思う。
知った後のことは、それを求めた人次第なんだろうけど……。
(でもなあ、やっぱりほっとけないよねえ……)
おじさんはジャミィルはまだマシだって言っていた。ハルトヴィヒはまだだめだって。
じゃあ、いつならいいのって話なんだよなあ。
ジャミィルに相談してみてもいいけど、それって彼にだけ負担が行くじゃない?
それにそれだとミア様側に有利に働くっていうか、イアス様のフォローは誰がすんのよって話で……うん、いざとなったらおじさんが動くんだろうけど。
これまでカタルージア王家の危機に預言だの不思議な現象だのを起こしていたのはおじさんだし。
やり過ぎて離れていたとはいえ、今回は近くにいるからね……多分、気を配ってはいると思うんだよ。
「センセイはさ、人間族と交じって暮らしてて窮屈にならない?」
「まあ私はエルフだって隠さないでいいからねえ」
「そっかー……隠さないってやっぱり、楽?」
「そうだねえ」
机に突っ伏してしまった私の頭を、センセイがそっと撫でた。
その顔はとても複雑そうだった。
「いいことばかりじゃ、ないかもね」
多分、それが答えなんだろう。
結局、言っても言わなくても変わらないのかって私は余計に頭を悩ませるしかできない。
「いざって時は記憶の改ざんを……」
そうだよ、言っても言わなくても変わらないなら正直に話してしまえホトトギス。
最悪、洗脳しちまおうぜ!!
「物騒だな、キミ」
センセイがドン引きしてたけど、私は悪くないと思う。
え? 悪くないよね。
だってお互いのためなんだからさ! これは正当防衛だ!!




