40
女子会で得たことは、私が思いの外鈍感だったって結論くらいかな!
あとは楽しくオハナシしてご飯食べて終わったよ……。
「おじさんはどうして異種族の彼女作ったの?」
「直球だな」
「こういうのは逆にボカした方が辛いかと思って」
「……そうだなあ」
おじさんは、苦笑しながら自分の恋物語を聞かせてくれた。
イアス様のご先祖にあたるその女性は、当時の王家では厄介者扱いだったそうだ。
当時、まだ奴隷制度があったらしく周辺諸国から攫われた女性や、敗戦国から連れて来て下働きとかをさせていたんだってさ。
そしてそのうちの一人に、王様が産ませた娘――それがおじさんの恋人で、イアス様のご先祖ってワケだ。
「連れて逃げようと思ってたよね」
出会い方は教えてくれなかったけど、おじさんは想いを告げられた側だったらしい。
今の私と同じだね。いや私は告白されてないけど。
それで、何度断っても伝えてくる彼女におじさんは諦めて『自分は吸血鬼だぞ』って脅したんだってさ。
「それでも怯まなくて……ああもう、連れて逃げるしかないなあと覚悟を決めたんだよ」
当時の王族ってのは側室、愛妾、側女って感じでたくさんいたらしい。
だから子供もたくさんいた。
そのうち、身内で争い合うようになって殺し合い、そしてそこに疫病が発生し、全員死んでしまった。
……彼女を残して。
「それで彼女は残ったの?」
「俺が残るように言ったんだ。彼女のことはずっと傍で見守っていたよ」
「……ふうん」
吸血鬼は、繁殖意欲が薄いと言われている。
だから生殖活動をするとき、より繁殖意欲が強いほうに種族が引っ張られると言われていて……その中でも吸血鬼は特殊で、選べる。
それは男女関係なく、自分の子供はどちらがいいのか、親の吸血鬼が決められるのだ。
双方の資質は受け継がれるものの、この場合はおじさんが『生まれてくる子は人間で』って強く願ったからカタルージアの王族は、人間だ。
勿論それは一度定めたら覆せない。
「彼女は、家族に恵まれなかっただけで……カタルージアという国を大事に思っていた。彼女こそが、王に相応しいと俺は思ったんだ」
そして人として命尽きるときに攫うからと約束して、泣く泣く別れたのだという。
といってもちょくちょく、会いには行っていたらしいんだけど。
「……最期のときに迎えに行ったんだ」
だけど彼女は手を取らなかった。
自分は国と結婚したつもりで、子を育ててきた。
きっとこの国は愛に護られていくだろう。
吸血鬼の血が混じって強くなったからじゃない、愛された女の子供が、強い力を授かっただけだ。
そしてその愛を胸に、自分は国と結婚し、女王となったのです。
今更自分だけの幸せを望んでは、神に誓ったことが嘘になってしまいます。
だけど、愛していました。
ずっとずっと、愛していました。
そう言ってくれたその人を看取って、おじさんはしばらく国を、自分の子を、孫を見守り続け、時には助言をってそれか預言!!
まあなんとなく察してたけど!!
「ただそれが原因でちょっとねえ、王家の人たちがなんでも預言頼みになっちゃった時代があって。ちょうどマリカノンナが生まれた頃だったかなあ」
「あー、それでサナディアに戻ってきたってことね……」
旅に出てたんじゃなくて、滞在してたのね!
……いやしかしやっぱり異種族間の恋愛って難しそうな気がするなあ。
「さて俺の体験談は話したけど、結局はどのくらい相手がお前のことを本気かで変わるだろう。そしてお前がそいつの手を取るかってだけの話だ」
「……うん」
「別に俺みたいに寿命を待ってから吸血鬼にしてもいいし、最初っからそうしてもいいと思う。そこは相手と相談すりゃいいしな」
「うん?」
「誘拐はダメだぞ。同意が大事だからな!」
「ううん?」
おじさん、なんかいいこと言ってたはず何だけどね?
色々台無しになったって、気づいてほしいな!
……しかし、そうか同意か。
そもそもそうなると、ますます遊びの恋なんてするもんじゃないって思っちゃうな。
私が吸血鬼でもいいって人と本気の恋が出来れば一番なんだろうけど……。
「いやそもそも遊びの恋とか本気の恋って、なんだ?」
私、恋がわかんねえや!




