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そして私が取った行動、それはスィリーンとイナンナを呼び出しての女子会である!!
驚くべきことに、スィリーンとイナンナって仲良しなんだよね……正反対のタイプだからかしら。
スィリーンは元々私のことを探るためにイナンナに近づいたら仲良くなっちゃったって感じらしい。
ちなみに私に対してもあんなに警戒したりミア様に刃向かった!って猫みたいに威嚇していたスィリーンだけど、私が囮役を買って出てさらに相手を昏倒させたと聞いて『ただ護られること前提の馬鹿女じゃない』って見直したらしい。
うん。ジャミィルがフォロー役になる理由がわかった気がする。
それはともかくとして、二人とも私の呼び出しに快く応じてくれて晩ご飯を一緒に食べることにしたのだ。
呼び出した理由は勿論、ジャミィルとハルトヴィヒの変化についてである。
「……どう思う?」
「ただのアプローチじゃないの?」
「そうね、ハルトヴィヒの方についてはわからないけれど、ジャミィルはそうだと思うわ。双子の妹である私が保証する」
スィリーンによる断言に、私は眉がよるのを感じた。
いや、うん。
あの二人が嫌いってワケじゃない。イケメンだし、気遣いもできるし、真摯だし頭もいいし? いうなればパーフェクトだろう。
(でもなあ)
軽い気持ちで……なんてできるはずもない。
というか、そういうのを現実にしてようやく私も種族の差ってものを考えたのだ。
愛があれば種族の違いなんて……というのは簡単だけど、実際のところは隠して数年お付き合いしたらサヨナラってパターンで恋愛を楽しむくらいなもんだろうと思っていた。
ううむ、持てたいのは事実だ。
だけど……だけど、私は恋愛相手をそう簡単に『思い出』にできるほどドライじゃないのだと気づいてしまった。
「……そう簡単には考えられないなあ」
ぽつりと言葉した声は、自分のものながらひどく頼りなかったように思う。
でもだってそうでしょう?
もし『好きだ』って言われたら嬉しいと思うし、お付き合い……ってなったらそれはちょっと現実みがないけど恋人はほしいって思ってるわけだし付き合ってみてもいいと思うんだ。
でもそれでお互い『好き』ってなったとき、私はずっと隠し事をしていることに対して苦しくならないだろうか?
そのさきを、求めてしまわないだろうか。
ただでさえ友人として気の置けない関係になってき始めた……と勝手に思っていただけに、そこでこんなことになったらもう元には戻れない気がする。
「そりゃそうよねえ、友達だと思ってたんなら当然だわ。ただ、ジャミィルは割と早めから貴女のこと意識していたと思うわよ? そうね、あたしたちの提案を却下したところから」
「相当最初の方だね!?」
「ジャミィルはミア様のことを護ってはいるけど、あたしと違って忠誠を誓っているわけじゃないの。そもそも、ここを卒業した後は……別の誰かの従者になるって親は思っているし」
「そうなの? 先まで決まってるんだねえ!」
「イナンナが感心するような話じゃないわ。親が勝手に道を決めてるってこと。ジャミィルが別のことを考えるなんて、親はこれっぽっちも考えてないんだから」
「……そ、そうなの?」
イナンナは普通に先まで見据えて行動しているんだなあって感心していたらしい。素直か!
まあそのくらいの感覚が普通だよね、おそらくスィリーンたちの家の方が特殊じゃない?
従者として生きて、子供もその道を選ぶのが当然って……まあある意味安定した就職先があるってことだからそれはそれでいいとは思うけど。
「でもジャミィルはもっと広い世界を見たいって昔から言ってて、色んな……サタルーナは、ほら、旧い国だからね。しきたりとか多いから、それを窮屈に思っていることもあるし」
「そうなんだ?」
「だから貴女みたいに型破りの子は元々ジャミィルの好みなのよ。見た目とかじゃなくて」
「……褒められてる気がしない!」
うん、褒められてる気がしない!!




