表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/65

第三話

「そうだったんだあ……大変だったんだねえ」


「でもないわ! 乗合馬車をいくつか乗ってくるのも色んな景色が見れて楽しかったもの。途中に出会った人たちが親切だったおかげだとは思うけどね」


「ふふ、マリカノンナちゃんが可愛いからかなあ」


「そんなことも……あるかなあ?」


 褒められて悪い気はしないがここは謙遜のために否定しておこうかな? なんて思ったものの、逆に卑屈と取られては困るので私は曖昧に微笑んだ。


 初めてのお友達であるイナンナの実家はこの学術都市ロナーンでお店を構えているらしく、私はお腹が空いたと訴えて美味しくて安いお店を紹介して貰ったのだ。

 やはり人徳。

 私の美少女っぷりがなせる人徳……!!


「それにしてもね、マリカノンナちゃんがあんまり綺麗だったから、その、わたしてっきりどこかの貴族かと思って……話しかけたら怒られないかなって心配だったんだあ……」


「さすがに声かけただけで怒るような人はいないんじゃない?」


「そうでもないよう、お店とかでも結構見かけるんだよ? ほら、このくらいの時期になると入試でこっちに来て暮らしの準備をするのに物入りであちこちの商店に声をかけるみたいなんだけど、時折この時期からオーダーメイドの家具とかを注文する人がいるから……」


「えっ、無理でしょ」


 っていうか合格できる自信があるならもっと前から注文しとけよって話じゃない?

 ぎりぎりまでわからない程度の自信なら、大人しく売り物の家具で我慢しなさいよと私は思っちゃうね。


 それでもブルジョワって思っちゃうのに!


 私の言葉にイナンナも苦笑しながら頷いている。

 うんうん、持つべき者は庶民的感覚を共有できる友達だよね……!!

 

「うん。だから断るんだけどね、そうすると『平民のくせに生意気だ!』って……」


「最悪う」


「まあ、お金持ちなのには違いないからありがたいと言えばありがたいんだけどね。そういえばマリカノンナちゃんはどこに泊まるの?」


「ん? うーん、どこか安い宿を探して……って思ってたの。お勧めあったりする?」


「それならうちの近くにある宿屋さんがいいよ。女将さんがとっても親切な人なの」


「じゃあそこにする!」


「マリカノンナちゃんは本当に綺麗だから、人攫いとかに気をつけてね?」


 ものすごく真面目に言われてしまった。

 まあ確かに私のこの金の髪も紫のくりくりしたおめめも?

 スレンダーボディもなかなかのモンだと思いますから?

 同性であるイナンナが繰り返すってことはやっぱり自信を持っていいと思うんだよね、前世の感覚に引っ張られた美的感覚ってだけじゃなくて、世間一般でも通用する美少女ってことだよねコレは!!


 それにしても人攫いとは物騒な。

 人間の社会ってこんな発展している都市でも物騒なの?

 吸血鬼の里なんて人にすれ違う方が稀だから、まずもってこの通行人の数に私は驚かされっぱなしなんだけど?


「人攫いとかあるんだ……」


「この時期、マリカノンナちゃんみたいに遠くから来る子も多いでしょう? 受験期ってこともあって、そのまま行方不明扱いにされちゃう子がいるんだ」


「気をつける」


「あ、でもね! よっぽどじゃなければ大丈夫だよ! 学術都市の騎士隊がいてくれて、強くてカッコイイんだ。だからそうそう遭遇なんてしないよ、大丈夫。怖がらせてゴメンね」


「ううん、心配してくれたんでしょ?」


 それにしても騎士隊か。

 私が吸血鬼と知られたら、それってもしや狩られてしまう……!?


(ひぇっ……)


 気をつけよう。

 やはりこの都市で何かしらの功績を挙げて、私は自分の身を守らなくてはならない。

 名声こそが私を救うのだ!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マリカノンナは金髪紫目なんですねー。 吸血鬼と人攫い、どっちが騎士に取り締まられるやら。 過剰防衛しなければ、吸血鬼はセーフかなあ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ