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(……ジャミィルが変なこと言うから妙に意識しちゃうな)
彼氏の一人や二人、この学園生活でゲットだぜ! くらいには思ってたけどさ……。
いざそんな雰囲気になるとどうしていいか正直わからんのよね!
それにしてもジャミィルめ。顔がいい。
(……いやいや、それだってサタルーナのためかもしれんし)
聖女召喚に関することはだめって言ったから、搦め手できたかもしれないし!!
ってのはちょっと考え過ぎかなあー。
あっ、そういえばサタルーナの聖女についてひいおじいちゃんに手紙出すの忘れてた。
後でおじさんに頼んじゃおうかな、もう。
とりあえずそんな感じで余計なことを考える隙がなかったおかげか、私はジャミィルを見ることができないままなんにもバレることなく放課後を迎えたのだった。
センセイと一緒に図書室で待機していたおじさんと合流して、改めて紹介。
そしてセンセイから例の説明をされ、ジャミィルがおじさんのことを知っていたことについて『そういうことを話したことは先に言っておいてくれないと』って小声で言われちゃったけどそれはまあごめんなさいってことで!
あの爆弾発言のせいでこっちもいっぱいいっぱいなんですよ!!
まあそれはともかくとして、イアス様もミア様は昨日のレストランでスィリーンを置いて待機。
ハルトヴィヒとセンセイ、ジャミィルとおじさんがそれぞれ路地の入り口・出口に待機。
一応計画はこうだ。
ハルトヴィヒとセンセイと一緒にレストランを出た私は途中二人と別れ、路地裏を通って寮に帰ろうとする。
レストランには行かないおじさんとジャミィルはその間に周囲を警戒しつつ出口側で待つというわけだ。
「……だがあの路地は、距離がある」
「だからこそ、攫うのに適している。そうだろう?」
一本道で、昼間でも薄暗い暗い道だ。
大人二人がすれ違える程度の狭さのそこは、更に建物の隙間があちこちにあっておあつらえ向きってのはまさにこのことなんだと思う。
……ただまあ、私みたいな吸血鬼にとっては十分明るいけどね!
「まあなんかあったらすぐ笛吹くからよろしくね」
「大丈夫なのか?」
「言ったでしょ、私は護身術も嗜んでるって。おじさん直伝だから信じていいわよ」
「マリカノンナは熊も倒せるぞ」
素手で。
そう彼らに聞えないよう小声で言うおじさんのスネを思い切り蹴っ飛ばす。
要らんこと言うんじゃない。
聞えてないとわかっていてもデリカシーってもんを考えろっての!
痛そうにするおじさんをよそに、私はジャミィルとおじさんに別れを告げてハルトヴィヒたちとレストランへ向かった。
「あ、そうだ。レストランで少し時間潰すんなら食事してもいいかなあ? 昨日緊張してて碌に食べられなかったけど、美味しそうだったし!」
「……よく食べる気分になるな」
「腹が減っては戦はできぬって言うでしょ。折角保護者がいるんだからさあ」
「なんだか別の聞え方がしたんだけど?」
「センセイごちそうになりまーっす」
いやあ、未成年(?)が頑張るんだから、一食くらいいいでしょ!
王族御用達のレストランなんて贅沢、たまには何も気にせず食べたいんだよね!
だって、乙女だもん!!




