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転生吸血鬼さんは地位向上を訴える!~決して悪い種族ではございません~  作者: 玉響なつめ
第三章 具体的には、何をする?

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 おそらくだけど、悪魔が関与している。

 何か大がかりなことをするために、人間を集めている……と考えるとまあまあ筋は通るだろう。


 とはいえ、契約もせず攫ってどうするのか?

 それとも強い悪魔を呼び出すために生け贄として大量の人間を必要としているのか?

 まったくわからないことだらけなのが現実だ。

 

 そもそも私たちに何ができるのか?

 そこが問題である。


「悪魔が関与、或いは悪魔を呼び出したい者が存在するとして、それが吸血鬼や他の種族とは違うという保証もない」


「まあでも都合の悪いことを人間以外の種族に押し付けるってのは、合理的と言えば合理的だな。……いい迷惑だろうが」


 ジャミィルがそう呟くのを内心で大きく肯定する。

 そうなんだよ、いい迷惑なんだよ!!


「私が知っている範囲でだけど、エルフ族は悪魔と折り合いが悪いし、魔族は同一視されていやな記憶があるはずだからやっぱり嫌っているかな。ドワーフ族は炭鉱に住み着いた悪魔を逆に騙して金貨を得た……なんて昔話がある程度には付き合いがあるって言ってた」


「……サナディアってすごいな」


「まああそこはそういう場所だしね」


 秘境って思われてるけど案外便利なことが多いんだって。

 ただまあ、人間以外の種族がいるって思うと敷居は高いのかなあって思う。


 基本的に寿命が違う種も多いから、お互い悲しくなるので付き合いは最低限……見たいにする人も多いからさ。

 特に人間種とエルフで恋愛しちゃうと大変みたい。


(そういやおじさんは人間と恋愛したことになるのか)


 自分より先に老いる恋人を見て悲しく思ったのだろうか?

 それとも相手からいつまでも老いが見えないおじさんを疎むとかそういうことはなかったのだろうか?

 そこばかりは聞いてみないとわからないけど、さすがに親戚とはいえそんなプライベートに突っ込んでいいものか……。


「……まあいいか。とりあえず、それっぽい連中をあぶり出すならやっぱり囮じゃない?」


「危険だろう」


 私の言葉にハルトヴィヒが即却下の姿勢を見せた。

 それは周囲も同じようだ。

 

「でも今この状況なら、私が適任だと思うんだよね」


「……どうしてそう思う」


「サナディアっていう田舎から来たオンナノコ。友人は学園にいても、今すぐ探せと言い出す身内も近くにいない」


「……」


 まあ相手が悪魔だった場合、私が吸血鬼だってバレて近寄ってこない可能性は高いんだけども。

 それを抜きにしても、この囮作戦は悪くないと思うのだ。

 近寄ってこないなら〝悪魔が直接〟関与しているのだろうし、近寄ってきたなら人間がやっていると思えるのだろうし……。


(あれ? でも悪魔の力を借りて判別している人間だったら結局バレるか? それじゃ困るな)


 あいつは吸血鬼だ! なんてこの状況で言われると私の立場が不味くなる。

 でもまあ、それを信じる人もいないだろうけど……。


 なんせ人間族に信じられている吸血鬼ってのは夜中しか活動せず、上から人を見下ろすのが大好きで真っ青な顔色にアホほど赤い唇をしているってんだから笑っちゃうね。

 まあ不死族なんて呼ばれているだけあって、人間族からしたらアンデッドの仲間だと思われがちなんだろうけど……。


 実際の吸血鬼はどうかって?

 確かに直射日光に対して肌はすぐ真っ赤になっちゃう体質な人が多いと思うし、なんだったら不摂生の塊なんで昼夜逆転するほど本を読んで読んでいるうちにまた元通りなんて感じだし。

 上から人を見るっていうよりは頼むから書架にかけたはしごの上で本を熟読するのを止めてくれっていうくらいか。

 ちなみに変身するってのは合ってる。

 別にコウモリにこだわりがあるわけじゃない。


 あと実際に吸血するのかって言われたらできないことはないけど、やりたくないっていうか……普通に美味しいご飯食べるだけで私は満足だなあ。

 一回疑問に思ったから近所のエルフのお医者さんに質問したら指先切って出てきた血を舐めさせてくれたことがあるんだけど、別に美味しくはなかった。

 ただものすごい勢いでエネルギー過多になって一週間ご飯食べたくなくなったかなくらい。


 よっぽど死にかけている状況じゃなきゃ、ナイと思う。


「……危険だろう」


「ええ? ジャミィルとハルトヴィヒは私の後ろとかで警戒しないわけ!?」


 心配してくれるんならそのくらいするよね、と言外に告げると大袈裟なくらい二人がため息を吐いた。


「それは当然だ! だが万が一って事があるだろう……!!」


「あのねえ、私だって地方から一人でここに来るくらいには自衛の手段を持っているの。じゃなきゃ言い出さないわよ!」


「……本当に大丈夫なのか」


「まあ武器がほしいなと思うから、スィリーンに選んで貰ってナイフくらいは持たせて貰おうかと思うけど」


「いいわ、貸してあげる」


「ありがとう」


 イアス様とミア様は何も言わない。

 彼らが何かを話せば、それは決定的なものになってしまうからだ。


 でも、心配はしてくれている……と、思う。多分。


(……私としては、私自身がやりすぎないように気をつけないといけないってことが一番心配だわあ)


 正直なところ、実戦経験があるわけじゃないので襲われてびっくりしたついでに自重せず本気で殴ったりなんかしたら、人間族相手では大変なことになるのでは。

 いや、殺すとかそんな物騒な話じゃないよ!?

 

 でもこんな可憐な美少女が、大の大人の男を(数メートル単位で)ぶっ飛ばしたら周囲にドン引かれちゃうでしょって話!!


(……気をつけよ)


 私はスィリーンから借りたナイフをぎゅぅっと握りしめるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 人間は「人間族」と言うんですね。 混血種は大変そう。 サナディアにもチラホラいる程度なのかしら。 そも、人間族がサナディアにいない可能性も? 犯人は人間族か、悪魔なのか、 どっちなのか楽し…
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