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(んんんん、思った以上に話がでかくなってきたぞ……?)
正直なところをいうと、私はこの行方不明者事件が吸血鬼云々……って言われることに腹を立てて真犯人を見つけて通報してやろうと思っていただけである。
自分で解決しちゃおう☆
なーんてことをして目立つつもりはさらさらないし、頭が良くて美人なあの子、っていう路線で学園の中で地位を確立していくつもりだったのに……。
(どうしてこうなった)
そう、あの後王子の元へと連れて行かれた私たちは何故かその後サタルーナの二人も交え、詰まるところ六人でとあるレストランの一室にいるのである。
いやあ、普通の人じゃ入れなそうな豪華な一室ですこと!!
「それで、一体何なんですの? アイネイアス殿下」
集まってから開口一番、不機嫌そうに言い放ったのはミア様だ。
さすが王族、この部屋に通されるのは当然って顔をしてらっしゃる。
ちなみにスィリーンさんはどこか居心地悪そうに、ハルトヴィヒとジャミィルは無表情で同じテーブルにいる。
私?
私は死んだ目をしていると思うよ、おそらくね……水を持ってきてくれた給仕の人が私に同情の眼差しを向けていたのはきっと気のせいじゃナイと思うんだ……。
だってどう考えても私、ここ、場違いじゃん!?
「ミアベッラ姫、そう睨まないでおくれよ。……今夜は大事な話をしようと思って招いたんだ。是非君の協力がほしいと思って」
「……協力……?」
どうやら、王子とミア様はそれなりに友好関係を築いているらしい。
まあ学術都市関係なく隣り合わせの国だしね、そりゃ戦争でもしてない限りお互い腹で何を思っていようが表面上は親しくするのが大人ってもんでしょう。彼らは子供だけど。
ただそれを抜きにしてもある程度は軽口が叩けるくらいには親しそうって雰囲気があるので、そこそこ仲良しってところだろうか?
お互いの立場ってもんがあるから、大の仲良しにはならないだろうけどね。
「協力とは、一体どういうことですの?」
ミア様はぐるりとここにいるメンツを見回して、最終的に私に視点を定める。
まあそうなるよね、そうなっちゃうよね!
私もなんでここに同席させられているのか正直わかんないんだよね!!
「ミアベッラ、今回巷で起きている事件はぼくらと同郷の人々だけではなく、多くの悲しみを生んでいる。しかるべき機関が動いているとはいえ、為政者としてそれを見なかったことにはできないとぼくは考えている。君はどうだろうか?」
「それは……ええ、それはそう思います。ですが、一体わたくしたちを招いて何をしようというのです?」
「君が独自のルートで情報を集めているように、ぼくも当然集めている。それらをここで公開し、互いに共有する。そしてある程度確証が持てたところで学術都市の騎士隊に働きかけたいと思っているんだ」
「……」
互いに情報を共有する。
国家間では稀にある出来事だけど、それは全てを開示するっていう簡単な話じゃない。
自分たちがどれだけ被害を受けていて、どれだけのことをやれているのかが相手にもわかってしまうというのは、弱みを握られることに繋がりかねない。
ましてや情報源はどこだと探られた時にまた厄介だろうしね。
ミア様は考えているようだ。考えるに値すると思ったのか、それとも考えるフリだけでもしておこうか、どっちだ?
そしてこれ、私ここにいる意味あるのか?
「……そうですわね、わたくしたちのプライドよりも今恐ろしい思いをしている民を救うことに、わたくしも異存はございません。ですが、何故彼女がここに?」
「それは利害の一致だね。ああ、マリカノンナ嬢。ミアベッラを愛称で呼ぶんだし、ぼくのことも是非愛称で呼んでほしい。イアと兄弟たちには呼ばれているんだ」
あれ、これ呼ばないとだめなパターン?
思わずハルトヴィヒを見ると諦めろと言わんばかりに首を横に振られてしまった。
「マリカノンナ嬢は今回ぼくらが協力することによって、彼女にとって忌避するべきものでない限り一つ彼女が知る知識を与えてくれると約束してくれた。ぼくはウィクリフの名を知っている。そしてそれはミアベッラ、君もじゃないかな」
ウィクリフの名前。
そう言われて私は思わず眉間に皺がよるのを感じた。
うん、両親なのか叔父なのか、或いは親戚かご先祖様か?
いずれにせよ な に や ら か し た よ?




